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ハッサンのごはん

漆野密子は、久しぶりに太陽を浴びた。
この3日間、ある理由で家に引きこもっていた。
だから、
「ハッサンのごはんが食べたい」
と無性に思った。

太陽と慈善活動はなぜか似ていると密子は思う。
半地下生活を送っていた密子には、太陽の光も慈善活動家の爽やかさも、とても眩しく感じたのだ。
眩しすぎて目をつむった。

ハッサンのごはんは、ゼロから手作りだ。
ファラフェルの野菜を刻む軽やかでリズミカルな包丁の音を聴きながら、商店街を行く人を見物。
密子がハッサンの店の前で座っていると、目の前を行く人は気になる様子。
ハッサンはいつも、「スワッテマッテテ」と言う。
密子は、屋台のベンチに座っているのだ。

「アタタカイウチニタベテネ」とハッサンは言ってファラフェルを渡してきた。
その瞬間が一番しあわせになれる密子であった。

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