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地域と共に成長する日本語教育  台東区の実例から見る多文化共生のカギとは

概要

先月某日、日本語を教えるだけでなく、多文化共生コーディネーターや地域日本語教育コーディネーターとしてもご活躍されている山藤弘子先生にお越しいただき、「地域の日本語教室」「多文化共生」「子どもの日本語教育」などについての勉強会をアスクで開催しました。
さらに、勉強会後にコーディネーターのお仕事についてや日本語教師の方に向けたメッセージなどのインタビューもさせていただきました!

日本語教育に関わる多くのみなさまに、ぜひ知っていただきたい内容です。



山藤先生プロフィール

山藤弘子先生
アスクの前で撮らせていただきました📸🍃🌼
  • 山藤弘子(やまふじひろこ)

  • 日本語教師歴25年

  • 日本語学校で教務主任として留学生に教えてきた

  • 子育てを機に地域でも教え始める

  • 現在、台東区役所人権多様性推進課の日本語教室や個人で地域に暮らす外国人(子供から大人まで)に教えている

  • 文化庁地域日本語教育コーディネーター、多文化共生コーディネーターとして行政とも関わり、区内の多文化共生に向けた様々な取り組みのサポートを行っている


勉強会の内容

勉強会では、台東区の地域の日本語教室や多文化共生などについてお話いただきました。

山藤先生が活動されている台東区は、東京都の中でも4番目に外国人住民の比率が高く、100カ国以上の方が暮らしているんだそうです。
外国人住民は20歳〜34歳代が最も多いのに対して、日本人は高齢化も目立ち、伝統文化が色濃く残る下町であるからこその問題もあるんだとか。

そんな問題を解決するために先生は「たいとう多文化共生まちづくりの会」という団体で、地域に暮らす日本人と外国人が一緒に、下記のような活動を行っているそうです!
☆毎週お寺に集まり日本語を学び合う
☆下町らしくおそろいの絆纏でまちの清掃・神社の朝市でお店を出す
英語を使わなくても、やさしい日本語を用いて交流ができるのだそうです😊

外国人が日本語を学ぶだけでなく、日本人もその外国人の価値観や得意なことから学ぶなど、お互いに学び合うことが多文化共生につながるとのことでした。地域が求めるのは、同じ地域を作っていくメンバー。教えてあげる・教えてもらうという立場でなく、分かり合うことが前提だそうです。

地域での日本語教育のあり方は、暮らしと直結しており、日本語学校の教育とは異なる視点が必要だと、改めて考えさせられました。


山藤先生へインタビュー


――勉強会の中でも"分かり合う" や"学び合う"という言葉が出てきました が、台東区での取り組みの例を教えてください。


直近では、多言語による読み聞かせの会を始めました。
日本語の習熟度は別として、自分がおすすめしたい自分の国のお話・子どもと共有したいものとかを持ち寄り、自分の母語や日本語で読み聞かせをするという参画の仕方も。
あと、区内の小学校にある放課後教室で、「えいごであそぼ!」という活動も。地域に暮らす英語母語話者のインドやフィリピンといった国のお母さんたちが、子どもたちと英語を使って遊びます。フルーツバスケットやハンカチ落とし、お店屋さんごっこを英語でやったりとか。他にも来日して間もなく、なかなか日本の小学校生活に馴染めない外国人の子どもへの寄り添いサポート・コミュニティー通訳、外国人住民のベジタリアン向けの日本料理教室など、いろいろな関わり方があります。

――いろいろあるんですね。外国人住民の得意なことを活かせる環境を見つけたり、活動場所も必要だと思いますが…

そうですね。実用化に向けてつなげる役・コーディネートする役がいないと絶対に回らないんですよね。例えばインドの方が料理教室・ヨガ教室をしたいときに、区民館を借りる申し込みができないとか、広報の手続きの仕方とか、実際に稼働してしばらくするまで伴走が必要になります。
そういうところのつなぎ役として、日本語のプロっていうことだけじゃなく、外国人住民も地域で活躍できるまで”伴走する”のがコーディネーターかな…って思います。

日本語教師の方って、こういうの結構得意だと思うんですね。お知らせを一緒に読んで、易しくして伝えたりとか…。
また、外国人と接する日本人側もどうコミュニケーションをとっていったらいいか不安をいだいている方も多いので、十分意思の疎通ができますよという寄り添いなども必要です。どちらのことも分かる方は(コーディネートに)もってこいです。

――先生はどのようにして多文化共生コーディネーター・地域日本語教育
コーディネーターになられたのでしょうか。

多文化共生コーディネーターは、東京都が近年養成をやっていて、その研修を受けました。地域日本語教育コーディネーターは、文化庁がやっている募集を受けて取りました。びっくりすることに、今受けられるのは基本行政の人なんです。私は行政の職員でも何でもなく、ずっと諦めていたんですが、多文化共生プランの策定委員をしていたことや、区の担当の課からの推薦などもあり、モデルを作るところから入れていただきました。

――今後、多文化共生社会に向けてコーディネーター的存在が増えてほしい・日本語教師の方にも興味を持ってほしいなどの希望はありますか。

日本語教師が日本語を教えているだけの時代じゃなくなったっていうのをすごく肌で感じています。
何が私たちにできるのかなって思った時に、少なからず日本語教師の方って人好きが多いと思いますし、外国の方にもオープンマインドで授業していかなきゃならないから、資質としては備わっている方が多いと思うんですよね。
そういう外国の方とのコミュニケーションとか分かり合いに慣れてきている方が、自分の住んでいる地域でいいので、まちづくりやまちの課題に加わっていただいて、今までのノウハウを活かしてもらえると、ぐっとその地域の多文化共生が進むと思います。

――日本語教師など日本語教育に関わる方へ向けて何かメッセージはありますか。

本当に外国人住民と日本人住民とのつなぎ役として日本語教師の方にぜひぜひ力を貸してもらいたいと思います。私たちのまち、私たちの国づくりに直結してる、それぐらい使命のある仕事です。仕事っていうか役目。

今、外国の方が増えていますが、10年、20年後になって初めていろんなシステムが多様性を受け入れてっていうのでは遅いので、やっぱり今から確実に種を植えていきたいです。
種を植えて芽を出していって、その時にもうちゃんと共生しているっていうまちにしたいし。

自分の地域の多文化共生にちょこっと軽く関わるのでもぜんぜんいいです。日本語学校の整備や国家資格だけでなく、本当の意味で、私たちの町づくり・国づくりに直結していることとして、日本語教師の方にぜひ力を貸してもらいたいと思います。

――山藤先生、ありがとうございました。

台東区の活動紹介/SNS

  • たいとう多文化共生まちづくりの会  Instagram:@taitotabunka
    7月中に、浅草橋の神社で朝市が開催されるそうです!

  • ボーダレスステーション「せかいまちRADIO」


台東区の活動はもちろん、自分の住んでいる区の多文化共生の活動なども、ぜひ調べてみてください!




ただいま、過去の記事のお引越し中です🏠🚙🏠
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