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コロナ禍、Yahoo!ニュースはどう読まれた? PV、コメント分析から見えたこと

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、医療・健康、経済・仕事、「新しい生活様式」など、いつもに増してニュースへの関心が集まった2020年春。Yahoo!ニュースはこの4月、過去最高となる月間225億ページビュー(PV)を記録しました。

Yahoo!ニュースでは、年明けから6月までのPVやコメントの推移などを独自に分析し、人々が新型コロナウイルス関連のニュースをどのように読み、関心が推移していったのかを探りました。

このように膨大なデータを活用して、読者のニーズや変化を把握できるのは、Yahoo!ニュースの大きな強みの一つ。今回は、新型コロナウイルス関連のニュースの読まれ方を、Yahoo!ニュースでデータ分析をするアナリスト2人にさまざまな角度から伺います。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

アクセス数のピークを迎えたのは、4月上旬

「月間225億PV(4月)は、社内の予想を上回る数字でした。つまり、新型コロナウイルス感染症の拡大という有事に際し、求められている情報をしっかりユーザーに届けることができたのではないかと感じています」

そう語るのは、Yahoo!ニュースでデータ分析をするアナリストの竹田辰彦さん。竹田さんによりますと、震災情報などの場合は瞬間的にPVが伸びる傾向があるのに対し、コロナ関連トピックについては今年の初頭から記事数が急増し、PVも継続的に伸びていったということです。

「とりわけ大きくPVが伸びたのは、志村けんさんの訃報があった3月末でした。それまでも感染拡大は懸念事項だったはずですが、国民的なスターである志村さんの死は、より多くの人がコロナを自分事としてとらえる1つの契機になったのだと思われます」(竹田さん)

全体として、感染が広がるにつれてPV数も上昇しており、アナリストの桃井晴康さんは、「PVの変化と新型コロナウイルスへの人々の警戒心は関連しているのではないか」と指摘します。

「PVのピークを迎えたのは4月の上旬でした。その後も高い水準を維持し、5月のGW明けから現在にかけて、少しずつPV数は落ち着いてきています。決してコロナへの関心が薄れたわけではないのでしょうが、緊急事態宣言の解除などを受け、警戒心が薄れ始めたのではないかと推測できます」(桃井さん)

「中国」から「外出自粛」、「地方自治体」へ Yahoo!ニュース コメント欄の関心の推移

仕事から暮らしまで、さまざまな分野に及んだ新型コロナウイルスの影響。当然、ニュースで取り上げられるテーマも多岐にわたります。Yahoo!ニュースのコメント欄に投稿された内容を機械学習で解析し、ユーザーの関心の推移を分析すると、この数カ月のトレンドが見えてきました。

「顕著に見られるのは、1~2月にかけては中国を中心に海外の感染状況に関心が集まっていること。当初は日本より早く感染拡大に見舞われた国の様子が注視され、その後、少しずつ国内における感染状況や学校の休校問題、マスク不足などに関心が移っていったのが分かります。そして4月になると、外出自粛や医療を始め、生活面の具体的な懸念事項が浮き彫りになりました」(竹田さん)

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2月上旬には感染・クラスターなどの新型コロナウイルスの感染拡大そのものへの注意が向けられ、下旬にかけて東京オリンピック・パラリンピックの開催可否へも大きな関心が集まりました。

その後、3月上旬から中旬にかけては、感染防止のための外出自粛、医療やマスクといった、より暮らしに密接なテーマへと関心事項は移り変わります。

4月の緊急事態宣言発令前後から政府・国会への話題も増え、その後は徐々に具体的な施策を行う地方自治体への関心が高まりました。

いわば2020年はじめにはまだ「対岸の火事」であった新型コロナウイルスが、少しずつ身近な問題として深刻化していく過程がユーザーコメントに反映されています。

「当初は漠然としていた新型コロナウイルス感染症の輪郭が、感染が拡大するに連れて次第に明確になっていったということでしょう。言い換えれば、ユーザー自身がコロナ対策として何をすべきか、そして何を考えなければならないのかが、具体的に見えてきたことが、行動に表れているわけです」(竹田さん)

さらに、エリア別のPVの比較からも、各地が置かれていた状況との関わりがはっきりと可視化されました。

こちらの3枚の地図は、昨年12月から今年1〜3月のPVの変化を都道府県別に比較したデータです。色が濃い地域ほど、PVが大きく伸びたことを表しています。

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「2月の時点では、北海道と京都を中心とする関西圏でのアクセスが急増しました。北海道は一足先に感染が拡大したこと、関西圏では中国人観光客の渡航への影響など、観光産業への直接的な打撃が不安視されたと推察できます。つまり、新型コロナウイルス感染症が経済や生活へ与える影響が深刻だったエリアから順番に、PVが伸びています」(竹田さん)

