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『鬼滅の刃』から話の骨組みを抜き出してみよう〜簡単な物語のつくり方(4)

崖っぷち作家のニジマルカです。

「簡単な物語のつくり方」4回目です。

3回目はこちら。↓


前回のおさらい

前回は長編のヤマについて書きました。

ヤマとは文字どおり「山」のことで、「越えなければならない障害物」でしたね。

長編ではヤマが4つあるのが一般的です。↓

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ゴールに着く前に、「主人公が4回ピンチになる」と考えるとわかりやすいでしょう。

主人公は小さな問題を解決しつつ、最後に大きな問題を解決して、物語は終わります。

では、今回の話を始めましょう。


既存の作品からヤマを抜き出す

前回の説明だけでは、実際に長編を作るのは難しいと思います。

ですので、まずは、少しずつ長編のヤマに慣れていきましょう。

ヤマに慣れるには、既存の作品からヤマを抜き出してみるのが効果的です。

やってみると、どんな作品もだいたい同じ骨組み(構造)になっていることがわかると思います。

では、ヤマの探し方を説明していきます。


ヤマの探し方

まず、ヤマを抜き出す作品を選びます。

連続ドラマや連載マンガではなく、映画や2時間ドラマを選んだ方がやりやすいでしょう。

連続ドラマやマンガは、骨組みがはっきりしていないことがあります。

また、最初はシンプルな映画やドラマを選んだ方がいいですね。

ドンデン返しがあったり、複数の話が並行して進むようなややこしい作品だと、ヤマがわかりにくいです。

作品を決めたら、全体の長さの1/4ごとに映像を止めていきます。

2時間ものなら30分ごとですね。

すると、だいたいその辺りがヤマになっているはずです。

ヤマは、文章だと「〇〇が起こって主人公がピンチになるところ」と表現することができます。

そういう箇所を探してみてください。


最後のヤマ(クライマックス)辺りに、小さなヤマがいくつもある場合があります。

細かいヤマはいいので、「主人公がピンチになる」大きなヤマを探しましょう。

さて、ではさっそく「鬼滅の刃」を例にヤマを抜き出していきます。


ヤマを抜き出す1:映画『鬼滅の刃 無限列車編

テレビシリーズではなく、映画版で考えてみましょう。

※見ていない方にはネタバレになります


スタート:主人公たちは列車に潜んでいる鬼を退治したい

ヤマ1
問題:列車に鬼が現れる
解決:煉獄さんが撃退する

しかし、実はみんな夢に捕らわれていた

ヤマ2
問題:夢から抜け出せない
解決:夢の中で自分の首を切り、夢から抜け出す

ヤマ3
問題:夢から覚めながら戦うが、敵は列車そのものだった
解決:皆で協力し、乗客を守りながら敵を倒す

ヤマ4
問題:上弦の鬼が現れる
解決:煉獄さんが辛うじて撃退する

ゴール:鬼を退治し、上弦の鬼も撃退した


図にするとこうなります。↓

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無限列車編はほぼ2時間なので、だいたい30分ごとにヤマが来ます。

解決方法はほぼバトルなので、とてもわかりやすい構造になっています。

ただ、連載マンガを抜き出して映画にしていますから、最後は煉獄さんの話になっており、主人公がやや霞む結末となりました。

もし炭治郎をあくまでも主人公に据えるなら、最後も炭治郎が戦う必要があるかもしれませんね。


ヤマを抜き出す2:『魔女の宅急便』

次は、皆さんが見ていそうなジブリ映画で考えてみましょう。

古い作品ですが、『魔女の宅急便』です。

スタート:一人前の魔女になりたい主人公

ヤマ1
問題:住むところがない
解決:人助けをして、パン屋に住まわせてもらう

ヤマ2
問題:配達を頼まれるが、荷物を落としてしまう
解決:ジジや犬、森にいたお姉さんに助けてもらう

ヤマ3
問題:配達中にずぶ濡れになり、パーティにも行けず、風邪を引いてしまう
解決:パン屋の奥さんに看病してもらい、少年とも会えた

しかし、ジジの言葉がわからなくなり、魔法も弱くなる

ヤマ4
問題:飛行船の事故で友達(トンボ)が危機に陥る
解決:力を取り戻し、トンボを助けた

ゴール:友達もできて、なんとか街でやっていけそう


図にするとこうなります。↓

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『魔女の宅急便』はほぼ100分ですから、25分ごとに見ていくと、ヤマが見つかります。

4つめのヤマ(クライマックス)前の、主人公の落ち込みがけっこう長いです。

物語の面白さとは、端的に言うと、「谷と山の差異」ですから、最後のヤマの前で落ち込みを作ることはよくあります。

ただ、最近は「落ち込み」が好まれなくなってきたので、あまり落ち込みを作らず、クライマックスを二重にするなど、盛り上げを大きくする方向(ヤマを大きくする)で考えることが多くなってきていると思います。


ヤマを抜き出してみると

このようにヤマを抜き出してみると、物語の構造がわかってきます。

最初は小さめの問題から始まり、徐々に問題が大きくなっていき、最後に最大の問題が起こることがわかるでしょう。

後半になるほど、主人公はピンチになっていくわけです。


今回はヤマの後の展開を追っていませんが、ヤマの後は、たいてい静かな場面が続き、物語が小休止するものです。

一旦、落ち着いたところで、また、次のヤマに向けて盛り上がっていくのですね。


それでは宿題を出しておきます。


宿題

次回までの宿題です。

【課題6】既存の作品からヤマを抜き出してください

何度も見たお好きな映画などで考えてみるといいと思います。

余裕があれば2つ3つやってみると、だいたい同じ骨組みになっていることがわかるでしょう。


今回のまとめ

簡単な物語のつくり方4回目「既存作品から話の骨組みを抜き出してみよう」でした。

1.長編の骨組みに慣れるには、既存作を分析するのが効果的
2.映画や2時間ドラマからヤマを抜き出してみる
3.1/4ごとに映像を止めれば、そこがだいたいヤマ
4.ヤマは最初は小さく、後半になるほど大きくなっていく

次回は「長編のヤマについてもうちょっと詳しく」です。↓

それではまたくまー。


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