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被災地から考える新型コロナウイルス対策―その②【復旧編】

Paper.メモ.6 3

ボランティアセンターは開設できるのか?

今の複合災害が直面する大きな問題が、災害ボランティアセンターをどうするのか、ということ。
コロナ問題の初回noteにも言及したとおり、災害ボランティアセンターは、受付から活動開始まで、3密になる可能性があります。
対策としては
①物理的に3密を避けれるようなセンターにする
②ボランティア活動参加者を限定する
が考えられます。

物理的に3密を避ける

西日本豪雨で一日3,000人を受け入れた倉敷市災害ボランティアセンターでの取り組み例が参考になります。

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受付時間の短縮のために、Peatixというシステムが導入されました。スマホで専用サイトから登録、当日受付でQRコードの読み込みをするだけで完了というもの。
事前の申込みが必要な分、参加者には手間がかかりますが、逆に参加者数をある程度把握することができます。
こういった仕組みを使えば、センターのキャパシティに応じて過密にならない人数を割り出し、活動人数の制限をかけることもできます。

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また、事前登録の仕組みを使い、感染リスクの低い(と仮定した)参加者だけに限定することもできそうです。
例えば感染の少ない市町村から参加する人、
活動日までに最低数日は体温が記録されていて平均体温が分かる上で当日の検温に協力してもらえる人、
その他罹患しているリスクが少ない人
など。

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もちろん、活動中の気配りも必要です。換気をして距離を取るなど、活動中のお家でもやれることはあります。もしくは、風通しの良い場所のニーズ、など対応できるニーズを限定するという方法もあります。

ボランティアが個人宅に派遣される上で気がかりなのが、「○○から来た人」と、ボランティアを受け入れる被災者の方が気にしてしまう状況を作るのでは、ということ。場合によっては、ペアを組むボランティア同士でそんな気持ちが生まれるかもしれません。「○○から来た人とは一日一緒に活動したくない」など。
そんな心の被災を重ねてしまうのは、避けたいなと思います。

色々な面から見ても、災害ボランティアセンターの開設や支援者の受け入れについて、一つ判断基準がほしいなと思います。
こういった基準を、災害ボランティアセンターの主催となる市町村社協が決めるのはとても難しいかもしれません。
各地の社会福祉協議会を支える全国社会福祉協議会などから、全国の状況を踏まえがガイドラインの提示があればいいなと思います。

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色んな支援者

災害ボランティアセンターに来るだけがボランティア活動ではありません。我々のようなNPOやNGOなども活動しています。

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そしてボランティアセンターではなく独自に活動する人も大勢います。ボランティアセンターが閉鎖や募集の限定をしてるだけではこのようなセンターとは別の動きをしている人の制限はできません。
こうした熱い思いを持っていらっしゃる方や、親戚や知人のボランティアなどセンター外での活動になるような人に向けたガイドラインが必要かもしれません。しかしそうなると誰が定めるのが適当でしょうか?

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これに関しては全国社会福祉協議会やJVOAD、各都道府県にあるNPOセンターなど中間支援をしている組織と政府も交えた複数機関で、災害のない今のうちに当面の緊急支援活動についてのガイドラインが出されるべきではないでしょうか。
被災地に来るのは、支援者だけではありません。復旧作業員、企業、大学などの調査機関、メディア、行政応援職員、様々。本当に多くの人が出入りします。その点では、被災地の出入りに関して、さらに多面的な想定が必要でしょう。

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感染爆発している場合は?

今年の被災地での支援は、ウイルスを広げないということが大前提になります。人助けに行って知らず知らずの内に移してしまい感染者や死者が出るなんてことを避けなければいけません。

しかし、今まで書いてきたのは、「被災した地域でそこまで大きな感染が起こっていない」前提です。外部から持ち込まないには?が課題。
でも、被災地が街全体に感染が広がっている場合には?今後日本でもニューヨークのような地域が生まれないとは限りません。
活動する支援者の感染リスクが相当高い地域だとどうするのか。
都市封鎖が必要な状況で災害が起きたらどうするのか、誰が被災地に向かうのか?・・・こうなるともう個人や民間では動けないでしょう。行政や政府が対応するしかないかもしれません。


