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ムスメとタマなしRyanの関係。15歳の夏。そしてAidan登場。

「ママ!聞いてよっ!」

日本に2週間滞在の後、空港から戻ってきて部屋を覗くと、いきなりだ。

どうした?
Fuck RYAN!!!!
Ryanがどうしたの?

ようやく期が熟したと判断したらしい彼がムスメに告白しようとしたものの、自信がないのか、よりにもよって、

"If I ask you out, what would you say?" (僕が付き合おうって言ったら、何て答える?)

とムスメ本人に聞いたというのだ。思わず吹き出しそうになったが、目の前のムスメは目に涙を溜めながらカンカンである。

一体、何よそれ!そこまで言うなら、告白すればいいじゃないの!私はそれになんて答えればいいわけ?もちろんOKよってか?!それ聞いてから、告白するっていうの?バカみたい。タマなしにも程がある!!もう知らない。あんなタマなしの相手するの、時間のムダ!

タマなし、ときたか。

これだけでもムスメの怒りはごもっとも、だったのだが、かなりあとでわかったこと。

どうも私が留守にしていた間、水泳仲間5人ほどで早朝ランニングに出かけたらしい。足が速い子達がどんどん先を行ってしまい、遅れをとったムスメにRyanがスピードを合わせ、なんと、キスしたというのだ。

おおおおおおおお。ファーストキス!

ムスメはいよいよRyanとBFGFになると思った。が、"If I ask you out, what would you say?"って、つまりは僕が誘っても断らないよねって念押ししたということか。ムスメが「タマなしめっ!」と烈火の如く怒るわけである。

"If I ask you out, what would you say?"

あまりに呆れて言葉を失い、ムッとしたムスメがしぼり出したのが

"…….I don't know……."

凄まじい怒りと共にムスメは冷めきってしまった。ムスメ本人の後押しがなかったせいだろう、タマなしRyanはそれきり告白のタイミングを逸してしまったらしい。自業自得である。

Ryanには"Ball-less(タマなし)"という修飾語が必ずつくようになり、そのうち会話にも出てこなくなった。

ムスメは情熱を水泳に注ぎこんだ。チームメートの女子がひっそり憧れる一つ年上のAidanには彼と同じ高校に同級生GFがいたが、それでも小さい頃から彼に憧れ、狙っている女子が数人はいた。ムスメは学校でも水泳クラブでも、男子にとってはおっぱいのある男友達であり、女子にとっては男みたいにさっぱりした女友達である。ちなみに男女混合で練習していても、男子(女子)とほとんど口をきかない女子(男子)も多い中、同じく一つ年上のRobがスキンケアについてムスメに相談するように、AidanはGFトラブルを相談するようになった。そういえば、Robも好きな女の子へどうアプローチするかをムスメに相談し、晴れてBFGFになったのだが、数ヶ月前に酔っ払って男子とキスして、あれ?嫌じゃないぞ……ってなことになって現在混乱中。というのは余談。

Aidanの居場所を携帯で24時間追いかけ回すような彼女。彼女の親が厳しいから二人で外出することもままならない。水泳の練習は一日2時間週6日だから、学校から帰って膨大な宿題に取り掛かり、その後練習となると、つかまらないことも当然多い。

そして、ムスメとAidanのチームメートが、学校で彼女にムスメのことをちくったもんだから、ただですら嫉妬深い彼女の言動と精神状態はスゴイことになった。まったく恋愛感情の対象にならない男親友のErikと違って、Aidanは結構ムスメの好みだったからちょっと話が複雑になるんじゃないかと思って、私は見ていた。

おっぱいのある男友達みたいな存在は、色気づいて性欲にまみれた高校生にはなかなか理解されない。周囲はムスメにもErikにも「付き合ってるの?」としょっちゅう聞いてくる。水泳クラブでも「Aidanと付き合ってるの?」「付き合うの?」と何度も聞かれた。

さて、嫉妬に狂った彼女を必死でなだめていたAidanだが、当然疲労してくる。ムスメの方といえば、Aidanのことを信じられる女なのかどうかを見極められるようにアドバイスをして彼を応援したけれど、「あれじゃあ続かないと思う」という彼女の予想通り、二人は別れた。

そしたら今度は、小さい頃からAidanのことを想い続けていた女子が、彼を想うあまりに妄想を始め、Aidanはまるで彼女になんて目もくれていないのに、彼が自分をいつも見ているとか、泳いでいたらバタフライの腕で殴られそうになったとか、ありもしないことを言い出し、ムスメに相談し始めた。恐ろしや高校生。訳がわからない。想像を絶する意味不明さである。Aidanにしてみれば、はた迷惑な話だ。彼女は家族内でのトラウマを語り出し、それをAidanに結びつけたものだから、ムスメはさすがにやばいと思い、彼女の親に伝えたほうがいいかもしれない、と私に持ち込んだ。

私は親に連絡した。この彼女は3人姉妹の真ん中。妹には自殺まがいの経験があり、妹たちを支えていた一番上の姉が家を出て大学に行った後、妹を扱いかねていた、という構図があったことを彼女の母親は話してくれた。事情を知らせてくれたことのお礼を言われ、他言しないでくれと頼まれた。もちろんだ。ちなみに、この母親と私はソリが合わないから、その後この件に関わらず、ほとんど接触はしていない。

そして、事態は収拾した。

それからもAidanとムスメは仲良くしていたのだが….ある日の練習の後、みんなでベーグルを買いに行った時、Aidanが集団を先にいかせて、ムスメにキス!

Erikとはこういうことにはならないが、Aidanはムスメのタイプだったから案の定そういう流れになるわけだ。どうしてどいつもこいつも集団での外出先で、キス、という発想になるのか、私にはわからないが、まぁそれはどうでもいい。

まだ続。

2022.3.12 追記。続編追加。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。