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誰もが誰かを傷つけて、傷つけあって石の形ができていきます。

トライアスロンは、海で泳ぐことが多いのですが湖や池も、川もあります。川で泳ぐのは、流れがあり難しいです。

たいていの川は茶色く濁っていて川底は見えません。ましてやそこにある小石がどんな形をしているかなんて気にしてられなかったです。

ただ泳ぐのに必死で。

流れに負けないように、腕を回し脚を蹴る。誰かに蹴られたりわたしも知らないうちに誰かを殴ったり。

自分がどこに向かって泳いでいるのか、ヘッドアップして方向を確かめて。

進む方向、ゴールしか見てなかった。

水底には、たくさんの想いがあったのに。

水のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知らない

泳いでいたはずなのに、わたしは川のほとりに立っていただけでした。

川のほとりに立つ者は  寺地はるな

新型ウィルスが広まった2020年の夏。カフェの店長を務める29歳の清瀬は、恋人の松木とすれ違いが続いていた。原因は彼の「隠し事」にあると思っていたのだが、ある出来事をきっかけに「本当の理由」を知ることになり・・・。

双葉社

川底にあるさまざまな形の石のように、違うかたちの人間たちが描かれています。彼らの考えや持っているもの、抱えているものが交差してくさまが、ぶつかりあい、傷ついて傷つけてます。

清瀬のカフェで働く品川さんは、トラブルメーカーで清瀬に「見たくないものを見せられ、考えさせられたくないものを考えさせ、したくない後悔ばかりさせる」とあります。

品川さんサイドももちろんあるのですが、この描写で清瀬が普通に育ったゆえの自分勝手さが伺えます。

29歳。意見の違う人間もいる、という経験値が少ない気がします。

松木も人に気を遣い、それゆえに感情を消化させることができず爆発してしまうこともあります。

松木の友人のいっちゃんは、かわいそうな女性を守りたいと思う。それはその女性側にしたらまた違ったものになります。

川底の石って、流されて鋭角になったりまるくなったり、光ったり、小さくなったり、なくなったり。

流れの中で自分自身(石)は、傷つき傷つけられます。

傷つく、という言葉は一方通行でないと思います。対で傷つけてます。

傷ついた、と言われて傷ついたとつぶやかれたことあるし。

誰もが誰かを傷つけて、傷つけあって石の形ができていきます。

水底の石がそれぞれ違うことを知っている。川自身も知らない石が沈んでいることも。あるものは尖り、あるものはまめらかに丸く、またあるものは結晶を宿して淡く光る。人は石を様々な名で呼びわける。怒り。痛み。悲しみ。あるいは、希望。

おだんごさんが、こちらの記事で紹介してくださってました。本だけでなく、「読書の3達人」として軽快な文章で。

以前、本読みアスリートと書いたことがあるのですがおだんごさんのnoteもアスリート魂感じます。

競技者。つねにnoteで発信している人。相手を敬っている人。

おだんごさん、素敵な本の紹介ありがとうございました。

本読み競技のようで楽しいです。

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