【読書記録】やさしい日本語 多文化共生社会へ
おすすめ度 ★★★☆☆
日本語講師になるために勉強しよう!と思って借りた本。
言語学というよりは多文化共生についての本で、私の好きな分野だったのですんなり読めた。
移民やその子どもの問題など言葉の問題は社会問題と地続きだ。
やさしい日本語とは
最近役所のパンフレットなんかでもよく見るようになった「やさしい日本語」とは、いわゆるわかりにくい役所っぽい言い回しを、簡潔でわかりやすくした日本語だ。
役所だけでなく、ニュースなどでも同じ。
例えば、保育園の入園基準。
従来のやつ、イラッとしますわぁー。日本人でも結構「・・・?」ってなる書き方。
「やさしい日本語」は外国人向けのもの、ひらがな多めにしたもの、漢字にルビを振ったものという認識だった。
でも、誰にとってもわかりやすいし、余分なものを落として、わかりやすく言い換えるなど工夫に満ちていることがわかる。
というか、改めて<従来>の文をみると、不親切というか「相手にわかってもらおう」という気持ちが全然無いよね。
日本語難しいシリーズ
日本語の勉強をしてるとハッとすることだらけだ。この本でも何度もハッとした。
・非情の受け身
行政文書を読みにくくする要因の一つは「非情の受け身」と言われている。つまり「門が閉められた」「国旗が掲揚された」のように主語がもの(非情物)である受け身のこと。
予測される・見込まれる・考えられる・期待されるとか、めっちゃよく見るし、仕事でも使っちゃう。わかりにくいし、主語が曖昧だから責任を回避しているようなニュアンスがあるらしい。気をつけよう…
・漢字むずすぎ
漢字は普通一文字で使われることは少なく、最も多いのは二字漢語としての用法。しかも一文字ずつの意味がわかっていれば類推できるもの(上下・国外・入院など)は半分しかなく、あと半分は、それぞれの漢字の意味を知っていても全体の意味は別で覚える必要がある。(経済・社会・精神など)
いわれてみれば確かに。こりゃハードル高いわ。
・ルビが弊害を生むことも
漢字は外国人以外の言語的マイノリティにとっても障壁になっている。例えばディスレクシアの人にはルビがあると余計に認識困難になることもある。
えーそうなん。ルビ振っとけばいいと思ってた。
子どもたちへの教育
外国にルーツのある子どもたちについても、まるまる一章使って書かれている。
自分の意志で日本に移住した親とは違って、子どもは意志と関係なく急に外国に放り込まれる。
しかし、通常の学校でやる「国語」は「日本語教育」とは違い、日本語を母語とする子どものための教育なので、ドロップアウトしやすい。
さらに、外国籍の子供には義務教育がないため、そのまま適切な教育を受けられず大人になるケースが多いという。
この問題は、別の福祉系の本で読んだことがある。言葉の壁があると仕事に限りがあるし、何より自尊心を傷つけられることも多い。結果として犯罪や性風俗業などに巻き込まれてしまうなど。
今、外国にルーツのある子どもへの外国語教室は増えていて、自治体が無償で行っている所も多い。
私が日本語講師の経験を積めば、いつかそうした子たちの助けにもなれるかもしれない。
そう思うと、前向きな気持になれる。
私達にとっての日本語能力
本の大半は、外国人や障害者への「やさしい日本語」について書かれているのだが、「日本語を母語とする人」に対する章もある。
例えば論文やレポート、メールやこのnote、商談にプレゼンテーション、値下げ交渉に夫婦喧嘩。
たしかにその能力がないと、困ることは多そうだ。
しかし、学校教育でこの能力をしっかり育てているかというと疑問が残る。議論したりプレゼンする機会が少ないからだ。
私の場合、子どもが5歳ぐらいで何でも「あれ何?」と聞いてきた頃にめちゃ鍛えられた。
誰にでもわかるように、短く簡潔に説明するのはとても難しいし、訓練が必要だ。
本にはニュースや文章の事例がたくさん載っていて、「なぜそう書き換えたか」まで知ると目からウロコの連続である。
やさしい日本語マニュアル
最後に、付録に載っていた<やさしい日本語>マニュアルより自分用のメモ。
肝に銘じて、これから頑張ろう。
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