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人称の基本を知ろう(4)〜内面を書くときの重要ルール

小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。

今回は「人称の基本を知ろう(4)」です。

前回の記事はこちら。↓


前回のおさらい

前回は、内面の書き方の違いを人称ごとに説明しました。

まとめるとこんな感じです。↓

  • 一人称

    • 本人が感じたことをそのまま書く

  • 三人称

    • 憑依型:ほぼ一人称と同じ

    • 背後型:やや離れたカメラから推測して書く


図にするとこうです。↓

一人称と三人称2タイプの内面


三人称における内面の書き方は、図のように2通りあります。

おそらく、いまの主流は「憑依型」なので、感じたことや心の声を書く場合は「憑依型」で書いておけば問題ないです。

とはいえ、「背後型」を混ぜてもそれほど違和感はないので、そこまで厳密に区別しなくても、おかしな文章にはならないと思います。


では、今回の話をはじめましょう。


内面を書いていいのは1人

内面についてはもう一つ大きなルールがあります。

それは、

内面を書いていいのは節で1人

というルールです。


節は、「空行から空行までのブロック」という意味で使っています。

シーンの前後に空行を挟むことが多いと思いますが、そのブロックが「節」です。
(これは正式な呼び方ではないかもしれません)

ですので、1つの節で1シーンになることが多いと思います。


三人称では、1つの節で複数の人物の内面を書く方法もありますが(神視点などと呼ばれるものです)、この方法はいまの主流ではないので、ひとまず上記のルールを守っておけばいいでしょう。

以下から例を出していきます。


一人称での内面NG例

一人称で間違うことはほぼないと思いますが、念のため、例を出しておきましょう。

一人称で書いていいのは本人の内面だけです。

ですから、以下のようには書けません。

 僕は小さく舌打ちし、彼女に目をやった。
 やられた……彼女がここまでやるとは……!
 彼女は怒りに震えながら立ち上がると、顔を歪ませて僕を睨んだ。(×)

彼女が怒っていたかどうかは、「僕」にはわかりません。

ですから書くなら、見たとおりか推測で書くしかありません。

 彼女は怒りの表情で立ち上がると、顔を歪ませて僕を睨んだ。
   or
 彼女は怒りを堪えるようにして立ち上がると、顔を歪ませて僕を睨んだ。

「怒りの表情」は見てわかるので、書いても大丈夫です。

また、「怒りを堪えるように」は推測なので、これも書いて問題ないと思います。


三人称での内面NG例

三人称でも一人称と同じく、視点人物以外の内面、感情、思考、心の声は書けません。

 太郎は内心の焦りを隠しながら、花子の手を引き懸命に走った。
 花子はもう限界だ……このままじゃ追いつかれる!
 一方、花子は太郎に置いていかれないよう、必死に彼の手を握った。(×)

この節の視点人物は太郎なので、花子の内面である「置いていかれないよう」や「必死に」といった表現は使えません。

ある節で書けるのは1人の内面だけです。

この場合はこんな感じに書けば大丈夫そうです。

太郎の焦りが伝わったのか、花子は必死の形相で彼の手を握った。

「太郎の焦りが伝わったのか」は推測なので、書いても問題ありません。

また「必死の形相」は見えるので使ってもいいでしょう。


あるいは、花子の内面を書きたいなら、シーンを割る手もあります。

 太郎は内心の焦りを隠しながら、花子の手を引き懸命に走った。
 花子はもう限界だ……このままじゃ追いつかれる!

 花子は太郎に置いていかれないよう、必死に彼の手を握った。
 絶対に手を離してはダメ! ここで太郎に見放されるわけにはいかない!


花子視点のシーンに移れば、花子の内面を書いてもいいです。

ですが、シーンを割る意味があるかどうかは考えた方がいいですね。

視点人物を変えると、必ず読者に負担が掛かります。

そのコストに見合った利益を読者に与えられるかどうか、検討が必要です。


このように、一人称でも三人称でも、感じたこと、考えたこと、思ったこと、心の声などを書けるのは、1つの節で1人だけです。

三人称でのこの書き方は、三人称一元視点とも呼ばれます。

いまの主流はこの書き方なので、ひとまずこれを覚えておけば問題ないでしょう。


今回のまとめ

小説のちょっとしたコツ「人称の基本を知ろう(4)」でした。

  1. 内面を書いていいのは1つの節で1人

  2. 一人称では本人以外の内面は書けない

  3. 三人称では視点人物以外の内面は書けない

  4. 両者とも、他人の様子を書く場合は見たままを書くか、推測を書く

    1. あるいは別シーンに分ける

    2. シーンを分けてまで内面を書くのがいいかどうかは要検討

ここまでで人称の技術的なところはだいたい書いたと思います。

次回はどちらの人称で書くかです。↓


それではまたくまー。

(2023.3.20追記)
タイトルをわかりやすく修正しました。

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