②社会での芸術の必須性について

まず、演劇という芸術を営むわたしたちに今、大きな課題や疑問が少なからず浮かんでいることと思います。

それは、この社会の中での「芸術」の立ち位置とは。必須性とは。

普遍的な議題でありつつも、コロナ騒動が起きてから改めて、野田秀樹さんをはじめ、色んなアーティストがこの疑問に触れているのを目にした方も多いと思います。

わたしもそのひとりであり、改めて芸術とはなんなのか、ということを繰り返し考える日々でした。この真のアンサーについては、皆さんそれぞれのお考えでいいと思いますが、ここではわたしの考えを述べさせてください。

わたしは今回の舞台を無理に遂行しようとはもちろん思っていません。わたしはお客様を含めた皆様への病気や死の責任を取ることができないからです。

わたしには病気を治す力はありませんし、病気にかからないことを約束もできません。病気になっても、治療に必要なお金すら、援助できないかもしれません。

率直に言いますが、芸術は生きていく上で必須なものではなく、社会の中での必須項目としての優先順位が低いこともわたしは肯けてしまいます。

なぜなら芸術で凡ゆる人のお腹が満たされることはありませんし、芸術では治らない病気、芸術によっては避けられない死の方が圧倒的に多いからです。

わたしは、人の生死を動かすことに芸術は必須なものとは言えません。極限の状態で、生死を彷徨う事態の中で、物理的に与えてくれるものは芸術にはほぼ無い、とも言えます。

では、芸術とはなんなのか。③でわたしにとっての芸術とは、ということについて考えを述べていきます。