マガジンのカバー画像

イラスト名建築ぶらり旅

21
運営しているクリエイター

記事一覧

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ㉑(最終回)

三段重を食べつつ思う、ヘリテージの未来今回の行き先 元離宮 二条城「二条城で昼食を」──。当連載ガイド役の西澤崇雄さん(日建設計ヘリテージビジネスラボ ダイレクター ファシリティコンサルタント)から、「次は二条城の香雲亭(こううんてい)でランチを食べる取材です」と聞いたときから、そのフレーズが頭に浮かんでいた。分かる人には分かると思うが、人気ドラマ『名建築で昼食を』(「国立国会図書館 国際子ども図書館」の回を参照)のもじりである。 編集者としての目線で言うと、『名建築で昼食

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑳

世界遺産級? 村野藤吾の三毛猫工場今回の行き先 日本製鉄九州製鉄所なんという広大な敷地。今回訪れたのは、日本製鉄九州製鉄所だ。案内してくれた同社の松石長之さん(日本製鉄九州製鉄所八幡地区設備部土建技術課長)も、「いまだに敷地内で迷うことがある」と笑う。 異世界にも思える巨大な生産施設群に囲まれ、最初はなんだかアウェイに来た感じだったが、帰るときには「来てよかった!」と大満足で工場を後にした。ヘリテージ建築を考えるうえで、本当に得難い体験だった。   日本製鉄九州製鉄所八幡地

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑲

裏方聖職者が残した女王のティアラ今回の行き先 函館ハリストス正教会「函館ハリストス正教会」は函館に観光に行く人が必ず行くであろう名所である。正式名は「函館ハリストス正教会 復活聖堂」。 函館山のふもとにあり、元町と海を見下ろす好ロケーション。国内の教会をたくさん見てきた筆者だが、この教会はモダニズム以前の教会建築の中で飛び抜けて美しいと思う。まるで雪の女王のティアラのようだ。 実はこの教会のイラストリポートを書くのは2回目になる。前回取材したのは8年前の2015年だった。物

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑱

生還した“無名の名建築”のきらめき今回の行き先 秋田市文化創造館今回は、筆者のたっての希望で秋田市・千秋公園内にある「秋田市文化創造館」を訪れた。 「解体されて駐車場になるところだったんです」と、同館を運営するNPO法人アーツセンターあきた事務局長の三富(みとみ)章恵さんは言う。今の活気ある使われ方を見ると、そんな言葉は信じられない。だが、実際、危なかった。筆者も改修される前の元の建物を知っていて、てっきり解体されるものだと思っていた。今回はそんな“瀬戸際からの大逆転劇”を

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑰

免震改修で伝える「五一」流バロック今回の行き先 京都市役所見出しにある「五一」は、建築家の武田五一(たけだごいち)のことである。今回リポートする京都市役所本庁舎の魅力は、この人のことを知っているとより深く味わえるので、そこから始めたい。   武田五一(1872~1938年)は、広島県福山市出身。京都大学建築学科を創設した偉い建築家で、京都大学キャンパス内に数多くの建築が残る。「関西近代建築の父」と称されることも多い。   京都市役所本庁舎は歴代三代目の庁舎だ。武田五一の監修の

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑯

創造的復元が伝えた2つの物語今回の行き先 日本基督教団神戸栄光教会連載16回目になって今さらだが、あなたは「ヘリテージ」という言葉の意味を説明できるだろうか。辞書を調べると、「heritage:遺産。継承物。または伝統。伝承」と書かれている。では、この連載のテーマである「ヘリテージ建築」は、何を指すのか。辞書を調べても、ずばりの解説は見当たらない。   連載では、誰もがヘリテージと認める「原爆ドーム」のような文化財的建築から、日常使いの「東京メトロ銀座駅」まで、なるべく広いレ

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑮

夢の街を彩るショートケーキ今回の行き先 宝塚ホテル宝塚ホテルの取材の後、自腹でこのホテルに一泊した筆者は、翌日の午前中、1階のラウンジでイチゴのショートケーキを食べていた。ここで食べるのは初めてなのに、何だか懐かしい……。そうか、昨日、阪急阪神不動産の荒堀省一さん(開発事業本部技術統括部建築グループ)が言っていた「歴史の続き」というのは、このショートケーキみたいなものか。そんなことを思った。 いきなり話が結論に飛んでしまったので、いったん前日の取材に戻る。場所はやはり宝塚ホ

