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虹乃ノラン
2024年5月14日 02:07
第一章駁論(1) 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。「キツイ」「キタナイ」「クサイ」 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ
2024年7月9日 10:07
第六章幕臣 日の出まで後一時間といったところか? そろそろハンサムが競技場の初日を迎える頃だ。その頃のハンサムはテンションだだ下がりで、口数も少なかったよ。本当にわかりやすい奴だ。 そのときだ、ハンサムの声が突然上擦ったんだ。「はぁ!? どうして?」「助けに来たぜ! サーモンピンク!」 どうやらサプライズでアトラスが競技場へ駆け付けたらしい。「マジか! マジなのか! 俺、お前にだっ
2024年7月9日 10:04
第五章呪縛 順調に回収先を回り切り、処分場へパッカー車で回収したゴミを捨てに行くときのことだ。珍しく、俺の携帯にB.F.から着信が入った。プップップッと、割り込みの音が俺の耳に響く。しばらく鳴り続けていたがやがて途切れた。「どうした、D.J.?」 イケモトが、俺の様子がおかしいのに気が付き声を掛けてくる。「あぁ、B.F.から着信だったんだ。こんな時間に何の用だ?」 俺はそう答えると、皆
2024年6月17日 11:40
莫迦(3) アトラスのナビに従って、俺はすぐに問題の店までたどり着いたが、その頃にはすでに事態は収束しそうな状況だった。「ジャスティス! 平気か?」 俺がパッカーを停めて駆け寄ると、ジャスティスは驚いた顔をした。「D.J.? 一体どうしたんだよ。ここはお前の担当じゃないだろ?」「あぁ、イケモトから話を聞いて心配になって様子を見に来た」 イヤホンからはしばらく黙っていたイケモトとアト
2024年7月6日 18:39
第四章漠々(1) 次の日も寒かった。いつものように出発し、イケモトからの電話を取る。すると珍しくハンサムがいて、イケモトとすでに話をしていた。「ハンサム? お前もういるのか? まだ出発前だろ、珍しいじゃねーか、こんな時間にお前がいるなんて」『D.J.~、聞いてくれよぉ』 情けないハンサムの声の後ろで、イケモトの忍び笑いが聞こえる。『D.J.お前の予想が当たったみたいだ』「イケモトお