文章を書きたくなる本
文章を書くのは好きですか?noteに投稿している人は文章を書くのが好きな人が多いと思います。小学校教員をしていると、文章を書くのが苦手な子にたくさん出会います。私は、文章を書くのが得意ではありませんが、書くことは好きです。いろんな気持ちが心の中でうごめいてくると、”書きたい”という衝動に駆られます。
この秋から冬にかけて、文章を書くことに関する本を数冊読みました。中高生向けのものが多いですが、文章を書くとはどういうことなのか、どうやったら文章が書けるのかということがそれぞれの筆者の経験を基に語られており、どれもおもしろいと思ったので、今日はその本たちを紹介します。
さみしい夜にはペンを持て(古賀史健 著,2023,ポプラ社)
ほぼ日のサイトで紹介されていたのがきっかけで読んだ本書。『嫌われる勇気』でベストセラーになった著者によって書かれました。文章の書き方を指南するものでありながら、物語形式で書かれているのが特徴。学校に行くことがしんどくなってしまった主人公のタコジローが”書くこと”を通して自分を見つめていきます。
私がこの本で心に残ったのは「「考える」とは答えを出そうとすること」という言葉です。「思う」と「考える」は違っていて、考えるときには答えを出そうとしていると筆者は言います。考えたことを書いて、一時的に自分の答えを出す。これは、大変だけれどすごく大切なことだと思いました。答えを先送りしているから、書くことに抵抗を感じるという人もいるかもしれません。
この本では、人に見せるためではなく自分の心と対話するために日記的な文章を書くことを薦めています。自分と向き合うための文章を書きたい人におすすめの1冊です。(物語としても普通におもしろいので、小6の娘も1日で全部読んでいました。)
めんどうくさがりなきみのための文章教室(はやみねかおる 著,2020,飛鳥新社)
娘がはやみねかおるのファンで、この本は娘から借りました。前にもnoteで紹介したことがありますが、文章術の本を並べるならこれも欠かせない!と思ったので再掲します。こちらの本も、物語形式で書かれていてとても読みやすい。部分的に授業で使ったりもしました。物語ページと文章術のまとめが交互に出てきて、確認しながら読み進められるのも嬉しいです。文章術のまとめのページはトピックに合わせて辞書的な使い方もできてとても便利。娘もこの本を読んでから、文章が書きやすくなったと言っていました。この本では、いろいろな文章の書き方が出てきますが、小説を書く人へのアドバイスで、物語を書き終えることの大切さについて書かれた章が一番印象に残りました。
私のクラスでは、「作家の時間」という物語を書く授業を行っているのですが、この授業を始めると、心の中で盛り上がりすぎてお話を書き終えられない子が続出します。そんなとき、この本の一節を読み聞かせすると子どもたちは実感を伴ってうなずいていました。作家さんのアドバイスは説得力がありますね。
苦手から始める作文教室(津村記久子 著,2022,筑摩書房)
私の好きな「ちくまQブックスシリーズ」で作文の書き方の本が出た!と思って購入。これが、ものすごくおもしろい!買って大正解でした。津村記久子という作家を私は知らなかったのですが、この本がおもしろかったので、この人が書いた小説も買って読んでいます。
芥川賞作家でありながら、文章を書くことが苦手と最初に宣言しているところに、驚きと親近感が沸きます。しかも「自由に書いてください」と言われることが苦手だというのです。この本には、書くことの大変さや難しさが常にどんよりとのしかかっている感じが付き纏います。それが「困っているのは自分だけじゃないんだ」と励まされる感じがして心地よいのです。
本当のことを書いている文章は、たとえ不格好でもおもしろい。うそを書いているきれいな文章はつまらない。筆者はこう述べています。とても共感しました。
この本は、エッセイを書く人に特におすすめです。私も今後noteを書くときに参考にしたいなと思っています。
放課後の文章教室(小手毬るい,2019,偕成社)
これも中高生向けで、文章を書くことを教えてくれる本です。文章を書くのが大好きな著者。書くことに対する想いやこだわりを感じます。やや厳しめに書かれている文章なので、文章を書くのが苦手な人にはちょっとハードルが高いかもしれませんが、「文章をうまく書きたい!」「小説家になりたい!」という強い想いがある人には心に響く1冊だと思います。
たとえる技術(せきしろ,2016,文響社)
図書館で借りた本。もののたとえがたくさん載っています。正直、地の文はあまり頭に入ってきませんが、たとえの例文がとにかくおもしろくて、パラパラめくっては想像を巡らせて、にやついています。そして、不思議なことにこの本をめくってから、周りを見渡すと「何かに例えたい!」という衝動に駆られます。寒いなぁ…と思ったら、「〇〇が××するような寒さ」みたいに。
これ、授業でも何か使えそう。表現することの可能性に気付かせてくれる1冊です。
街場の文体論(内田樹,2016,文春文庫)
最後は、内田樹です。ここ何年かで読んだ「文章を書くことをテーマにした本」の中では、一番自分が影響を受けた本です。1章1章の内容が印象深くて、何かを書くときには必ずこの本の内容を思い出します。
もう第1章からおもしろくて、目が離せませんでした。「読み手に対する敬意」について書かれているのですが、「こういうものを書いておけば読み手は喜ぶんでしょ」みたいに、読者を馬鹿にしたような態度で書いていているものは伝わらないよといメッセージがこもっています。同様の内容が第9章にも「宛て先について」というテーマで出てきます。この章では「メタ・メッセージ」という言葉で説明されるのですが、これはぜひ本書を読んでみてください。(うまく説明できないので。)
この本は、中高生向けではなくて、文章を書くことについて悩んだり考えたりしてきた大人が読むといいと思いました。私は1回で理解しきれなかったので、ノートにまとめながら読みました。おかげで内容が頭に残っています。
終わりに
書くことの楽しさや難しさを感じている今日この頃です。「書きたいことがあるから書く」というより「書いているうちに何か見つかるかも」という気持ちで書くことが多いです。
だから、自分の書く文章は、分かりやすい文章には程遠いのかもしれません。でも、書くことに誠実でありたいなと思います。それは人として誠実であることと深く関わっているようにも感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました!