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# 21ベトナムで家具をオーダーメイドしたら既製品は買えなくなった


■このマガジンについて

ベトナムホーチミン市にネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。

全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。


■オーダーメイドで椅子を作る

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ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

この場所を訪れ一目惚れした私は、ここにネイルサロンを作りたいと開業準備をするためにホーチミン市を走り回っていた。


これから作っていく私のお店「KawaiiNail&Eyelash」
お店の完成予想CGパースを見た時、あまりにも素敵な空間で胸が高なった。

私は、完成予想CGパースと全く同じ家具をオーダーメイドすることを決め、早速準備を始めた。

CGパースとは
「コンピューター・グラフィック・パース」の略称のことです。
図面だけでは分かりにくい住宅の完成予想図をパソコンに取り入れることによって、分かりやすく視覚化したもののことを指します。

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ベトナムでは、海外既製品を買うより、オーダーメイドを頼んだほうが安い場合も多い。

私は似たような椅子のデザインの写真をwebで片っ端から集め、図面を作った。

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一番あーだこーだ悩んだのは、椅子の足の長さだった。

なぜなら私が作るのは、ネイルをする椅子だから。
お客様が座っても違和感の感じないくらいの高さは守りつつ、スタッフがネイルする時に負担のかかりにくい高さを決めたい。

足のネイルがしやすい高さを何度も確認して、足を置くオットマンの大きさ、高さ、バランスを見ながら寸法を決めていった。

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また、図面だけではわかりにくいディティールは、写真を添えて資料を作り、CGパースも添付した。

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資料やサイズ決めでインプットしたこと
・ネイル椅子は、普通の物より足が長いほうがスタッフがネイルをしやすい。

・アームがある椅子の方が座った時に安定感を感じるけれど、欧米人の体型には窮屈に感じる場合もある→アームが有り無しの2種類作ろう

・椅子の図面を見ても自分が解らないので、参考写真を貼って共有しよう。
言葉の通じにくい外国人と仕事をするとき、視覚情報で対応するといいよ。

・作るのはベトナム人なので、指示はベトナム語に翻訳したものも書いておいたほうがいい。(私は翻訳を頼んだ)



■椅子の生地選びから制作まで


図面が出来ても、椅子を制作できるところを見つけなければ前に進まない。

私は、サロンオープンを色々手伝ってくれているNgoc(ゴック)さんに相談してみた。

私:ゴックさん、私は椅子をオーダーメイドしたいんだけど、できるところを知りませんか?

ゴック:任せて優子さん。私は大学で建築やインテリアを勉強していたの。
オーダーメイドをハイクオリティで作れるお店をあなたに紹介します。


私:やっぱ、頼りになるわ!!!ゴックしか勝たん!


彼女が教えてくれたのは、ホーチミンにあるカーテン屋だった。

「生地はいろいろあるだろうけれど...椅子まで本当にオーダーメイド発注できるのだろうか?」

半信半疑でいたが、いままでゴックさんの提案でがっかりしたことがない。

私は、早速お店に向かった。

お店情報:Curtain Art
住所:76-82 Võ Thị Sáu, Đa Kao, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh, ベトナム

Curtain Artは欧米から輸入したカーテン、ソファー生地を主に取り扱っている。
在住外国人、ベトナム人富裕層に向けたお店だろうとすぐに分かる雰囲気だ。

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店内に入った瞬間、私は一脚の椅子を見つけた。

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【【【 コレコレ!私が作りたい椅子に近いデザインだ 】】】


聞くと、これはオーダーメイドサンプルとして作った椅子だった。

「さすがゴック。分かってる!これが作れるなら、何の問題もないよ」
私はこの店に入って5分も経たない間に、ここで注文すると意気込んだ。

担当のお姉さんに、お店のイメージや椅子の図面を見せる。
そしてイメージを伝えると、彼女はサンプル帳をいくつかピックアップしてくれた。

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KawaiiNail&Eyelashのブランドカラーはブルーだ。
だから、椅子もヒーリングカラーで作りたい気持ちがあった。

