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超短篇小説16 "殺人推奨制度"



「もう女なんか信用できない」


私は今、1人しかいない部屋で"そう"呟いた。


こうなったのは、私と同い年の35歳の彼女が50代の男と浮気をしていたからである。


彼女とはマッチングアプリで知り合い、半年前から付き合い始めた、そして、つい1週間前に浮気をしていることを知り、彼女に問い詰めたところ、
「だからなんなの!あんたみたいなクソガキよりあの人の方がよっぽどマシよ!」と逆上され、カッとなり手元にある金槌で頭を振り抜いてしまった。


すぐに死んでしまった彼女を見て、やってしまったという気持ちと私はもう女のことを信用できなくなるだろうという気持ちが交錯した。


そして、その3日後には、警察に彼女を殺したことが見つかってしまった。


そして、私は今、自分の家で1人立っている。


現在、日本では犯罪防止のため、事故や殺人による死亡案件に関しては、理由を問わず、加害者には刑罰ではなく全て罰金にする制度が施行された。


そのため、人を殺してしまっても捕まったり、刑罰が執行されることはない。


ただ、課せられた罰金を一括で支払えない場合は、残り全額の支払いが完了する迄、収容施設に入れられ強制的な労働を強いられる。


罰金金額については、人間の価値について80年を基準として償却を行い設定するものと規定されたらしい。
※生誕時の人間の罰金額は3億円と規定されており、生まれてから月毎に312,500円減額されていくものとする。


この制度が施行されてから、確かに犯罪件数は減っているものの、罰金を払ってしまえさえすれば殺人が認められるような一面もあり、
金銭に富むものからすれば、殺人推奨制度と揶揄されることもある。


しかし、私は金持ちでもなく、殺人を楽しむことができる側の人間ではない。

私はさっき明細を持ってコンビニに罰金の支払いに行ってきた。


"「もう女なんか信用できない」"


私は今、1人しかいない部屋で"支払い後の罰金の明細を見ながらそう"呟いた。


明日は月曜日だ。
憂鬱な気分で出社するだろう。



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