惚れた男はアシタカ。結婚した男はトンボ(魔女宅)。
初恋の人は?
私は迷うことなく、ジブリ作品「もののけ姫」主人公のアシタカ。
私が3歳の時に映画が公開され、5歳の時にはアシタカに惚れ惚れしていた。
当時はDVDではなく、ビデオテープ。
エンディングを聞き終わったら、巻き戻しボタンを押して少し待ち、音が止まったら再生ボタンを押す。
これを何回も繰り返す。
飽きるまで繰り返さないと気がすまない子どもでした。
今でも定期的に見たくなるから、大げさでもなんでもなく通算50回は見た。
アシタカ拝むために…
5歳の私はアシタカの何に惚れたかというと、顔ですね。
イケメン、力が強い(呪いの影響もあるが)、赤シシのヤックルを従え乗りこなす運動神経とセンス、女性に優しい、上品、口数が少ない、堂々としている、笑顔がイケメン。あげるとキリがないな。
クールでミステリアスな雰囲気とは裏腹に、女性に優しいところに射抜かれたのかな。
時は流れ、私が22歳になった時に夫と出会いました。
近くでバスケットボールのサークルがあることを知り、参加させてもらえることに。
サークルでは、チームで私が一番若いと言われました。
代表の人が、「あそこにいる男の子は君と同い年だよ」と言いながら指を指した。
指を指された先でバスケをしている夫を、遠目で見る。
第一印象は、
(さえなそうな子だなあ…)
でした。
顔が、です。
おまけに私が身長166cmと少し高めなので、「お付き合いする男性は身長180cm以上を求む!」という縛りを当時は作っていた。
夫は170cmだった為、恋愛対象に入ることはなかった。
でもバスケって不思議。
スポーツって不思議。
上手いと格好良く見える魔法。幻覚。思い込み。
夫は元バスケの強豪校だったこともあり、バスケが上手だった。
それにニコニコとしていて愛想が良く、周りの年上の人達に可愛がられていた。
そして体!
男子校出身の人って、周りに女性がいても気にせず着替える。
夫曰く、「パンツを脱がなきゃOK」だと思っていたそうです。
これだから男子校出身は…
と言いつつも、私は横目でしっかり夫の体をチェック。
いや、普通に気になるでしょ。
いや、女性陣みんなやってるはず。一生に一度はやってるはず。
女性なら分かる方多いと思いますが、男性の肩とか背中っていいですよね。
夫に対して「さえないなあ」から、「むむむっ」と興味を示し始めたきっかけは肩と背中です。
ムキムキな肩や背中だったてわけじゃない。
逆に私は、明らかな筋肉ダルマさんは苦手です。
強そうな人って、少し近づき難いです。
今どきですね。
命の危険が少ない今の日本だからなのでしょうか。筋肉ダルマさんの需要は低下傾向な気がします。
いや、私の周りの友人達だけかな?
夫の肩と背中の筋肉量は、私にとって"イイ感じ"でした。
筋肉ダルマでもないが、細い棒でもない。
まあ、普通にギャップ萌えですね。
小柄だと思っていた人が、脱いだら意外と筋肉質で引き締まっていた…
ここ、キュンポイントですよね。ね、ね!
そして夫はとにかく、男にモテる。
もう、モテモテ。
私の弟も「クリスマス会、2つのグループ(男)に誘われてどうしよう…」と悩むほど男にモテモテだったから、少し親近感があったのかもしれない。
でも反対に、ムードメーカーな夫に対して、「私と真逆な人間だな」とも感じていました。
私はバスケットボールというチームプレイのゲームを楽しみにきたくせに、黙々とバスケをして、挨拶だけして帰る。
という、一見つまらなさそうにしているのに、しっかり毎週参加する人でした。
コミュ障って雰囲気満載でした。
雰囲気というか事実か。
職場でお局様方に気を遣っている時期だったので、趣味の場ぐらいは、明るく若者らしく振る舞わない自分でいたかったのだと思います。
でも、愛想のない私に対して、年上の方たちは嫌な顔をせず話しかけてくれた。
話しかけるといっても一言二言で、変な絡みをしてくるような人はいない。
その一言二言は、お世辞や方便といった「今日もいい天気でしたね」なんて無理した会話でもなく。
私にはそれが丁度良くて、心地いい空間だった。
夫も同じように丁度良く接してくれて、心地よい人だった。
いつも無愛想で口数も少なく、コミュニケーション能力の低い同い年の女に対して、「あいつ生きるの下手くそだなあ」と内心思っていたかもしれないが、私にそういう態度を見せてくることはなかった。
半年ほどバスケサークルに通った頃、代表に飲み会に誘われた。
この代表だけは少し絡みが強いオヤジで、断れずに行くことになった。
案の定、キャバ嬢扱いの接客飲み会。
代表が座る4人席には女性3人が座らされ、代表は自分の話しを永遠にしていた
私以外の2人の女性も辟易した表情…。
今思うと団塊ジュニア世代の、人の話し聞けない人間でしたね。
「来なきゃよかった…」と開始10分で後悔。
オヤジの話しを聞いているフリをしながら、この場から抜け出せる方法を考えていました。
ふと、夫が座っている席を見ました。
この時、私は夫に恋をしました。
夫は、人の話しを聞き場を盛り上げながらも、俊敏に空いた皿やグラスをテーブルの隅に片付けていたのです!
