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Memory Lane~大学時代。1. ゾッコン惚れ合った彼。

O君は当時でも「今どき珍しい」硬派だった。弓道の有段者で見るからに硬派だけれど、付き合う前から「これまでに5回会った」私がしていたイヤリングのすべてを覚えているような気のつく人で、誠実でとても優しかった。

いわゆる「バンカラ」な彼。後にも先にも、私が好きな硬派でバンカラなタイプが私を好きになってくれたのは彼だけだった。中学高校大学の友達全員口を揃えて「アナタが付き合うタイプとは思えない」とあまりの意外さにびっくり。私も惚れきってたけれど、それ以上に彼のボルテージが高いと友達に言われ続けた。たまに中大の民法なんかの授業に一緒に出ると、硬派で通っている彼に「あんないい女」の彼女がいるなんて、と彼の友達も後輩も口あんぐりだったらしい。

O君と1ヶ月ぶりに会いました。その前に美容院へ行って、キレイにブローしてもらったんだけど、待ち合わせはカフェセボール。入ってきたときのあの人ったらニヤニヤしていて…。中で二人で向かい合って話しているときも「別人と話してるみたいだ。」って。

そして本当のことを言うと、店の外からのぞいたときに、私のことをチラッと見て「おまえより美人がおると思ったんだ。」そして通り過ぎて一瞬「まさか…。」よく見たら私だったというわけ。だから中に入ってきた時にはもう私だったってことはわかってたらしいけど。

それで今のhair styleがいいから池上季実子みたいにするな、とか言って。で、他の時はどうでもいいけれど俺と会うときはそうやってブローしてきてくれって。

それから後も、私の顔見ては「俺の目に狂いはなかった。」ってやたら納得して満足しているし。

でも私の側から言えば、私だって久しぶりにあの人の顔見て、想像が現実を超えることなく、逆に現実が想像以上だったって気分。横顔も正面から見た顔もあのたくましい肩も腕も、何もかもが。

1987.9.5の日記より。

きゃー。

そんなにいい女だったかどうかはおいといて。

捨てたと思っていた写真が出てきたので、感動の悲鳴を上げてムスメに見せにいく。

どこかの公園。黒い道着と袴を履いた彼。弓道の試合か審査だろう。一般と学生の部があるのに「中途半端な五段になっても意味がない」と若年20歳で一般枠で受けるから、なかなか合格しなかった。にっこり微笑んだ私は、エクボを見せている彼に右肩を抱かれ、その手に右手で触れ、彼の右肩に頬を預け、彼の背中に左手を回し、腰にあてた彼の左手首を握っている。

ねぇママ、なんでバドワイザーのTシャツ着てるの?

吹き出した。言われてみればそうだ。確かにあの頃バドワイザーはやってたけど、なんでビールのロゴ入りTシャツとジーンズでデートしてるんだろう。

いいの!何着てたって、会うたびにキレイだ美人だって言ってくれたんだから!

この人がパパだったらよかったかも、とムスメ。
あら、ママがこの人と結婚しててもママの子として生まれてきたの?
そりゃそうだよ。姿形は違っただろうけど、空からママを見つけて「あのママがいい」って選んで生まれてきたんだから。

彼と結婚していたらムスコとムスメは授からなかったし、と思う私に、思いがけないムスメの言葉。

"I am the chosen one!!!" 選ばれた私。

と言いながら、ちょっと泣きそうになった。

続。




ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。