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理想のためにうまくいっているものを壊す勇気

「セミナーのやり方を教えてください」

今から10年程前のこと、僕が通っていたコーチングスクールの後輩にそう頼まれた。そこで僕は、セミナー講師を養成する勉強会『セミナービジネス実践会』を立ち上げたんだ。

当時は、月に1回2時間ほど会場を借りてセミナーの企画や運営に関して僕がレクチャーするといった勉強会だった。参加費は無料。会場費を参加者でワリカンで運営していた。たまに外部の講師を呼んでセミナーをして貰ったりして、終わったらみんなで呑みに行く。そんな和気あいあいとした勉強会だったんだよね。

そのセミナービジネス実践会は、みんなで創っているという感覚があったんだ。例えば愛称。セミナービジネス実践会は『SBJ』って愛称で呼ばれてたんだけど、これは参加者たちがいつのまにかつけてくれたんだよね。運営に関してもそう。発足してから半年後に僕は自転車日本一周をすることにしたんだけど、その間も

「旅してる間のSBJは任せてください」

って参加者が言ってくれて、僕がいなくても勉強会が開催されていたんだ。しかも、帰ってきたら新しいメンバーが増えてたんだよね。だから、旅から帰った後の勉強会は、20名を超えてた。それまでは、4名くらい。多くても6名くらいだったのに。一気に人が増えたんだ。僕は何もしていないのに。僕はやりたいことをやって現場から離れていたのに。それでもメンバーが増えていったんだ。

メンバーの仲が良くて、和気あいあいとして、僕がいなくてもメンバーが増えていく。そんなセミナービジネス実践会。僕は、それを壊した。それ以上、セミナービジネス実践会をやっていくことは僕には耐えられなかったんだ。仲もいい。メンバーも増えてる。確かにそれは良かったと感じてる。だけど、仲の良さ、和気あいあい の質が僕の理想とは大きくかけ離れてしまったんだ。だから、僕は壊した。

旅から帰ってきたとき、勉強会には20名ほどの人が集まった。それ以降も7,8名の人が集まった。この人たちが何のために参加しているのかというと、勉強会の後の飲み会に参加するためだ。セミナービジネス実践会は、セミナー講師になりたい、セミナービジネスで起業したい、そういった人たちのサポートをするために発足した。僕はセミナーというものが好きだから、セミナー仲間が増えるのが嬉しくて、勉強会を開催してきた。だけど、旅の後に集まっている人は、セミナーをしたいという思いも、起業する思いも全くない。そこに来れば、仲のいい友人たちがいて、その後に楽しく飲めるから参加してる。もちろん全員ではないけど、そういう人がとても増えたんだ。

僕は、それにすごくムカついた。だってさ、飲み会だったら自分で企画して、自分で開催すればいいだけなのに、セミナービジネスに興味あるふりして参加する。勉強会をダシに使われている感じが凄くあったんだよね。

「飲み会やりてーなら、自分で勝手にやれ!」

って、マジで怒りが半端なかった。僕の好きなものややってきたことが雑に扱われてるっていうのかな。怒りと寂しさが混じった何とも言えない不愉快な気分が体を駆け巡った。

もうね、そんな勉強会やりたいくないのよ。僕がやりたいのは、飲み会じゃない。自分のセミナーの質、セミナービジネスの質を互いに高めあえる勉強会がしたかったし、そういうコミュニティを創りたかった。自分のやりたくない勉強会だったら、ぶっ壊していいかな って思って、実際にぶっ壊した。

「セミナーの運営やセミナービジネスを作ることに興味がある奴だけ参加しろ! 無いんだったら、もう勉強会に来るな!」

的なことを伝えた。

その翌月、参加者はゼロになった。


これまで確実に参加者がいた勉強会が参加者がゼロになった。フェイスブックグループでのやり取りも息をひそめた。だけど、僕の気持ちはさっぱりしていた。これでようやく自分のやりたいことをやれる。そんな気持ちだった。これまでの参加者は誰も来なくなったけど、嬉しいことに勉強会の再出発を手伝ってくれる仲間が現れたんだ。彼と2人で色々なことを一緒に考えた。セミナービジネス実践会の在り方、見せ方、毎月の勉強会の企画、コピーライティング、集客などなど、一緒に試行錯誤し創っていったんだ。

だけどなかなかうまくいかなくて、再出発して数カ月は勉強会も僕と彼の2人だったことが続いた。だけど、3か月くらい経過した時、これまでとは違う参加者が来るようになった。それから3か月後、セミナービジネス実践会は『セミナーセールス』のテーマ一本で開催することにした。そうしたら、さらに参加者が増えた。その参加者たちは、これまであったことのない人たちばかり。しかも、セミナーを既にやっていたり、これからセミナー講師になりたい人たちばかり。そういった人たちが増え、単発ではなく毎月参加する人も出てきたんだ。そうして僕の理想とする勉強会がようやくできるようになっていったんだ。

「こんな勉強会はもうやりたくない!」

そんな想いでいったん勉強会をぶっ壊し、自分の理想の勉強会にするために再出発。一緒に創ってくれる仲間も現れ、半年ほどで理想にどんどん近づいていった。そこから話がどんどん発展していって、僕はセミナーセールスのコンサルタントとして活動するようになり、コラボセミナーの依頼も増えた。一緒に法人を立ち上げることにもなった。もし自分の理想を追求せず、違和感を感じたまま過ごしていてはこうはならなかったと思うんだよね。正直、いま目の前にあるものを壊すのは怖いよね。うまくいってるんだとしたらなおさら。だけど、理想の追求って自分の幸せの追求だと思うんだ。だから、怖いかもしれないけど自分のためにほんの少し勇気を出して、壊すときは壊した方が良いなって僕は思うんだ。それを僕は強く実感した。

僕は理想とかけ離れていった勉強会を壊した。参加者がゼロになった。でも半年後、新たな参加者によって理想の勉強会がつくられた。そして、さらに半年後、以前の参加者が勉強会に帰ってきた。こんなに嬉しいことはない。

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