見出し画像

司法書士の開業費用

相続と認知症から大切な家族と財産を守り、円満な資産の承継を支える司法書士の野田啓紀です。

お金の話をします

これから司法書士事務所を開業されようと考えておられる方は、避けては通れない話題で、なおかつ気になるところかと思います。

司法書士事務所は、飲食店や製造業とは異なり、初期費用をぐっと抑えて始められと言われています。そうはいっても、実際にどのくらいかかるのか、何が必要で、いらないものなのか、経験者からリアルなお話をお伝えします。

最低限、必要なもの

極端なことを申し上げれば、もっとも削ぎ落として、インターネットができる環境とパソコン、スマートフォンがあれば、どこでも仕事はできます。法令や会則のしばりはありますが、ひとりで仕事をするなら、事務所さえいらないのではないかと考えています。

たとえば、印刷やFAXをしたければ、コンビニでも済ませられます。開業場所によっては、車もいりません。

また、開業すると、専門書籍が欲しくなります。

新日本法規出版などから加除式書籍を営業される機会が増えますが、これもいりません。ランニングコストばかりがかかってしまうので、必要に応じて単行本をそろえていけば十分です。最初から専門書をそろえるには費用がかかってしまうので、はじめは、リーガルライブラリーのような専門書籍のサブスクリプションが便利でしょう。

そのため、開業費用としては、自宅開業であれば50~150万円と言われています。事務所を借りるならば、保証金で家賃の10~12か月分、引越代や内装工事でこれに100~300万円くらいは追加で必要となります。

複合機はいらない

つい、事務所をかまえると、大きな複合機を設置したがるものです。司法書士事務所に勤務していた方ならなおさらのこと、そこにあるのが当たり前であるからです。

わざわざ高いものをリースで契約する必要はありません。ビジネス用のインクジェットプリンタで十分です。5万円くらいで買えます。私は、ブラザーのインクジェットプリンターを印刷、コピー、スキャナとして使っていました。印刷速度も十分でした。

スキャナは性能のいいものを導入しましょう。ScanSnapが人気ですが、使ってみればわかります。

いまだに、書類のコピーを保管して、書庫に入れて、外部のレンタル倉庫を利用して、というような古いスタイルの事務所もあるようですが、電子データで保管しておけば十分です。

スタッフを採用する頃になって、はじめて複合機の導入を検討すれば十分です。

パソコンは高品質の1台を

自分の右腕となって活躍してくれる道具ですから、もっともお金をかけていいところです。仕事の効率に直結します。

メーカーは好みがあるところでしょうが、少なくとも、CPUは現時点での最新版であること、メモリは最低でも16GB、ハードディスクはSSDを装着しましょう。

テレビ会議をする機会もありますから、モニターは複数置くことをおすすめします。

ひとりで事務所を経営されるのでしたら、SIMカードの挿せるノートパソコンや手持ちできるスキャナとプリンタがあると、なお便利です。これさえ揃えておけば、わざわざ事務所に戻ってこなくても、出先からどこでも登記申請ができます。

もっとも、バックアップができるように、データを保管しておくところを準備するのをお忘れなく。

業務ソフトっているの?

ベンダーの業務ソフトは必要ないと主張される方もそれなりにいます。

私は、導入したほうがいいと考えています。なぜならば、業務効率を優先しているためです。

司法書士事務所の顧客は、継続的に取引をするところはあれど、同じお客様が何度も定期的に利用されるということはめったにありません。そのような意味で、どこまで顧客管理をする必要があるのかという考え方はありますが、長い目で見れば、事務所の資産となります。

また、書類作成ひとつをとっても、手作業をいかに省くかという観点で、ヒューマンエラーをなくしていかなければなりません。いちいち点検していては、時間がいくらあっても足りず、逆に利益率が下がります。

とはいえ、業務ソフトにはそれなりの費用がかかりますが、最初は50万円くらいから導入できます。たとえば、IT導入補助金を利用することも考えられます。

運転資金

設備投資以外に、運転資金については、人それぞれ環境が異なりますが、必要な生活費の6か月分程度はあれば、安心でしょう。

司法書士の業務は、回転が早く、短期間に終了するものがほとんどです。雇用していなければ、登記費用を前払いしてもらうことを心がけるだけで、それほど資金繰りを気にせずともよいでしょう。

ただし、登録免許税の立替払いをはじめると、きつくなりますので、おやめいただくことを推奨します。これは、こちらから言えば、先に払ってもらえます。受託したときに、先払いでと請求書を出すだけなので、なにも遠慮する必要はありません。マインドブロックを解除しましょう。

借り入れは?

とはいえ、手許に現金が多くある方が、安心感があります。気持ちに余裕ができます。資金繰りが厳しくなると、無理な営業をして、かかわってはいけない仕事を受託してしまったり、筋の悪い案件を掴んでしまうことがあります。非司法書士との提携、リベート前提の紹介のような甘いことばに勧誘されることもあるでしょう。

冷静な判断を担保するためにも、資金繰りには気をつけなければなりません。融資が利用できるのであれば、借りることをおすすめします。

司法書士も単なるビジネスです。なにも特別扱いされていません。これから商売をはじめるのです。

ビジネスをするのに、自腹を切るのはもったいないことです。借りたお金で利益を出せるのならば、自分の財布を痛めることもなく、理想的な形です。

開業当初から気軽に融資をしてくれる金融機関はなかなかないものと思います。そこは、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用しましょう。無担保無保証で、最大3,000万円まで借りることができます。

これは、運転資金でも設備投資でも、使途は自由です。

まずは、この融資を利用して業績を伸ばし、毎月遅れることなく返済を続けることで、実績をつくることができます。数年後に、これを材料として、もっと条件の良いところへ借り換えるなり、地元の金融機関で取引を始めて、関係を深めていくこともいいでしょう。

日本政策金融公庫で創業融資を受けるためには、職務経歴書や事業計画書の提出を求められたり、資金の使途などを聞かれたりはしますが、形式的な審査がされるまでで、厳しくはありません。

私の場合は、書類を提出して面談の後、1週間で希望額の満額承認されました。申込みから融資実行まで、3週間ほどで済みました。

借り入れをすることに慎重になる方もあるかと思います。私もそうでした。しかし、商売でやるのですから、借りられるときに借りておくべきであるとは、先輩方は皆さま同様のアドバイスをされます。

お金をケチって、営業活動を自粛していては、売上が伸びないどころか、本末転倒です。早めに、多めに、です。

思い切って開業しましょう

司法書士は、仕入れがなく、コストを抑えながら経営することができますから、リスクは相当小さいと考えます。もし、最悪うまくいかなくても、また就職すればいいだけですし、司法書士の採用は引く手あまたなので、怖がることはありません。

0を1にする時間は、個人差はあれど、それほど大きな違いではありません。それであれば、一刻も早く開業したほうが、手に入る利益は多くなることでしょう。時間は誰にも平等です。早く行動するものが有利なのは言うまでもありません。


ぜひ、私の活動にご支援ください。より多くの方に優良なコンテンツをお届けするため、全力を尽くしてまいります。