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「獏」完結 全20話

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黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。 「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、…
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「獏」第一話

「獏」第一話

第一章駁論(1)

 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。
「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」
 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。
「キツイ」「キタナイ」「クサイ」
 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ

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「獏」第十九話

「獏」第十九話

第六章幕臣

 日の出まで後一時間といったところか?
 そろそろハンサムが競技場の初日を迎える頃だ。その頃のハンサムはテンションだだ下がりで、口数も少なかったよ。本当にわかりやすい奴だ。
 そのときだ、ハンサムの声が突然上擦ったんだ。
「はぁ!? どうして?」
「助けに来たぜ! サーモンピンク!」
 どうやらサプライズでアトラスが競技場へ駆け付けたらしい。
「マジか! マジなのか! 俺、お前にだっ

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「獏」第十八話

「獏」第十八話

第五章呪縛

 順調に回収先を回り切り、処分場へパッカー車で回収したゴミを捨てに行くときのことだ。珍しく、俺の携帯にB.F.から着信が入った。プップップッと、割り込みの音が俺の耳に響く。しばらく鳴り続けていたがやがて途切れた。
「どうした、D.J.?」
 イケモトが、俺の様子がおかしいのに気が付き声を掛けてくる。
「あぁ、B.F.から着信だったんだ。こんな時間に何の用だ?」
 俺はそう答えると、皆

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「獏」第八話

「獏」第八話

莫迦
(3)

 アトラスのナビに従って、俺はすぐに問題の店までたどり着いたが、その頃にはすでに事態は収束しそうな状況だった。
「ジャスティス! 平気か?」
 俺がパッカーを停めて駆け寄ると、ジャスティスは驚いた顔をした。
「D.J.? 一体どうしたんだよ。ここはお前の担当じゃないだろ?」
「あぁ、イケモトから話を聞いて心配になって様子を見に来た」
 イヤホンからはしばらく黙っていたイケモトとアト

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「獏」第十六話

「獏」第十六話

第四章漠々
(1)

 次の日も寒かった。いつものように出発し、イケモトからの電話を取る。すると珍しくハンサムがいて、イケモトとすでに話をしていた。
「ハンサム? お前もういるのか? まだ出発前だろ、珍しいじゃねーか、こんな時間にお前がいるなんて」
『D.J.~、聞いてくれよぉ』
 情けないハンサムの声の後ろで、イケモトの忍び笑いが聞こえる。
『D.J.お前の予想が当たったみたいだ』
「イケモトお

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