しかも店員さんが運びやすいように、お皿を綺麗に整えて!
グラスが空きそうな人には、飲み物のメニュー表を渡して、店員さんを呼んであげていました。
色々と気を配り動いているというのに、会話を盛り上げ自分も楽しそうにしていました。
私の身内の男は、女性が身の回りのことをしてくれるのが当たり前のため、石像か?ってぐらい動かない奴らばかり。
おまけにつまらない。
だから私にとっては衝撃的でした。
「世の中にこんなに気が利く男が存在したのか…」
男という生態への理解が一変したと言っても過言ではありません。
この恋に落ちた(笑)少し前、私はお付き合いしていた男性に振られて、腰まで合った髪をショートヘアにした。
リセット病ですね。(全て白紙に戻したい。やり直したい衝動)
ショートヘアにしてから、夫が私に話しかけてくる回数が明らかに増えた。
夫の女性のタイプはショートヘアだったのです。
ある意味、リセット病のおかげ。
飲み会に参加することになった団塊ジュニアオヤジのおかげ。
自然と夫とお付き合いすることになり、結婚しました。
結婚するならアシタカみたいな男の人!だった私が、イケメンでも高身長でも寡黙でもない、ジブリ作品「魔女の宅急便」のトンボのような人と結婚した。
トンボってご存知ですかね?
魔女の宅急便に出てくる、メインの男の子キャラです。
クールなアシタカとは真逆の男の子。
メガネをかけていて、赤白ボーダー服、中学生ぐらいなのかな?身長もそこそこです。
正直、アシタカと比較してしまうと月とスッポン。
ですがトンボは、身なりに無関心な子ではありません。
センスの良い、ワンポイントお洒落です。
港町の雰囲気にあった、赤と白のボーダー服で一見シンプルな服装。
しかし肩掛けカーディガンや、リボンのようにしたベルトでワンポイントの遊び心が垣間見える。
イケてるメンズじゃないなりに、シンプルに身を包む。でも一つだけ、さり気ないお洒落心を。
夫も似た所があります。
私は靴下なんて大して見えない物なのだからと、適当に選んでいました。
付き合ってからは、靴下総買い替えさせられました。
夫曰く、靴下こそワンポイントで明るい色を!好みの柄を!だそうです。
私が服を買う時は勢いです。
「これいいぞー!」で買っちゃいそうになります。
暗い色の服を買おうとする度に、「いいから試しにこっちも着てみて!顔が明るく見えるから!」と試着させられます。
身だしなみは、バランスや印象重視。
トンボ同様、顔がイケメンでなくとも、これで清潔感やきちんと感がでます。
そして、トンボは男にモテる。
男友達がいっぱい。
トンボは魔女であるキキに興味が湧き、道端で声をかけたのですが、キキに全く相手にされません。
女の子に相手にされていない様子を、通りかかった5人程の男友達に見られて、イジられます。
だがトンボはイジられても平然。
なんなら笑っています。
自分がイジられても笑っているし、逆に面白がれる。これがトンボです。
夫も自分がイジられる事に対して、ウェルカムな姿勢です。
「俺のことで是非とも笑ってくれ!」ぐらいな勢いです。たまに何を目指してるのだろう、この人。と思って見ています。
見栄がないのでしょうね。
トンボは魔女のキキをパーティーに誘います。
魔女のキキからナンパ男だと思われているトンボなので、キキからの印象は最悪です。
トンボはお誘いのためにキキが働く店に行きますが、案の定キキにそっけない態度をとられてしまいます。
でもそこでオドオドしたりするトンボではありません。
自分がなぜキキをパーティーに誘いたいのかストレートに気持ちを伝えています。
この誘い方が、違和感なく器用だなあ。といつも思います。
毒気や根暗さや下心がないのでしょうね。
これらがもしあったとしても、器用に上手く隠せるのでしょう。
ムードメーカーな人って、天性だと思っています。才能です。
