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「能登半島にボランティアが足りない」報道に現地で思うこと

最初に立場と考えを明示しておくと
能登半島にたくさんの支援が必要、たくさんのボランティアさんも必要、と考えています。
しかし今回の甚大な被害と報道に、モヤッともするのでここにまとめます。


被災地への支援がまだまだ必要

能登半島の状況を簡単に箇条書きすると

・復旧はまだ始まったばかりで、倒壊した家屋は基本的にそのまま
・発災直後の道路状況からは少しずつ改善、かなり道は通りやすくなってきた
・1月から風景がそのままな場所は多い
・水道復旧率が上がっている。しかし、宅内漏水は自力での修復が必要。自身で業者さんを手配したくても、電話をとってもらえない・1ヵ月単位で待たねばならないとの話もある。浄化槽の修復も同じで、排水ができないままの家庭もある
・被害が大きいがゆえに、住民の方も2次避難で遠方に出ている。少しずつ地域に戻ってきて、1次避難所の人数が増えている場所もある
・まだ住民さんが避難先から帰ってこないので、お手伝いできない家がある
・現地で活動するNPOとして、毎日ブロック塀解体や貴重品出しの手伝いをしている。しかし、まだまだニーズがあり今後も活動が必要
・たくさんのボランティアさんを受け入れて活動したい。けれど、安全管理が必要な現場が多くある。このため、知識や経験がある人がいないと進められない


能登半島に必要な支援=ボランティアなのか?

倒壊した家屋の撤去は、基本的に公費解体など行政の制度で対応されます。
そもそもボランティアでは家屋のは解体できず、解体業者の対応範囲です。
前述した水道業者さんによる復旧の順番待ちも、業者さん不足が原因です。
水道復旧も、解体も、再建のための地域の工務店も、連絡つかないよ、と話すおじちゃんもいました。

福祉施設なども、大きな被害を受けたために職員の離職が多く人手不足です。こうした場所への専門職員の派遣も必要です。

「復旧を後押しするために、もっと災害ボランティアセンターを」
と言っても、「ボランティア」では解決できない範囲が大きいのです。


景色を変えるのに必要なのは、制度と専門家

今、議論される「被災地に人手が足りない」の人手とは、業者さんでは?と思う場面があります。

公費解体を対応できる業者さん、
個人宅の敷地内の水道復旧や浄化槽復旧の対応ができる業者さん、
屋根を修理できる業者さん、
医療・福祉・学校などの最前線で働く人を支えるための応援スタッフ、

各地に必要な人材を派遣するために、制度を運用し仕組みを整える必要があります。そんなノウハウを持った行政職員も足りていません。
そもそも、現地の困り事を吸い上げて、解決するための議論に進める体制が脆弱なのだと感じています。


「ボランティア」と地震の相性はよくない

たくさんのボランティアが必要なのは、間違いありません。
お一人や住人だけで片付けされている所も少なからずあり、お手伝いが必要な場所はたくさんあります。
でも、災害ボランティアセンターできる活動が限られているのも事実です。

実は、災害ボランティアセンターと地震対応は、相性が良くないのです。

災害ボランティアセンター大きな役割の一つ。たくさんの方をボランティアとして受け入れて、安全に活動してもらって帰ってもらう。
だから、専門的な工具をつかったり、危険を伴う活動はできない場合がほとんどです。
地震対応では、応急危険度判定で、赤=危険、黄=注意の家には派遣しないと制限しているセンターあります。(応急危険度判定で赤になった家に派遣している災害ボラセンもあり、対応の基準はボラセンによってさまざまです)

2018年の大阪北部地震でも、屋根瓦がずれてしまった、屋根ニーズ・高所作業ニーズが多数寄せられ、技術NPOで対応しました。
2019年の台風15号で千葉に被害が広がった時は、たくさんの住民さんが屋根から転落して、大きな問題になりました。
一歩間違えば、大怪我だけではすまない危険な作業になってしまうのが高所作業です。災害ボランティアセンターでは対応できないばかりか、技術NPOでも対応できるところは限られています。

そもそも、水害被害と比べ地震被害の復旧活動は難易度が高い場合が多いのです。
水害復旧は、人海戦術で土砂撤去を進める場合も多い。
泥水に濡れた物は使えないことが多いので、廃棄物かの区別も分かりやすい。
対して地震復旧は、傾いた家への侵入やブロック塀の解体など、対応が難しい現場ばかりなのです。


それでも被災地にボランティアが必要な意味

特に地震災害でボランティアでできることは、少ない。
一方で、ボランティアにしかできないことがあります。
それは、被災地に来ること。

青空サロン

「見ず知らずの、赤の他人のために、遠方からわざわざ手伝いに来てくれた」

これ、ボランティアにしかできないことです。
「こうしてたくさんの人が、自分のことを支えてくれる」
と被災された方に感じてもらえたら、ちょっとでも希望を持ってもらえたら、それだけでボランティアの目的が達成された、と言っても言い過ぎではないくらい。