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑭

脱・建て替え時代の全天候型広場今回の行き先 新宿住友ビル三角広場この連載で2回目に取り上げた「名古屋テレビ塔」(現名称は「中部電力 MIRAI TOWER」)が国の重要文化財に指定される見通しとなった。かつては木造の寺社仏閣や戦前のレンガ建築が指定されるイメージだったが、戦後の建築も重要な「ヘリテージ」であると伝えているこの連載にとって、うれしいニュースだ。   個人的にもう一つうれしいのは、1954年完成の名古屋テレビ塔が、「建った当初の姿」ではなく、放送用スペースのホテル

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑬

前庭整備で知るル・コルビュジエの魔法今回の行き先 国立西洋美術館本館と前庭近代建築の巨匠、ル・コルビュジエ(1887~1965年)の設計で1959年に完成した「国立西洋美術館」は、57年後の2016年に世界文化遺産に登録された。 正確に言うと、この年、国立西洋美術館本館および園地を含むル・コルビュジエの17の建築作品群が、「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として世界文化遺産に一括登録された。17の建築はフランス、スイス、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑫

曲線の魔術師はキャデラックにひらめき?今回の行き先 米子市公会堂“世界のTANGE(丹下健三)”“世界のANDO(安藤忠雄)”というように、日本には世界で活躍する建築家がたくさんいる。そんな中にあって村野藤吾(むらのとうご、1891~1984年)は、“世界の”という冠のつかない日本ベースの建築家だ。しかし、その卓越したデザインセンスは、日本の建築史上指折りであると誰もが認める。今回はその村野藤吾が、脂の乗った60代後半に設計した「米子市公会堂」を訪ねた。 三次元のラインが美

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑪

3つの奇跡が残した「大正セセッション」の息吹今回の行き先 原爆ドーム原爆ドームはもともと何の施設だったかご存じだろうか。選択肢をいろいろ挙げたくなるが、もったいぶらずに言うと、広島県の「物産陳列館」である。今風に名付ければ「広島メッセ」か「広島国際展示場」だ。今回はそれを知ってからお読みいただきたい。なぜなら、この連載は「イラスト名建築ぶらり旅」。「原爆ドーム」と呼ばれる前の歴史を知ることで、この施設がタイトル通りの「名建築」であることがわかっていただけるはずだ。 7月の猛

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑩

元祖・カプセル建築、再生を繰り返して輝く今回の行き先 日本庭園 有楽苑(うらくえん) 「国宝茶室 如庵(じょあん)」取材協力/名古屋鉄道株式会社 この連載の「名建築」は幅広い。前々回が商業ビル(三愛ドリームセンター)、前回が地下鉄の駅舎(銀座駅)と来て、今回は茶室である。訪れたのは愛知県犬山市の「日本庭園 有楽苑」にある国宝茶室「如庵」。日本に3つしかない国宝茶室の1つだ。 なぜ如庵に行くことになったのかというと、如庵のある有楽苑の現況調査と修景計画に、この連載のガイド役

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑨

三線三様の光る柱でオシャレに「脱・迷宮」今回の行き先 東京メトロ銀座駅仕事帰りに、東京メトロ銀座駅で地下鉄を乗り継ぐと、改札やホームの内装がガラッと変わっていた。2020年10月のことだ。ネットで調べてみると、ちょうどその日が新デザインのお披露目日だった。 銀座線→日比谷線ホーム経由→丸ノ内線と地下鉄を乗り継いだ。気づいたのは、銀座線の改札階。あれ、柱が黄色く光ってる! 近寄ってみると、こんな模様だ。 この模様は、もしかして「銀座」の「G」? そして、日比谷線のホームに進む

イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ⑧

変わらず変わり続ける銀座のアイコン今回の行き先 三愛ドリームセンター東京・銀座のイメージといえば、多くの人が思い浮かべるのは「銀座4丁目交差点」ではないか。銀座通りと晴海通りが交差する場所だ。そして、この交差点の“顔”として頭に刷り込まれているのが「和光本館」と「三愛ドリームセンター」だろう。この2つの建物、デザインは全く違うのに、銀座に人々を迎え入れる“ゲート”のように見えてしまうのは私だけだろうか。 今回の目的地は、後者の「三愛ドリームセンター」の方だ。向かい合う和光本