#68 ろう者と手話通訳
こんにちは。にいまーるの臼井です。
いつもnoteを読んでくださってありがとうございます。
先日、NHKで紹介されていました。厚労省の調査によると手話通訳士は、ろう者85人に1人の割合で存在しているそうです。
今回は、手話通訳について書いていきます。
1)手話通訳とは
以前、YouTubeで手話通訳は単に言葉を訳せばいいという発言があって炎上していましたが、通訳というのは、言語間のコミュニケーションを円滑に行うための専門的なスキルであって、異文化どうしお互いに理解し合えるようにする役割があります。
手話通訳は、他の言語の通訳と同様に、情報やメッセージを相手に伝える際、言葉をそのまま訳すのではなく言語の文化的要素やニュアンスを考えないといけないため、専門性が高い仕事です。ただ、他の言語(英語-日本語など)のと比べて手話通訳の場合は社会的地位がそこまで高くないため、一部の地域では聴者側にも、そして残念ながらろう者側にも「手話通訳者は低額でいい」という認識があります。
このような背景もあり、手話通訳専業で食べていける人はごく少数です。
2)手話通訳を使う場面
ろう者が手話通訳を使う場面は多岐にわたりますが、当施設の利用者さんが手話通訳派遣を利用する機会が最も多いのは「病院」、その次が「面談」です。この他にも学校、PTA活動、講演、結婚式、裁判等があります。手話通訳を利用することで、多くの利用者さんが社会資源を活用することができています。
ただ、手話通訳が必要な場面であっても、ろう者が手話通訳を諦めざるを得ないケースがあるのも事実です。
私自身、施設を運営する立場ですので、制度上必要な資格を取るために様々な研修や講演を受ける必要があります。にもかかわらず、研修に手話通訳がなかったり、運営団体に手話通訳の配置をお願いしても前例がないことを理由に断られたり、手話通訳の配置にかかる費用の自己負担を求められたりすることがあります。
10年前と比べると、手話通訳が必要な場面において、手話通訳派遣が認められるようになった事例が増えているものの、手話通訳を利用できない、または利用を想定されていない場面は依然として残っています。
3)手話通訳と音声認識の違い
「スマホに音声認識アプリをインストールすれば、手話通訳は必要ない」と考える聴者がいますが、この二つの間には「文字が運ぶ情報」と「人間が運ぶ情報」という違いがあります。
音声認識は、聴者が話す言葉を文字化します。手話を使うろう者からの発信まで保障してくれるわけではなく、状況によっては【一方通行】の会話になります。
手話通訳は、ろう者が話す手話を読み取って音声に訳し、聴者が発する言葉を聞き取って手話に訳す。このような【双方向】の会話が成り立ちます。
ろう者や手話を使う人たちの間ではそういったことが当たり前なのですが、仕事上、さまざまな人に会うたびに「手話通訳を初めて見ました」と未だに言われます。
ところで、今年2023年12月に手話通訳士を取り上げたドラマ「デフ・ヴォイス」が放送されることになりました。
「silent」や「星降る夜に」で手話が話題になりましたが、今回のドラマはさらに一歩踏み込んで、手話通訳士と周縁にいるろう者にスポットライトが当てられる形になりそうです。
「デフ・ヴォイス」に出演されている橋本愛さんは、次のようにコメントしています。
橋本さんの言葉を借りて言えば、聴者とろう者の間に流れる川に橋を架け、両岸の行き来を可能にするのが手話通訳でしょうか。
過去に、これに近い内容でnoteを書いてくれた職員がいましたので、こちらもぜひお読みください。
>>#36 文化の架け橋としての手話通訳
4)手話通訳も「人間」
音声認識アプリと違って、手話通訳を担う人は私たちと同じ「人間」です。人間なので完璧に通訳することは本当に難しいですが、手話通訳者が高パフォーマンスで実力を発揮できるようにするためには、手話通訳者が聞き取りやすいように環境整備したり、あらかじめ予備知識を共有したりといったユーザー側である私たち(聴者も含む)の理解、協働が不可欠になります。
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