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虹乃ノラン
2024年5月14日 02:07
第一章駁論(1) 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。「キツイ」「キタナイ」「クサイ」 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ
2024年6月19日 11:23
莫迦(4) すべての回収を終えた俺は、港にある処分場へと車を走らせた。 パッカーのケツをスイッチで押し上げ、積んだゴミを押し出す。さらに車を降りてパッカーのケツへまわり、捨て残しがないか確認する。 個体差はあるが、だいたいパッカーを満タンに積めば八立米。重さで言えば四トンくらいだが、パッカーは爪で捲き込みながら圧をかけて詰めるので、唸りこそすれ、ぎゅうぎゅうと詰めていけば相当の量が捲き込
2024年6月20日 12:16
第三章爆心(1) 天上の星がきれいな夜だ。空気は乾燥し、肌を刺す冷たい空気のせいで温かい缶コーヒーをよりいっそう美味しく感じさせた。 ワイヤレスのイヤホンを耳につけ、パッカーのエンジンを掛ける頃、いつものメンバーから電話が掛かってくる。『おはよう! D.J.今日は一段と冷えるな!』 威勢の良い声が飛び込んでくる。イケモトだ。「おはよう、イケモト、ジャスティスもいるのか?」『いりゅよ
2024年6月28日 16:37
爆心(2) 日の出まであと一時間といったところか? 突然ジャスティスが気合いを入れた。『よーし、一丁走って来るかっ!』 俺たちの仕事はゴミの回収だが、実は圧倒的に運転時間の方が長い。作業員というよりは、むしろドライバーだろう。 回収先に到着する。パッカーを停めて降り、ゴミを積んで運転席に戻るのに五分は掛からない。早ければ数十秒。しかし中には、現場到着から回収までの道のりがとんでもなく