見出し画像

【衰退Japan】新幹線が保守車両の脱線で丸一日運休して驚いているときに気休めに読む話

7月22日早朝に驚きのニュースが流れた。東海道新幹線で保守車両の脱線事故が発生して、朝一番から東海道新幹線が運転を停止しているというのだ。
当初は昼頃に復旧すると思われていたこの新幹線の事故だが、現場での作業が予想以上に難航し、7月22日中の運転再開は絶望的な状況になっている(その後終日運休が発表された)。


最近事故が目立つ気がする

この新幹線の事故と直接関係はないのだが、最近なにか小さな事故が多いように思わないだろうか?工場での火災などの労災事故や電車やバスなどのトラブルだ。大きいところでは、今年正月に起きた羽田空港でのJAL機と海保機の衝突事故などが記憶に新しい。
そして、これらの事故やトラブルの遠因として考えられるのが、人口減少による人材の劣化だ。


人口減少の影響が出始めているかも

普段生活しているとあまり意識することはないが、日本の人口は確実に高齢化し、減少している。
一番その影響が典型的に見れるのが大学生だ。今、大学に進学している20歳の新成人の数は2024年で106万人だ。前年から6万人減少している。
一方で戦後に一番多かったのは、戦後すぐに生まれた団塊の世代が成人を迎えた昭和45年の246万人だ。最近だと団塊ジュニアが成人を迎えたのが平成6年207万人になる。
ピーク時と今の新成人数を比べると半分以下になっていることがわかる。

大学の定員は増加

ここで問題になるのが、大学の定員だ。直近のピークの平成6年と比較して新成人人口が半減しているにも関わらず、大学の定員は減少するどころか増加している。
ここで偏差値を考えてみよう。当たり前だが、偏差値は平均が50だ。そして偏差値60以上の比率は15.87%いる。以下は偏差値55以上の比率だ。一般的に誰もが知っている一流大学というと偏差値65以上だろう。比率としては100人に6人ぐらいの比率だ。具体的な学校名としては、早慶上智以上といったイメージだ。

偏差値55以上:30.85%(3.24人に一人)
偏差値60以上:15.87%(6.30人に一人)
偏差値65以上:6,68%(14.70人に一人)
偏差値70以上:2.28%(43.85人に一人)

ここまでは一般的に知られている話だが、問題は人口減少の影響だ。
平成6年に成人を迎えた団塊ジュニアの人口を上記の比率に当てはめると以下のようになる。
        (団塊ジュニア) (2024年成人)
偏差値55以上:63万8595、  32万7010
偏差値60以上:32万8509、  16万8222
偏差値65以上:13万8276、  7万  808
偏差値70以上:4万7196、   2万4168

当たり前だが各偏差値の人数が半減している。
一方で大学の入学定員は増加している。早稲田大学の募集定員は5,000人ほどで変わっていない。もう気付いたと思うが、以前と比べると各大学の難易度が大幅に低下していることになる。
ざっくりとした話だが、以前なら難関大学というと偏差値65以上が必要だった。団塊ジュニアで計算すると13万人強だ。そして各有名大学の定員は、この人口をもとに設定されているはずだ。
ところが令和6年で見ると、偏差値65以上の人数は7万人しかいない。偏差値60以上でやっと以前の偏差値65以上になる。
このことからわかることは、30年前なら偏差値60程度の学力の学生が、今は偏差値65以上の大学に入学していることになる。
仮に20年前と今とで学力の平均値やばらつきが同じなら、各大学で大幅なレベルの低下が起きていることになる。
実際に学習塾や予備校関係の知り合いに聞くと、以前なら日大に入学するレベルの学生が、早稲田に入学している例も多いそうだ。また早稲田クラスの大学でも、入学者の半数がOAや推薦での合格者だそうだ。そうなると予備校などの偏差値ランキングで示されるレベルより実態は相当下がってるかもしれない。よく雑誌で特集されている偏差値は大幅に水増しされている可能性が高くなる。
実際に人口減少が本格化し出した2010年前後から、企業の現場では、新卒のレベルが出身大学から想像されるレベルよりかなり低いとの話をよく聞くようになった。
私の実体験としても、旧帝大の文系出身者の後輩が、こちらが想定していたよりかなり能力が低く感じたことがある。特に意外だったのが、数学が苦手だったことだ。一般的に旧帝大出身者は、共通テストを全科目で潜り抜けてきているので、数学もある程度できる印象があった。
そして後でわかったことだが、その後輩は旧帝大ながらOA入試だった。理数系の受験勉強を全くしていなかったらしい。旧帝大でOAや推薦入試が広範囲に行われているのを初めて知って驚いた記憶がある。

