医師が民間企業に教えを乞うた経験


医者が病院にいると製薬企業や利用機器メーカーの人たちが名刺を手に会いに来ますが、
大体は踏ん反りかえって応対します。

逆に、民間企業にこちらから頭を下げて訪問すると、結構いいことがあります。
体験談を紹介します。

医者の中には民間企業のことを金の亡者としか見ていない人もいます。

もちろん営利目的の部分も大きいとは思いますが、その中で開発された技術や知識は、医者の知らないことも多いです。当たり前ですが。

僕は昔会社を立てる前、勤め人だった頃に、有給をとってそれらの会社を訪問、見学させていただいたことがあります。
いくつか紹介しましょう。

最初は、音声で認知症の診断ができるという人工知能を用いたプログラムを開発した会社でした。

認知症自体の診断がそもそも正しいの?というツッコミはありましたが、
認知症を専門とする研究者に罵声を浴びせられながら教えを乞うたと経営者がいう通り、
知識や経験は、当時の僕より詳しかったです。

商品化に至るまでの技術の使い方は詳しくは教えてもらえませんでしたが、むしろ開発の苦労とかプロセスを学びました。

次に訪問したのは、NVIDIAというGPUというコンピュータのプロセッサを作っている会社でした。
当時ディープラーニング用のハードウェアやプラットフォームに力を入れており、
人工知能の普及にも投資していたようでした。

巨大なAIシンポジウムに行ったり、社員さんに話を聞いたり、日本に来た副社長と話したりして、
癌の分野での人工知能の可能性について議論しました。

ハードウェアの会社なのに、当時は医療用AIまで見据えており、全然知らなかった領域についてオリエンテーションがつきました。

最近訪問したのは、富士フィルムでした。
元々フィルムの会社ですが、医療機器でのシェアもあります。
特に僕の専門である放射線領域での、業務用プラットフォームはめちゃくちゃ使いやすかったので、
知り合いの研究のために使えないかと思い、連絡をとって訪問しました。

まだローンチしていないサービスについても教えていただきましたし、エンジニアの方も応対に来ていただき、かなり勉強になりました。

これは僕の立場からの話ですが、
何処の馬の骨変わらない胡散臭い医者でも、医者であれば、少なくとも表面上はきちんと応対してくれます。
こちらから頭を下げ、積極的に質問すると、バカにせず答えてくれます。

業界や現状の生の声(医師の横のつながりも持っている)も聞け、学ぶことは多いです。
業界全体のニーズ、製品の開発の趨勢などは、書物では得られない貴重な情報です。
もちろん、快く教えてくれる時は、僕も他では知り得ない現場の情報を教えれることも多いです。

どこかの医学の学会のアホタレどもは、学会の雑誌のページの半分以上を企業の広告で埋め尽くし、費用の補填に使っているようです。
「事実上強制で広告を出させられる」とある大手の製薬企業の社員さんは語っていました。
どうでもいい金ばっかり使って、金がなくなるのは自業自得で、存在自体が必要ないということを意味するのでしょう、そのまま消えるのが社会にとって大変良いことです。

営利目的で近寄ってくる連中より、営利目的を謳っていないで金が欲しい連中の方が信用できないです。

話は戻しますが、あくまで対等に接しながら、相手のインセンティブを理解しながら、タダなのにWINWINな情報交換することはできると思います。