家の片付けも、廃棄物搬出も、炊き出しも、全て手段だと思っています。
ちゃんと支える人がいるよ、と伝える手段です。


たくさんのボランティアを受け入れるために必要なもの

本当は、地震による困りごとは山程あります。
それを困りごととして把握して、ボランティアとして対応できる活動に切り取れるかが課題です。

たとえば

家を公費解体すると、助かった家財を置いておく場所がないので困っている
→廃材なども活用して、敷地内のスペースに家財を仮置きできる小屋を作る

仮設住宅に入れるようになったが、手すりが少なくて家の中の移動が不安
→簡易な手すりを取り付けたり、段差を埋めるスノコを作製したり

被災した家で住んでいるが、ご近所さんが遠方に避難している人ばかりでさみしい
→地域の方が集まれる場所の設定、お茶会などの開催

地震後生活が大きく変わって運動量が落ちたせいか、体が動かしづらくなってきた
→健康体操など体を動かす機会づくり、外に出るきっかけづくり

自宅再建への悩みが大きく、夜眠れない
→傾聴活動や、専門職による再建相談会の開催

町並みが殺風景になってさみしい
→花壇をつくって花を植えよう

地震で雨漏りし、濡れた家の中、環境の悪い場所で生活を続けている
→隣接する納屋を応急的に住める用に改造、生活環境を整える

住民さんたちとの出会いや会話から、困りごとを一つひとつ切り出す。
その解決や解消には、土木建築の技術や知識だけではなく、実施までの下準備が必要です。
災害ボランティアセンターだけで対応できない、技術的なことやものづくり系も、長期的に活動するNPOなどとの連携が十分にとれれば可能なことがあります。

お茶飲んでおしゃべりして

お話相手など、比較的いろんな方にお願いできることもあります。
しかし、明日からすぐ、こうしたボランティアの受け入れができる体制の災害VCのも少ないはずです。

それは、災害ボランティアの活動を調整するコーディネーターが少ないから。
数日で入れ替わるのではなく、同じ地域に張り付いて調整ができる人でないと難しい面があるのも関係しています。


毎年災害があるのに、国で災害対応を主に担う機関が存在しない

そもそも、災害対応を専門とした機関が存在しません。
国防は防衛省、火事は消防、事件や事故は警察。
もちろん災害時には、人命救助に動きます。しかし、住民の生活再建はミッションではありません。
道路や河川の被害は国交省、災害廃棄物は環境省、農地被害は農林省、避難所は厚労省が対応する。

地方行政が災害時の対応をするのは、危機管理課が軸になります。しかし行政なので数年で配置換えがあるため、ノウハウがたまらない。
国で災害対応をとりまとめるのは内閣府防災ですが、内閣府自体が人の入れ替わりが多い組織です。ノウハウがたまらないどころか、担当者が数年でいなくなります。

過去の経験が活かしにくい体制になっているので、各地の被災地で同じ課題を抱えていたりもします。
ずっと同じメンツで動いている民間組織の方が、災害救助法の活用や過去の事例に詳しい場合もあります。
実はもっと国の制度で救済できる部分がたくさんあるのに、手が届いてない気がします。

国ができること、NPOができること、災害ボランティアセンターでできること

いつまで、どこまで、ボランティア頼みなんだ、と何度現場で思ったことか。
そもそもの前提が間違ってないか?という疑問は、現場で活動するNPOの多くが思っていることかもしれません。

珠洲市で活動するNPOが集まる会議、現場の課題を共有し対応策を協議する


能登半島の復旧復興に必要なこと

能登半島の復旧を進めていくには、
解体や水道など復旧復興に関わる業者受け入れができる体制づくりと呼び込み、
復旧復興に必要な専門家の確保、
生業の再生、
細やかな手伝いをできるボランティアの募集とその活動の調整
たくさんの方への能登半島への注目
など、たくさんの角度からの支援が必要です。

津波が来たエリアは人手がたくさん必要

能登半島地震の規模からしても、復旧にも数年かかる可能性があります。
復興はもっと先です。
天と地がひっくり返ったような変化が起きた能登半島に必要なものは、ボランティアだけではありません。
多種多様な専門家と職人、それを動かす国規模の組織と枠組みの整備を一刻も早く、と願います。

倒壊家屋の中からお米の救出


支援をお考えの方へ

能登半島地震への支援活動、今回受け入れをした最年少ボランティアは10ヵ月の男の子。お母さんに抱っこされて、おばあちゃんたちに笑顔を届ける役割でした。その時の彼にしかできない役割です。
なにもできない人はいない、と思います。被災地で光る技を持っている人はたくさんいます。自分でも気づいていない技で、被災地にたくさんのものが届けられるはずです。

子どもたちでも一緒に廃棄物搬出できる

必要なものは、「被災地・被災者中心に活動する」こと。
自分のやりたいことを押し付けるのではなく、ちゃんとたくさんの人の声を聞きながら活動される方であれば、来てもらって助かる場面はたくさんあります。

最初の一歩が一番怖いかもしれませんが、誰かのためになにかしたい!という気持ちがある方は、ぜひ一度ボランティアを募集している支援団体などへお問い合わせください。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!