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日本ワインの上質なペアリングに酔いしれて、東京・外苑前 ミシュランガイド掲載の「JULIA」で感性が磨かれる夜

自立した男女のデートなら、洗練された大人の街 東京・外苑前へ。駅から徒歩5分、表通りの喧騒から一歩離れた道を入るとひっそりと姿を現す「JULIA」は、ミシュランガイドなどでも紹介されている知る人ぞ知る隠れ家レストランだ。

店のシンプルで控えめな看板を見つけ入っていったのは、1組のカップル。入り口の扉をくぐると、目の前には落ち着いたラウンジが広がっていて……?

1階のラウンジ。食前酒を楽しみながらプライベートな時間がスタートする

五感を研ぎ澄ます、ラウンジでのひととき

世界的に有名な星付きのガイドブックなどで多数紹介されている「JULIA」は、19時から1階のラウンジで食前酒と小さな前菜を楽しんだ後、2階に案内され、コース料理が一斉にスタートする。まずラウンジで気持ちを落ち着かせ、美食を堪能するために五感を研ぎ澄ませるのだ。

「ずっと気になっていたんだ、この店。君が好きそうだなぁと思って。」ラウンジの椅子に腰かけながら微笑む男は、佑介、36歳。都内の大手広告代理店でクリエイティブディレクターを務めている。毎日仕事に忙殺される彼にとって、彼女と過ごす時間は貴重な安らぎだった。

ひと筋の泡が立ち上るグラスを傾けながら、女は「ありがとう、佑介。ホントに素敵なお店だね。」と嬉しそうに辺りを見渡した。女はアメリカ人と日本人のハーフ。いつも長い金髪を後ろでまとめている。名前はマイ、32歳。フリーランスのグラフィック・デザイナーだ。

アートやクリエイティブに興味のある二人は、モダンな内装や珍しいフロアの動線に興味津々。お客の7割くらいは外国人客だろうか。英語も飛び交い、まるで海外にいるかのようだ。心地よい音楽が流れている。

NYの星付きレストランで研修した夫婦が二人三脚で営む店

2階のテーブル席。奥にはオープンキッチンとカウンター席もある

2階に案内されると佑介は、「この店では全てのメニューにペアリングがついてくるんだよ。」とマイに説明した。事前にインターネット検索で店の予習をしてきたマイも、「日本ワインだけのペアリングもあるって、珍しいよね。」と微笑んだ。

夜の料理は必ずペアリングがついてくる。おまかせコース10品・10グラス3万1,900円と7品・7グラス2万5,000円の2種のみ。アルコールかノンアルコールかは選択できる。

料理が運ばれてくると、二人はその美しさや創造性、絶妙なワインペアリングに次々と驚かされた。経営企業の代表であり、ソムリエも務める本橋健一郎さんと、エグゼクティブシェフであるnaoさんが二人三脚で営む店。二人がプライベートでもパートナーであり、公私ともに唯一無二の存在であると聞いて納得がいく。料理とワイン、お互いが魅力を見事に引き出している。

「沖縄県東村産パイナップルの発酵スープ フロマージュブランのババロア 北寄貝、じゅんさい、ディルのフレーバーオイル」

「パイナップルの発酵スープって、発想が面白いね。」と幸せそうなマイ。ニューヨーク・マンハッタンのミシュラン一つ星レストラン『GRAMERCY TAVERN』にて研修していたこともあるnaoさんの料理は、単なるフレンチにとどまらない。

一つ一つの料理が、naoさんの感性を余すところなく表現した独創的なもの。奥のオープンキッチンにいるnaoさんの真剣な表情が垣間見られて、マイはそのカッコ良さにしびれていた。

ワイン好きな佑介はソムリエ本橋さんのペアリングに興奮。「サッシーノは聞いたことがあったけれど、初めて味わうよ。日本のマルヴァジアも初めて!」と青森県のワイナリー「ファットリア・ダ・サッシーノ」の白ワインを味わう。マルヴァジアというぶどう品種は海外のワインでもマイナーで、日本産は本当に希少だ。

日本ワインだけのペアリングを提案してくれる貴重な店。写真は一例、日により銘柄は変わる

本橋さんもnaoさんとともにアメリカの星付きレストランで研修した。その時、店のシェフソムリエから「日本人ソムリエとして日本ワインを紹介していくべき」とアドバイスを受けたことがきっかけで、日本ワインペアリングを始めたのだという。

料理とワインの組み合わせは、男と女の相性に似ている

「茨城県つくば市産の新玉葱のコンフィとエスプーマ 自家製ドライトマト、昆布締めした甘海老、北海道産の雲丹」

料理と日本ワインの感動的なペアリングを味わうたびに、マイの顔はほころんだ。彼女の長いまつ毛が繊細な影を落とすと、何だか今夜は消えそうなほどはかなげに映る。佑介はふと少し真剣な表情になった。「マイ、最近はどう? 何か困っていることとか、ない?」

新玉葱のコンフィにフォークを添えていたマイは「う~ん、そうね。実は少しだけスランプに陥っているかも……」と答えた。言葉を選びながらマイは、「新しいデザインのアイデアが浮かばなくて。」と小さくつぶやく。

佑介は優しく微笑んでマイの青い目をじっと見つめた。「大丈夫だよ、マイは。僕が誰よりもマイの才能を知っているよ。今回もきっと大丈夫」。

「茨城県北部の各地から届く山菜たち 様々な調理法で」

少し驚いたような表情を一瞬だけ見せたマイは、目を伏せて口角を上げた。いつも自分の心強い味方でい続けてくれる佑介の言葉が、深く心に響いた。「佑介の方は、どうなの? 仕事は順調?」

佑介はグラスのワインを揺らした。岡山県「ドメーヌテッタ」のシャルドネ。シャルドネなのにオレンジ色に輝いて美しい。

「俺の方はね、相変わらず忙しい。けれど、悪くないよ。」茨城産の山菜の一品は、ほろ苦いものや、土っぽい香りなどどれも力強い風味で、一口ごとに楽しい。

実は佑介もたまにスランプに陥っていた。だがこうしてマイと一緒にいると、不思議とそれは"クリエーターの証し"のような感覚で自分の中で処理できてしまう。気持ちに少し余裕が生まれてくる。山形県の「酒井ワイナリー」の「まぜこぜワイン赤」と味わいながら、佑介は笑顔で答えた。

分かり合える二人だからこそ、自然体で美しく輝く

「たらの芽・こごみ・蕾菜の自家製蕗の薹味噌ソテー 北海道産帆立のグリル、菜の花の泡」

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※2024/09/10 にマイナビニュース様に寄稿した記事をこちらでもご紹介いたしました。ご愛読いただきましてありがとうございました。



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