より深刻な現場での人材劣化

以上のように今の日本では、特に大学生や新卒のレベルが、以前に比べてかなり低下している可能性があることがわかるだろう。
しかし更に深刻なのが、現場での人材の劣化だ。以前ならかなり高い学力があっても経済的理由などで大学に進学できなかった人材が、各企業の現場に沢山配属されていたことだろう。
そして人口減少の影響から、建築現場や、まさに今回の事故の起きた鉄道の点検保守の現場などでは、以前に比べて必要なベルの人材が採用できなくなっている可能性が容易に想像できる。
今までは偏差値で言えば60や65以上の人材が、工場や建設現場、鉄道や自動車などの現場で管理者や保守点検要因としてザラに働いていた。
実際に私自身の実体験でも、高卒の人たちの中にも大学院レベルの知識があり、高度な技術を使いこなす先輩たちを数多く見てきていた。
今思えば、優秀な人材が余っていたのだ。

ジャパン・クオリティの喪失

ここ数十年、日本は世界一の品質を誇る国として世界的に有名だった。ソニーやトヨタに代表される工業製品だけではない。時間通りに駅に到着する電車や新幹線、街角の普通の店での高いサービスなど、日本のハイスタンダードは世界中から称賛されてきた。
しかし冷静に考えると、このジャパン・クオリティを支えていたのは、団塊の世代や団塊ジュニア世代の豊富な(ある意味過剰な)レベルの高い現場労働者だったのかもしれない。
そして、人口減少の結果、残念ながらその現場の人材は、徐々に失われつつある

今後は事故多発か

元々戦後の日本のインフラは、一番数の多い団塊の世代を基準に建設されてきただろう。ところが人口減少の今、この団塊の世代の人口を基準としたインフラは過剰なだけでなく、維持が困難になってきているのかもしれない。
そして大卒の人材以上に一般社会に影響が大きいのが、現場労働者のレベル低下だろう。
今後は、人材不足と質の劣化から、現状の鉄道、道路、航空など各種インフラを維持することが困難になることが、容易に予想される。
要は、うっかり事故のようなものが多発するようになるのだ。そして最悪の場合には、最後に人命に関連するような大きな事故がドカンと発生することになるかもしれない。

インフラの縮小か移民が必要

今後も現在のある意味過剰なインフラを維持するためには、移民など外部から人材を受け入れる必要があるだろう。ただ、それでも必要な人材の確保に現場は苦労するかもしれない。
そうなると必要になってくるのは、減少した人口に見合った適正規模のインフラに縮小することだろう。

自己防衛方法

かといって事故を避ける効果的な方法があるだろうか。残念ながら、一つの手段で決定的に事故やトラブルを避ける方法はない。
そこで考えられるのが、普段から小さな事故のニュースに敏感になることかもしれない。
例えば最近日本航空JALの小さな事故やトラブルが目立っていた。実はJALは、ここ数年、那覇空港や福岡空港での滑走路への誤侵入などのうっかりミスが多発していた。またエンジンの爆発事故なども何件も起きている。

そしてついに今年1月2日に羽田空港でJAL機と海上保安庁機の衝突事故が起きた。幸いなことに、この衝突事故では、JAL機が最新のA350だったこともあり、乗客には一人も犠牲者が出なかった(海保機では搭乗員に複数の犠牲者が出た)。

この小さな事故やトラブルに敏感になる方法は、航空業界などでは以前から”ヒヤリハット”として重要視され来た。大きな事故の背後には、必ず小さな事故やトラブルが多数あるという考え方だ。また統計学で言うところの”ベイズ統計”の手法にも近い。小さなニュースに敏感になることで、将来の事故の発生確率をその都度修正してくのだ。

そして一番大切なことは、少しでも違和感を感じたら、素早く逃げることだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?