グリーン・エラー

 今がまるで成人のそれではない仕草をしていること、僕が一番に自覚的であろうと思う。だからこそ友人に会わないようにしている、友人に会う日には〝ちゃんとした〟僕を演じられるように準備をする。友人はこどもっぽいことを嫌う人間だ、それは友人が自らのこどもっぽいところを気に食わないと思っているからだとも思う。
 鏡、なのだ。
 誰だって気にしているところを目の前に出されて映し出されて、いい気分のするものはいない。
「それって苦しいんじゃあないかなあ」
僕の話を聞いた貴方はしたり顔でそんなことを言って、コーヒーを啜ってみせた。僕は貴方の目の前で、そうかもね、と言いながらミルクと砂糖をこれでもかと入れる。貴方は顔を顰める。けれどもこれはコーヒーには違いないのだ、どうやって飲もうと僕の自由であって、貴方には何も言えない。貴方はそれをしたらもう、僕の友人の批判を出来ないと思っているから。
「それなのに友人なの」
「そうだよ」
「どうして」
「それではいけない?」
狡い聞き方には狡い答え方をする。僕の流儀を知らない訳ではないだろうに。
 貴方が。
 唇を噛み締めるのを我慢しているのがひどく、可哀想だった。貴方が僕のようにミルクと砂糖をこれでもかと入れたような、最早コーヒーと呼んで良いのか分からないような代物が好きなのだと、貴方がこどもっぽいと思っている味が好きなのだと、認めさせようとしている訳でもないのにこどもっぽい仕草を続ける、そんな僕が嫌いなのだとも言えない貴方が、本当に可哀想でたまらなかった。

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