そして生地の素材も大事なポイント。
綿なのか、ベルベットなのかで全く雰囲気が変わる。

気に入った生地をピックアップしていった。
そこから一枚一枚の手触りや質感を確認し、決めていった。

実は私の母は洋裁を仕事にしている。
母が幼い頃から様々な洋服を作る様子を近くで見ていた。
今でも実家には沢山の生地があるし、私は母のお手製服で育ってきた。

「化繊や天然素材の種類、この生地はこんな特徴があるよ」と母から自然に教えてもらっていたのもあり、生地選びは思ったより早くできた。

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【【【 どの生地も素敵 】】】

ファブリック(綿・レーヨン・ナイロンなどの化繊)メリット・デメリット
(メリット)
親しみやすい雰囲気が出る。色や柄の種類が豊富で空間にコーディネイトしやすい。伸縮性に優れているので、立ったり座ったりを繰り返しても、生地の伸び縮みによる劣化が少ない。
(デメリット)
水や汚れに弱い。飲み物をこぼしたら、すぐにシミになってしまう。繊維なのでホコリやダニが付きやすく、手入れを怠ると不衛生になりがち。摩耗性に弱いので、座る部分が擦れて傷みやすいく、生地によっては、毛羽立ちや毛玉が出来ることもある。
レザー・ビニールレザー(合成皮革)メリット・デメリット
(メリット)
ビニールレザーは、本革にくらべリーズナブル。加工がしやすく色やデザインのラインナップも豊富。汚れに強いので、お手入れが簡単。
本革は高級感が出る。革の質感と見た目の良さで、存在感が出る。正しいお手入れをしていれば、長持ちしてくれる。
(デメリット)
ビニールレザーは通気性が悪く、長時間座っていると背中やお尻が蒸れてべた付いてしまう。経年劣化で表面がポロポロと剥がれてくるのでチープな印象。本皮は、価格が高く熱にや傷に弱い。直射日光に長時間当たると、変色や変形する。
ベロアや別珍などの起毛素材のメリット・デメリット
(メリット)
手触りが柔らかく、独特な光沢感と色の深みで高級感を感じる。
水にも比較的強く、毛足があるので染み込みにくい。摩擦に強く、不特定多数の利用する椅子に最適。
(デメリット)
摩擦で毛が潰れてテカリや擦り切れが出てくる。シミ抜きがとても難しい。
ホコリを吸収しやすい。南国では、より暑さが際立つ印象がある。


私のお店のイメージは「ベトナムリゾート」
空間イメージ、ブランドカラーを考慮し私はこれらを選んだ。

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南国をイメージしつつ、綿や麻が入ったファブリックで、清涼感の雰囲気が出る組み合わせが出来た。

椅子の総制作費:66,000,000vnd(約33万円)
・VIP椅子:1脚
・アーム付き椅子:2脚
・アーム無し椅子:2脚
・オットマン:3脚



■希望した椅子デザインの再現度に驚く。


注文してから1ヶ月半経った頃、お店から連絡が来た。

お店:椅子がほぼ完成したので一緒に見に行きますか?

私:待ってました!

お店:じゃあすぐに出発します。お店に今から来てください。

私:まじか。そんな急なのか...。

これはあるある話なのだが、ベトナム人が設定する予定は直近すぎることが多々ある。「今からいける?」なんてのはしょっちゅうだ。

でもベトナムにいる時は、「今から〜」の提案に対し、自分も相手も合わせられることが多い。

日本に居る時は、互いに「無理」となることがほとんどだけどね。
(ほんと不思議)


到着したのは、ホーチミン市からバイクで約1時間ほどの家具工場。

中に入ると、ソファー、テーブルと大型家具も制作していた。

そして、私のオーダーした椅子は、完成したところだった。

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【【【 資料やCGパースイメージ通りだ。完全再現している 】】】


ベトナムで椅子をオーダーしてみてインプットしたこと
・言葉は通じなくても、素材の写真や寸法がわかれば作ってくれる。
・生地はピンきり。予算を予め伝えるのが◎
・基本見学は出来ないみたい。こっちから定期的に連絡すると◎
・椅子は一脚30,000円(生地代別)くらいから作れる。
・家具のオーダーってめちゃくちゃ楽しいぞ!

今回は椅子をオーダーメイドした話だけど、お店の家具はほぼオーダーしたものばかり。
(ドア、テーブル、カウンター、チェスト...)

理由は、お店が短期間で移転することになった場合を考えてだった。
42グエン・フエアパートは2年契約したけれど、取り壊し計画が出ている。

短期間で移転する可能性があるならば、できるだけ内装にはお金を掛けず移動できる家具にお金をかけたい。そう思ってのことだった。

実際この後、2年少しで引っ越しすることとなる。
あの時の判断は間違ってなかったと噛み締めている。


■■おまけ■■

ちなみに、私が作った椅子達。
Curtain Artの担当者も、このデザインと生地の使い方を気に入ったらしく、後日全く同じものがお店にディスプレイされていた。

日本にいたら「ごおらぁあ!なに勝手にパクってるんだ!!」と言いたくなりそうな事例だが、ベトナムでは「そんなに私のデザインが気に入ってくれたのね。うふ♡」と思ってしまうのが不思議なところだ(笑)



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