はじめに
前回、前々回の記事では、中世ラテン語で書かれた証書の挨拶文について解説しました。
今回はさらに一歩進んで、中世ラテン語で書かれた証書の読解をしていこうと思います。本記事では「証書に書かれた土地や権利の譲渡内容について読み解く」ことをテーマに解説を進めていきます。
中世の証書は時代を経るごとに様々な発展を遂げていき内容も複雑になっていきます。そのため、この記事ですべてのパターンを網羅することはできませんが、まずは12世紀初頭の比較的シンプルな形のものを例に挙げて解説をできればと考えています。
今回対象とする文書
今回対象とする文書は『アングロ=ノルマン王の事績録』第二巻にある、イングランド王ヘンリ一世が発給した以下の二通です。
どちらの文書も、一文目が挨拶文となっており、二文目に土地や権利の譲渡内容が書かれています。その後証人欄、発給地、発給日 (前者の文書のみ) と続きます。今回解説の対象となるのはその二文目です。
本文解説
では早速、どのような土地や権利譲渡の内容が書かれているのかを見ていきましょう。