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すべてのことはメッセージ

受験のためピアノを再開したときの先生が、国立音大の学生でレッスンの前に弾いてくれたのが荒井由実の『翳りゆく部屋』でした。クラッシックのような繊細で美しいメロディーライン。感傷的な歌詞。実際にユーミンのレコードで聞いたら、壮大なパイプオルガンの音色が響いて。

それからのわたしの青春にはユーミンの曲が流れてました。

真っ赤なファミリアで聞いた『中央フリーウェイ』

新宿からのスキーバスツアー。ウォークマンのイヤホンを片方ずつ分けて彼と聞いた『サーフ&スノー』

彼と別れて泣いてたら、友だちがくれたユーミンのコンサートチケット。「一番、いい男と行け!」と言われたけど、結局ジャンケンで勝った後輩の先生と行って。コンサートの間中、ずっと泣いてて。

結婚してから何度も行った、コンサート。逗子も、苗場も。

2013年、紫綬褒章しじゅほうしょう受賞。今年、文化功労賞受賞し、デビュー50周年を迎えたユーミンの原点を描いたお話しです。

すべてのことはメッセージ 小説ユーミン  山内マリコ

少女の頃から、ユーミンはユーミンで。どんな場所でも物怖じせず、堂々とふるまい、オーラ―があり天才で自分自身でそれを知っていて。

中学2年生で、立川基地で仕入れたレコードをかまやつひろしに手渡し、新宿ACBの楽屋に自由に出入りし、バンドメンバーと音楽談義を交わしてます。

川添浩史の伝説のレストランキャンティももちろんだけど、その時代の寵児たちが豪華すぎてクラクラしてしまう。

慶応義塾大学出身バンド、『ザ・フィンガーズ』のメンバー、成毛茂なるもしげるの祖父はブリヂストン創業者である石橋正二郎、ドラム担当の朝吹誠は、副総理、法務大臣等を歴任した石井光次郎の孫、ベースの斎藤茂一の祖父は、斎藤茂吉。

彼らは、石井音楽事務所の所属で、あの石井好子だ。わたしにとってはシャンソンというより、『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』で。石井好子の父親が、石井光次郎。

そこで出会ったシー・ユー・チャンがユーミンの名づけ親です。

有名は中国語でユーミン。きれいな中国語だとそうは聞こえないけど。発音記号みたいなもの。

Yumin でなくYuming

現在進行形のingで終わる名前は、自分をどこまでも遠くまで、前へ前へと進めてくれる気がする。

ユーミンは天才だけど、自分で前に進んでいる。

ユーミンが生まれたのは1954年で、夫は生まれたのが1948年でユーミンが6歳下になり、同じような時代を過ごしてきたはずなのに彼らの触れたものはまったく違います。神社でのお化け屋敷の蛇女、御茶ノ水の喫茶店は、共通でしたが。

いいことも悪いことも、悲しいことも楽しいことも、そのときの環境、すべてのことはメッセージとして受けとり、ingで前に進んでいかなくってはと思いました。


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