一方で、感染者が1人も出ていない岩手県では、どの月のPVの伸びも低めで安定しています。

20代は要領がいい? デバイス・時間帯・年代を比べると……

次に、読まれ方について分析していきましょう。これまでYahoo!ニュースは、朝の通勤時(午前7~8時)、お昼休み、そして夜の就寝前の3つがもっともPVの伸びる時間帯でした。

下のグラフは、昨年12月と今年4月の1日あたりのPVを、デバイスと時間帯に注目して比較したものです。幅広い時間帯で、スマホの利用者が伸びたことが分かります。

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「まず時差通勤やリモートワークが定着した影響か、通常の通勤時間の7時〜8時台よりその前後の時間帯、つまり6時台や10時台のアクセスが伸びました。また、14時から20時にかけての、ユーザーが仕事をしていたりテレビを見ていたりするような時間帯にPVが上がっていることが確認できます」(竹田さん)

デバイス別では、特にスマートフォンからのアクセスが急増しています。これは、「ユーザーの皆さんが常に新しい情報を求めて、さまざまな時間帯にスマホをチェックするようになったことを表しているのではないか」と竹田さんは分析します。

世代によるニュースへの関心度の違いはどうでしょうか? 昨年12月と今年4月の比較データから、30代以上は終日まんべんなくPVが上がっているのに対し、20代は午後以降にPVが伸びる傾向が見られました。

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「単身者の割合が多い20代は、家庭を持つ層が増える30代ほどはコロナ関連ニュースを重視していない、または、その日のニュースがある程度出そろった午後にまとめて閲覧しているようです。デジタルネイティブ世代ならではの要領の良さを表しているのかもしれません」(竹田さん)

プッシュ通知の開封率は高い 東京アラートへの関心も

一連のコロナ関連報道では重要なニュースを伝えるために、Yahoo!ニュースではプッシュ通知機能も大いに活用されました。その開封率もまた、ユーザーの関心の所在を知る手がかりの1つです。

「政府の政策発表など全国に向けてプッシュ通知を打つ場合もあれば、地域のイベントが中止になったというニュースのように、一部の地域だけに局所的に打たれるものもあります。そんな中、各地域でとくに開封率が高かったのは、“◯◯県で初めての感染者を確認”といった感染情報でした。コロナウイルスがどこまで身近に迫っているのか、みなさんやはり相当警戒していたことがわかります」(桃井さん)

「地域のニュースへの需要が高まっている」といったユーザーの関心に関する知見はYahoo!ニュース トピックスの編成チームへ共有され、プッシュ通知の編成にもいかされています。

とりわけ開封率が高かったプッシュ通知は、志村けんさんや岡江久美子さんといった著名人の訃報。そして6月上旬は、プッシュ通知の開封率の傾向から、“第2波”への関心が高まっている兆候が見られるそうです。

「緊急事態が宣言されたときに比べ、宣言解除のプッシュ通知は比較的低めの開封率でした。解除のプッシュは津波などの災害においても同様の傾向があります。しかし、宣言解除後でも東京アラート発令のプッシュ通知は高い開封率を示しました。都民の第2波への警戒がうかがえます。宣言解除後に感染者数が増えた北九州エリアにおいても、こういった傾向は同様です」(桃井さん)

ビッグデータから見えたことをこれからのYahoo!ニュースへ生かす

こういったユーザー動向をつぶさに分析できることはYahoo!ニュースの大きな強みです。コロナ関連トピックから得られた知見は、今後のYahoo!ニュースのアップデートにも繋がります。

「今回の新型コロナウイルス感染症を通じて、有事においてはニュースへの関心が非常に高まることを改めて実感しました。今後も引き続き、求められる情報を求めているところに的確に届ける努力を続けていかなければなりません」(竹田さん)

さらに、Yahoo!ニュース内のリサーチを行うワーキンググループとも連携しながら、分析や調査といった「強み」をさらに伸ばしていくといいます。

「これからも多角的にアクセスデータを分析していこうと考えていますが、そのニュースが読まれたことで人々にどのような意識の変化があったかはデータ分析だけでは分かりません。今後は、Yahoo!ニュース内のリサーチを行うワーキンググループと連携してインタビューやアンケートなどの調査も進めていき、定量的なデータだけでなく、様々な定性的な調査・分析も駆使して、より良いニュースプラットフォームを目指したいと考えています」(竹田さん)

「news HACK」は、Yahoo!ニュースのオウンドメディアです。サービスの裏側や戦略、データを現場から発信します。メディア業界のキーマンや注目事例も取材。編集とテクノロジーの融合など、ニュースの新しい届け方を考えます。