コシャリ
ハッサンのコシャリのごはんには芯がある。
きっと、漆野密子が注文してからごはんを炊くのだ。
ハッサンの店のベンチに座って、道行くカップルを見ていると、
私のなにがいけなかったのか、
と思う密子だった。
高校生の時、
親に見つかった時、親は泣き崩れた。
母親は
「密子と一緒に死ぬ」
と言った。
そんなことを思い出しながら、あるはずのない財布の中の3万円を想像する密子だった。
ハッサンの店のコシャリは、密子をしあわせにする。
ハッサンが心をこめて、ゼロから作る料理だからだ。
「アタタカイウチニタベテネ」
密子は、ハッサンの言うことは素直にきくのだ。
こんなかわいい女なのに、恋愛のしあわせを知らないなんて、
かわいそうに、かわいそうに。
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