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八潮男之決断38(小説)(エッセイ・とんぼ)

エッセイ < 雨音はホルン > とんぼ
 
写真はラナンキュラスの蕾です。
今日は強い陽ではありませんが、ゆらゆらとする陽を浴びているので
もうあと何日かで開きそうな気配もします。
ラナンキュラスは一旦開くと薄く繊細ながらも色濃く華麗な花びらが一気に広がるのでとても楽しみです。

雨の日には
あちこちに響き渡る雨の音を聞くため普段より長く庭へ出ます。
体調が悪くてもその音を聞くと頭のなかがスッとします。
寒々しく感じながらも楽しみにして窓の外へ出て、先ずは真ん中から
全体の音を聞くのです。
しばらく、暫く、耳を澄ましていると、色々な種類の雨音が際立って聞こえてくるのでその中からより際立って聞こえてくる音を選び、その方へ進んで行き地面に屈んでさらにじっとしていると、深く澄んだ水の音が聞こえてきます。
シンと澄み切っていて水中で波紋が広がるような音です。
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音の方をじっと見つめていると、その先になにかそういった楽器があってそれを演奏している水の精、木の精、葉の精、土の精が潜んではないかなと、もっと低く屈んでまじまじと枝の隙間から地面を覗き込んで探してしまうほど、美しい音色で面白い音階です。
知っている楽器が少ないですが
管楽器のホルン
「モーツアルトホルン協奏曲」これに近いような気もするのです。
天才モーツアルトはもしかすると雨の音にも耳を傾けて作曲活動していた日があるのかもしれない・・・など思いを巡らせることも出来て。

今聞こえる音は、雨が降って、葉に当たった時の音、土に当たった時の音でじっと観察してみるとちゃんとそのタイミングで雨の音がしています。
なんで、あんな風に「ちゃぽんっんん...」いや、そんな音ではなくて
もっと沁みていくような深く深く水の底が無い遥か彼方まで澄んだような音になるんでしょう。
なにか深い場所にある水の空洞のような場所へ吸い込まれているように感じた事もありました。
たとえば穴を掘ってみたりして色々と試してみたいのですが
まだまだ雨の音を聞いて観察を深める必要がありそうです。

今日は晴れているので雨の音を聞く事はできませんが
また雨の日にじっくりと観察し考察してみます。

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八潮男之神の決断38
原作 秋津 廣行
「 倭人王 」より

 昆迩(こんじ)は、またもや、静かにうなずいた。

 「一年かかりました。やっとのことで、八潮男之神(やしおおのかみ)の承諾を得たのです。
すると豊浦宮(とようらのみや)は、決まった以上は、ご自身で迎えに参ると申され、沖之神島(おきのかみしま)にお籠りになり、禊(みそぎ)をなされて、お待ちになっているので御座います」

 「今日まで、無旦王子(むたんおうじ)を守ってこられたのは、無彊王(むきょうおう)の弟、無路(むじ)殿であります。
無路殿は、兄の無恬(むてん)殿と違って、心穏やかな人柄であります。
わたつみの宮に匿(かくまわれた)王子と無路殿は、毎日、朝日の昇る東の海に頭を垂れては、今日か、明日かと八潮男之神(やしおおのかみ)の返事待っておられたのです。」

 無路(むじ)殿は、東海に棲むと言われる大龍(だいりゅう)のことを祖神として敬い、越王(えつおう)こそが、その大龍の守護神であることを信じて疑わなかった。

 八潮男之神(やしおおのかみ)もまた祖神、面足神(おもだるのかみ)の言い伝えを今に守り、その言い伝え通り大龍の守護神を自任しているのであった。

 「無旦王子(むたんおうじ)と八潮男之神(やしおおのかみ)のお二人は、同じ海神(かいしん)の加護を受ける者同士で、心が通じ合われたのでありましょう。」

                      <波響の隠し事>へつづく


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