真似できる要素がありません。
破天荒ってことではなく、トンボも空気を読む能力が高そうです。
空気を読んで、余計な言葉は言いません。
パーティー当日、トンボは雨の中、店の前でキキを待っていました。
ですが結局キキは、仕事のせいでパーティーに参加することができませんでした。
長らく雨が降る中、待たされたというのに、キキを責めるような言葉どころか態度も見せません。自分が何時間待ったとか、面倒くさい事も言いません。
余計な一言がないのです。
ただ、女心は分からないようです。
キキが嫉妬していることに、本気で気がついていません。
女心とは少しズレるかもしれませんが、夫も似たところがある。
私が何かに浸ったり感傷的になっていても気が付かず、平気で下ネタ発言をします。
下ネタと言っても、最高にしょうもなくて最高にくだらな過ぎて、つい笑ってしまいます。
怒る気も消えてしまう。
夫曰く、「男子校では、面白い下ネタが言えない奴は生きていけない」だそうです。
夫と出会って8年経ちましたが、夫への評価が未だにわかりません。
アホなのか、誠実なのか、器用なのか、ドアホなのかよくわかりません。
結果的にトンボのような夫と結婚した私ですが、万が一にアシタカのような男と結婚できたとしても、上手くいってなかったと思います。
アシタカは女性をしっかり女性扱いする男。
モテるのです。
女性達の黄色い声を聞いても、眉や口元が緩むことなんてない。
でも女性達の好意に気が付かないような鈍感な男ではない。
表情には出しませんが、アシタカは自分がモテる男だとしっかり認識しています。
自己肯定感の低い私が、モテ男を扱えるはずがありません。息苦しいだけ。
ミステリアスっていい響きですが、よく分からない人って不安。
私のような警戒心の強い人間からしたら、常に疑いをかけ続けなければならなくなります。
アシタカは序盤で、タタリ神に呪いをうけます。
村を襲ってきたタタリ神から、村人達を身を呈して守り、死の呪いを受けてしまいます。
次期村長候補にあがるほどに、皆に一目置かれている存在であったにも関わらず、村長から追い出される形で1人旅に出ることになります。
こういう正義感、いりません。
他人だったら尊敬します。
でも自分の夫は、全力で逃げるような人であってほしいですよね。
死なれては困ります。
アシタカは最初から最後まで格好いいのです。
カッコ悪い姿は一度もありません。
トンボは逆に、カッコ悪い姿ばかりです。
でも私には、それを見ている方が安心します。
夫とお付き合いを始めてから、カッコ悪いのっていいなと思うようになりました。
自分のカッコ悪いを認められるのって、格好いいです。
むしろでネタにして面白がれる。
これができると、窮屈じゃなくなります。
生きていく上で、息がしやすいです。
頑張って努力し、高め続けている人って格好いいと思いますが、それしか見せられないと疲れてしまいます。
私の自己肯定感は地の底まで続いているので、周りで明るくチョロチョロ居てくれてると、なんだか落ち着きます。
肩の力が抜けます。
自己肯定感で思い出しました。
先日、夫に
「君って、自分嫌いだな。とか思ったことないでしょ」
と言ったら、
「、、、、、、、、。え、ホントーに申し訳ないんだけどさ、自分のこと好きも嫌いも考えたことなかったわー」
もう私としては、大爆笑です。
自分に対して、好きも嫌いもないってことかー!。
自分は自分であって、それ以上でもそれ以下でもなく、好きも嫌いもないと!
自分のこと嫌いとか考えたことない人っているんだ。
最高に面白い!
やっぱり、聞いてみないと分からないものだな。
私はどうやったって、私の目に映る世界からしか、物事を見ることはできないのだ。
私の中では一生思いつかない言葉が、他の人の中にはある。
「君と結婚して良かったわ!」
最大の笑顔で夫にそう言いました。