ボランティア保険

災害ボランティアセンターで活動するには、ボランティア保険に加入することが条件とされているところが多いです。ボランティア活動中の怪我や物損事故など補償する保険ですが、この新型コロナウイルスについては保証の対象外になるのではという見方が強いのです。
もし無症状のボランティアが被災者に移してしまい、その後死亡してしまったら??ボランティアへ行って別のボランティアから感染し、重篤化したら?
ボランティアを守るのもボランティアセンターの役割の一つです。
そんなケースを想定すると、ますます個人のボランティアの方々を受け入れるのが難しくなるはずです。

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ボランティアセンターが稼働しないと復旧を担うのは

現地の復旧活動に対して、公の機関で動くとなれば、一番想像しやすいのが自衛隊です。緊急期の人命救助、避難所での炊き出しや仮設のお風呂提供、町中の側溝の土砂撤去や、過去には緊急性と必要性に応じて個人宅のニーズに対しても対応したことがあります。

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もちろんコロナなど医療現場にも出動しているので人手が問題なら、東日本大震災の時は、予備自衛官も現場に出動したという事例があります。事前にどこまで制度を活用できるのか、過去の事例や条例、協定などから整理して備えるのも重要です。

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災害時応援協定の活用

公ではありませんが、それぞれの分野のプロを現場に呼ぶことができれば、ボランティアの人海戦術よりも効率がいいと考えることもできます。
災害時に民間企業との連携を宣言した、災害時応援協定というものがあります。市町村と民間企業や中小企業の事業組合などが結ぶものです。平時からの取り組みとして締結している行政も多くあるはずですが、今の新型コロナウイルスの影響を受けて状況が変わっている可能性があるかもしれません。逆に締結時の状況から、民間組合などの組織力が変わっていてキャパシティが大きくなっている可能性もあります。
そして、これらの協定締結先に緊急期からお仕事として、建築組合や土木関係の連合体に家屋からの土砂撤去をお願いするとか、ペストコントロール協会などに避難所の消毒や家屋のカビ防止作業などをお願いするなど、色々活用できる余白があるのではないでしょうか。(*協定によって費用負担の主体が違います)

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大事なのは、実際に新型コロナウイルスが蔓延する中での非常事態を想像し、細かな点まで想定していくことです。その上での解決策を協議し、その手段として協定などに落とし込むこと。これは、行政↔民間企業だけでなく、行政↔行政、行政↔社協、行政↔NPOなど市民活動、にも言えることです。

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お金の話

もしこの現場活動を自衛隊など公的な機関が担い、災害ボランティアセンターの負担が小さくなったら、他にも色々な可能性があります。第一回のnoteにも書いた、義援金や支援金が集まらないという話。現地で支援活動をするボランティアやボランティア団体などは、民間の助成制度や一般からの寄付が資金源です。災害ボランティアセンターを開設する社会福祉協議会も、ボランティアセンター立ち上げの資金は基本的に民間のものであることが多いです。(後から行政が補填したケースもありますが)もし、公の機関で復旧活動が進められたら?これまで使われてきた民間で使われている資金を、例えば義援金などに回すことが可能かもしれません。

そもそも災害大国であり、毎年50年に一度と言われる異常気象が毎年のように発生している状況で、民間からの資金や人員に頼らざるを得ないという状況はいかがなものでしょうか。そもそものシステムを見直してもらいたいなぁとも思います。

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被災者への支援にしても同じです。災害救助法も、被災者再建支援法も、時代とともに何度か改定されてきました。公的な支援金だけで自宅再建ができるようにとは言いませんが、
最近の消費税増税を考慮して微増された後も、リフォームする場合には応急修理制度では最大59万円弱しか給付されません。被災者生活再建支援法では全壊かつリフォームで最大150万円です。一方、リフォームの見積もりが4ケタ、なんて話もよく聞きます(もちろん、被害規模、家のサイズ、業者によって大きな差が出ますが…)
その金額を前に、家の再建を諦める人もいらっしゃいます。

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自然災害も、いつ・誰が陥るかわからない大きなリスクです。その大きな穴に落ちたとしても、その後の自分らしい道を選べるだけの選択肢をちゃんと整備しておけないものか、と常々思うのです。

公助/共助/互助/自助、と言いますが、もう少し、公助の部分を手厚くしていてもいいのでは、といつも思っています。
今想定している、複合災害という更に特殊な状態であれば特に。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!