見出し画像

「咳が出ている子」の保育について

こんにちは!現役保育園看護師のチロです。

今回のテーマは、「咳が出ている子」の保育についてです。鼻水と共に乳幼児期によくある症状ですが、「保育園」という場所における咳症状への対応について、どのように判断すべきか迷う場面が多々あります。

そこで、そもそも咳とはどういう症状なのか、登園の基準や保護者に通院を促す目安、保育園内で咳が出ているときの対応等について、現役保育園看護師の視点からまとめてみました。

結論としては「感染症の疑いがあったり、治療していなかったり、咳によって生活に支障が出ているような場合は、まずは通院を検討してもらう」ことが重要だと考えています。無理は禁物だということを保護者の方に理解していただくことも、保育園看護師として大切な仕事だと思っています。


「咳」とはどういう症状なのか

そもそも、「咳」はどうして出るのでしょうか。

簡潔に表現すると、咳とは「気道にある異物(菌、ウイルス、その他)を外に追い出す」反応です。これは、人間が生まれつき持っている生体防御反応のひとつです。

「気道」とは空気の通り道です。息を吸ったときに、気道にほこりやウイルスなどが入り込んでしまうと、最終的に人間は病気になってしまいます。そこで、気道は異物が入ったことを察知して反射的に「咳」をすることで異物を身体の外に出し、身体を守っているのです。

外から入ってくる異物だけではなく、気道にたまった痰(たん)を出すときにも咳が出ます。また、気道に炎症が起こっている時も、咳をすることで息を吐こうとする力が身体には備わっているのです。

「咳」が出る原因は様々です。つまり、単なる「咳」という症状だけではどの病気かを判断することはできません。医師による診断によって初めて、感染症によるものなのか、アレルギーによる反応なのか、ただの風邪として経過を見てよい類のものなのかが判別されます。

咳が出るときの登園や通院を促す目安

保育園に登園するうえでの大前提は、お子さんが普段通り元気であることです。何か症状がある場合は通院することが原則ではあるのですが、主症状が「咳」だけの場合、熱はないから登園させてもいいですか?と質問を受けることはよくあります。

保育園看護師としては、この情報だけでは登園可能かどうか判断することが難しいと思っています。そこで、お家でのお子さんの様子について、以下の項目を確認するように心がけています。

  • 症状:咳以外の症状が本当にないか(熱/鼻水の有無、便の性状等)

  • 食欲:食事は普段通り食べられているか

  • 睡眠:夜は起きずに寝られたか

  • 活気:機嫌は普段と変わりなく活気があるか(遊べているか)

  • 服薬/通院状況:市販薬等を服薬しているか/通院しているか  など

また、上記内容と共に、園内や地域で流行している感染症はないか、感染症ではなくても同じような症状がある園児が増えてきていないか、該当園児の既往歴に喘息等の疾患はあるかについても確認します。

園内外で流行している感染症もなく、喘息等の既往もなく、特に様子は普段と変わりなく元気がある場合は、軽く咳が出ていてもお預かりするケースが多いです。日中の様子を担任と共有し、経過を観察します。

お預かりしたとしても、園生活中に咳が多く出る、遊べない、眠れない、ごはんが食べられないなど咳による不調が顕著に観察される場合は、通院を促します。もちろん、熱が上がるなど他の症状が出現した場合も同様です。

保育園は集団生活の場であるため、感染症のリスクがある場合はまず通院をするよう保護者にお願いしています。

また、喘息のようにアレルギー反応として咳が出ているケースも多々あります。保育園看護師として、既往歴を随時更新してお子さんの情報を正しく把握しておくことも大切です。アレルギーであれば他児に移すことはないため、お子さんの状態によって登園することは可能です。

喘息の場合も登園する条件は同じで、要は日中元気に過ごせるかどうかがポイントです。特に喘息の場合、内服薬等で調整して日中せき込むことなく過ごせるのであれば、保育園に通うことは問題ないと思います。

しかし、自宅と比較して保育園の方が喘息症状を誘発する因子は明らかに多いです。集団生活ですし、絶対友達と一緒に走るし、ホコリもたちます。症状が悪化するリスクが多くあるということを保護者も保育者もよく理解しておく必要があります。

症状があるときは無理をさせない』というリスクヘッジはとても大切だと思います。しかし、保育園では他のお友達と同じように動きたいし、遊びたいと思うお子さんがほとんどです。つまり、保育園に登園して無理をしないということは限りなく不可能です。無理をさせないためには、ご自宅でゆっくり休むことが一番だと思います。

園生活中に咳が出る場合の対応について

登園したものの咳が出て普段通り過ごせない場合、園内で対応できることには限りがあります。一番お子さんにとってよいことは、保護者に連絡してお迎えに来ていただき、通院してもらうことです。

走るとせき込むような場合は、活動への配慮も必要です。外遊びは控えておいて、室内での遊びに切り替えることも立派な対応だと思います。どうしても外に出たいのであれば、活動時間を短縮できるとよいなと思います。

午睡中に咳が出て寝苦しい様子がある場合、布団やタオルを使って上半身を少し上げてあげると楽になることもあります。体位を整えることで呼吸しやすくしたり淡が出やすくなったりします。現場に看護師がいる場合は、上げる角度等を見てもらえるとより安心ですね。

むせないように配慮しながら水分をとることもよいと思います。口内が乾燥していると咳も出やすくなるため、喉を潤すことで多少改善することもあります。

コロナ禍では園児でもマスク着用を推奨したり、そもそも呼吸器症状がある場合は必ず通院してもらったりとかなり厳しく線引きされた対応をとっていました。幼児のマスク着用には賛否両論ありますが、個人的にはメリットよりもリスクの方があるように感じています。そもそもマスクを正しく着用すること自体、幼児にはまだ難しいです。園内でマスクをするほどに咳が出ているのであれば、ご自宅でしっかり治した方がよいなと思います。

まとめ

今回は「咳」に着目して、日頃保育園看護師として考えていることや観察しているポイントをまとめてみました

とはいっても、実際には元気に咳している子が多いという現実もあり、園内の感染症対策は本当に難しいな…と感じる日々です。

そんな日々の中でも、「いつもの咳とちょっと違う気がするな」「普段咳なんてほとんど出ないのに珍しいな」というちょっとした違和感を大切にしてもらえたら嬉しいです。

経験上、保育士さんの直感は当たっていることが多いです。保育士さんが直感したことを、看護師の視点でアセスメントすることで、通院や適切な治療へとつなげていくことができると思っています。これも、保育園看護師の専門性の一つですよね。

園内で咳をしている子がいたら、この記事を思い出してみて下さい!最後まで読んでくださりありがとうございました!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?