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かごめ

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2020年9月の記事一覧

脚本「かごめ」第三場

■第三場
  前場と同時刻。時谷美羽が居住するワンルームアパート。狭い室内に物とゴミが散乱している。美羽は四肢の力が抜けた状態で、死骸のように布団に横たわって、目を瞑っている。立田玲奈は、散らかっているゴミを袋にいれている。
玲奈「美羽、お弁当冷蔵庫に入れておいたから。温めて食べてね。」
  美羽は寝転んだまま、目を瞑ったまま、小声で返事。
美羽「‥ありがとう。‥玲奈がいるから助かる‥。」
玲奈「

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脚本「かごめ」第ニ場

■第ニ場
  2017年6月。鬱々とした曇り空。昼下がり。東京都某所の古ぼけた喫茶店。店内は広いが客は数人しかいない。鵜飼良玄、亀井トキオ、内山洋一郎は、店の奥のボックス席でコーヒーを飲みながら話している。テーブルも椅子も、暗い色。
  良玄は服装は、折り目がきっちりついたシャツ、しかし靴は古い。トキオはラフなシャツだが、靴は高価なもの。洋一郎は上着は半袖シャツ、下はジャージ、靴は穴サンダル。
 

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脚本「かごめ」第一場

■第一場
  1996年の冬。東京都内某所医院、入院患者の一室。部屋は清潔。小さなベッドで眠る産まれたばかりの赤ん坊。時谷尚子は赤ん坊の横にある大きく質素なベッドで横たわっている。入院者用の薄い色の服。顔は青白く疲労の色が濃いが、毅然。それに付き添う父親の時谷裕次。
  裕次は、子供ようなくしゃくしゃの笑顔で、赤ん坊を起こさないように小声であやしている。尚子はそれを聞きながら穏やかに微笑んでいる

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脚本「かごめ」登場人物他

■作品名
  かごめ
  (初版・2020年9月18日作)
■作者
  酒井肇(Twitter @niko0730)
■主な登場人物
  鵜飼良玄:20歳、男性。会社員、機械エンジニア。
  時谷美羽:20歳、女性。良玄の幼馴染。高校中退、病気療養中。
  立田玲奈:20歳、女性。美羽の親友、大学生。
  時谷裕次:30歳、男性。美羽の父。
  時谷尚子:28歳、女性。美羽の母。
  時谷ひかり:

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