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【読んだ】人はなぜ、他人を許せないのか

おすすめ度 ★★★★☆

芸能ゴシップや、バイトの悪ふざけ動画などをみて、直接関わりがあるわけでもないのに怒りが湧いてくることがある。
「間違っている奴らは許せない」という正義感が暴走している状態を著者は「正義中毒」と表現している。

「正義中毒」に陥る理由や背景、対策を脳科学的に説明している。
著者の中野信子さん、とっても人気で色んな本を出されているらしい。
難しいことを身近な話題と繋げてわかりやすく書いてくれてるので、すごく読みやすい。


脳は、そもそも集団から外れた者、ルールを逸脱した者を制裁すると脳からドーパミン(快楽物質)がでる仕組みになっているらしい。
だから、正義中毒になると、人を叩くことが快感になってしまう。

その理由として、人間は集団で生きることで強さを発揮してきた事が挙げられている。自分の属している集団以外を受け入れず、攻撃することで自集団を守ってきたのだ。なるほど、いわれてみればそんな気もする。

また、日本人が排外的で、議論下手なこと、同調圧力が強いことなども、著者独自の視点で分析していて面白い。
「だから日本はだめなんだ」ではなく「生存戦略的に都合が良かったからそうなっただけで、良いとも悪いとも言えない」というスタンスなのが良かった。変に政治的でなく、フラットに読めて良い。


わかりやすい事例ばかりなので納得感があるが、脳科学という点では少し物足りなさも感じた。
随所に心理学や民俗学的な記述も多く、よくある「都合のいいところを切り取って載せました」感を感じてしまう。

以前「心理学入門」を読んだときに、「脳科学の登場で心理学の世界が大きく変わった」という内容があって興味を持っていたので、もうちょっと脳科学の深掘りが欲しかった。
(まあこれは、私の勝手な期待だし、本気で脳科学の話されたらついていけないんだろうけど)


本では、老化に伴い正義中毒に陥りやすくなる点も、脳科学で説明している。ここはモロ脳科学ぽかったので楽しく読めた。
他人事じゃないな、と思いながら。

脳の前頭前野は、「他人を認めたり許したり共感する」という高度な働きをする部分なのだけど、これは発達し始めるのが遅く(7−9歳くらい)成熟するのも遅い(30歳くらい)。その割に衰えるのが早いという繊細なものらしい。
この前頭前野のなんとかっていうところが薄くなってくると、感情を抑えたり相手の気持になって考えることが難しくなり、いわゆるキレる老人になってしまうのだという。
うーん、他人事じゃない。

前頭前野の老化を抑えるには、適切な刺激を与えるなどトレーニングが必要で、いくつか本にも書いてある。また、関連して「メタ認知」の重要性も述べられている。
メタ認知に関しては以前本で読んだが、

子どもの発達という面からだったので、その後の話まで知れてよかった。
本をたくさん読むと、時々こうして話がつながるのが良いよね。

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