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こころの基礎体力を育てる小学校【カナダのアートセラピー4】

道を歩けば「ご自由にどうぞ」と椅子が並び、
冬にはキャンペーンバスの窓から、ブランケットが飛んできて、
ビーガンクリームチーズの試供品が、もはや試供品ではなく本製品2パック手渡される…。

カナダではなぜか、私が歩けば、「タダ」のものがやってくる。

バンクーバーの友達に「なんであなたはそんなにラッキーなの!?私は数年住んでるけどそんなのに出会ったことないよ!」と言わしめた。えへん。生活に困ったらカナダへ戻ろうかしら、なんて。

さて、カナダの武者修行シリーズ、第四弾。

私が、カナダでとてもお世話になったアートセラピスト リズさんの活動の一つを紹介します。

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バンクーバーから、バスで1時間半ほどの「デルタ」という町。
リズと私が向かったのは、エレメンタリースクール。日本でいう小学校ですね。

そこで月一回、9歳のこどもたちに向けて、授業時間内のアートセラピークラスが行われます。

つまり国語や算数の授業と同じように、公教育として、アートセラピーの授業を、1クラスみんなが受けるんです。

カナダでは、家庭環境や問題行動、発達障害などで、ケアの必要な子どものために、アートセラピーが学校で提供されることが多くあります。

しかし、大半は放課後や個別に行われるため、このリズさんの活動のように授業時間内に実施されるのは珍しいケース。


この時は12月のため、クリスマスに因んだオーナメントやモチーフを使って、一人一人それぞれが自由にアートしました。

この時用意された様々なデコレーション用の素材。ワクワクしますね〜

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この時間は、美術の技能向上を目的とした図工の時間とは、
全く異なるアプローチです。

提供されるプログラムはリズさんが、豊富な心理学の知識を組み込んで熟考したもの。子どもの成長に必要な要素が、総合的に組み込まれています。(心、ソーシャルスキル、創造力など…)

毎回クラスは写真のように、みんなで輪になって始まり、みんなで輪になって終了します。こうした構築的な枠組みや、さまざまな心理的配慮によって、子どもたちの心の表現は、安全な中で行われます。

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一見すると、子どもたちはアートを作って楽しんでいるだけのようでいて、彼らはこのプログラムによって、様々な能力を身につけているんです。


例えば、終わりの時間に、一人ずつ順番に自分のアートを紹介している場面。

発言している子の作品を、思わずみんな覗き込みます。
9歳の子どもが20人近くいて、強制されることなく、誰かの心に寄り添い、じっと話に耳を傾けている。これは、じつに驚くべき光景でした。

自分の意見を自分の言葉で語ること。

人が話す時にはしっかり聞くこと。

自分のイマジネーションを形にすること。

自分の表現を大切にすること。

他の子の表現を大切にすること。


9歳の彼らはアートセラピーを通して、それらの多くを理解していました。
そして、この場はアートセラピストとの信頼関係によって作られています。


日本では年数回ではあるけれど、イベント的にアートセラピーを実施している小学校や中学校が、数校あると聞いています。それだけでも素晴らしいことで、必ずや体験した子どもたちの心に残っていくと思います。

ただ、アートセラピーは、連続した関係性の中で進んでいくセラピーです。
定期的に継続するアートセラピーによって、どう自分を理解して、どう周りの人を理解していくか、という心の基礎体力がより育っていくのではないかと思います。


大学関係者に聞いた話ですが、今、入学してからドロップアウトする学生が増えているそうです。

それは、大学入学まではレースを敷いたように試験勉強というTO DOと、大学受験合格というGOALが明確だったのに対し、
入学後は急に「自分のやりたいことをしなさい」「自分の進路は自分で決めなさい」と自分で考えることを求められ、レールを外されてしまうから。

一律に意味が伴う言葉や、大人から与えられたものさしではなく、
自分の感性で感じ取るチカラって、大人になってから真価を発揮するはずです。


「今日の四限目は、アートセラピーだ!」

そんな子どもたちの声が聞こえるクラス、ステキだと思いませんか?


(この記事は、私の以前のアメブロの文章を加筆修正したものです。)

ありがとうございます。サポートは、日本画の心理的効果の研究に使わせていただきます。自然物由来の日本画材と、精神道の性質を備える日本画法。これらが融合した日本画はアートセラピーとなり得る、と言う仮説検証の為の研究です(まじめ)。