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時間と空間は「量子化」できるか

これまでのテーマで「光」の最小単位である「光子」といった物質(または非物質)の最小単位「量子」について扱ってきました(*1, *2)。今回は「空間」や「時間」が量子化できるのか、ということについて考えていきます。以前もお話ししたように瞑想とは「無心になること」「想いを巡らすこと」でもありますが、同時に「自己を知ること」「外界のあらゆる事象は自己に内在していることを知ること」でもあります。

そしてどの瞑想法も突き詰めていくと「自己と宇宙が同一であることを知ること」「万物の理(ことわり)は自身が知っていること」という領域へと昇華していき、「瞑想」イコールこれらを認知していく「学び」でもあります。今回も「宇宙の真理」の一部を学んでいきます。私も量子物理学の素人なので素人目線で説明していきます。

まず「時間」や「空間」はいくらでも分割できるのではないか、無限に小さく出来るのではないか、と思う人も多いと思います。しかし「水」に関して言うと、日常生活レベルでは形を持たない液体なので無限に分割できそうですが、実際には「水分子」の集合であるので最終的に「1個の水分子」以下には分割できなくなります。そして物質として捕らえられない「光」でさえも「光量子」として最小単位が存在することが証明されてきました(*1)。「時間」や「空間」はどうなるのか楽しみでもあります。


まずは時間と空間の最小単位を知るために必要な3つの定数を揃えていきます。

①万有引力定数「G」
これはニュートンの古典物理学から知られている定数で、その大きさと単位は次のように表されます。
      G= 6.6743×10^-11 (単位:m^3・kg^-1・s^-2)
     [m: メートル、kg: キログラム、s: 秒、x^3は「xの3乗」]
これは“質量を持つ物質には必ず重力が発生する”ことを意味し、二つの物体(質量m1[kg]、m2[kg])がある距離(r[メートル])で存在するときその二つの物体の間には次の式のような引力Fが働きます(図2)。
      F=(G×m1×m2)/r^2 [単位:kg・m・s^-2] ・・・式1
我々は普段地球の重力しか感じていませんが、厳密には全ての物体同士の間には引力が働いています。例えば、体重50kgの人二人が1m離れて立っていたとすると、
    F= G×50×50/1^2 = 1.7×10^-7[kg・m/s^2] =  0.17 [mg・m/s^2]
であり、地球の重力で0.17ミリグラムの重さほどの引力が働いています。0.17ミリグラムというと水滴4滴ほどで「1m離れた50kgの人からは水滴4滴分ほどの引力を受けている」と言うと近いかもしれません。

②光の速さ「c」
次に物理学でよく出てくる定数である光の速さを挙げます。光の速さはよく「1秒間に地球7周半」と表現されていますが正確には次のように表されます(*4)。
       c = 299,792,458 [m/s] ≒ 3.0×10^8 [m/s]
約30万km/sで地球の赤道一周が約4万kmですから地球7周半の距離を1秒で進む速さと言うことで合っています。ちなみに太陽から発せられた光が地球に届くまで約8分19秒かかります(図3)。古典物理学では光の速度は無視できるほどに大きな値だったのですが、特殊相対性理論や一般相対性理論(*5)においては無視できない要素となり、以降の物理学では普遍的な定数として用いられています。

③プランク定数「h」
次が聞き慣れないかもしれませんがプランク定数と呼ばれる定数があります。“光子が持つエネルギーはその振動数に比例する”という物理法則があります(*6)。これを数式にすると次のように表されます。
        E = hν
  [E : 光のエネルギー、h : プランク定数、ν(ニュー): 光の振動数]
   プランク定数  h = 6.626×10-34  [単位:J・s 、ジュール秒]

となります。
例えば、紫外線領域(例:波長200nm[ナノメートル=10^-9m])の光量子の周波数ν1は
   周波数ν1 =光速÷波長=3.0×10^8 / 200×10^-9 = 1.5×10^17 [/s]
よって、光量子のエネルギーε1は
   ε1 = hν1= 6.626×10^-34 × 1.5×10^17 = 9.9×10^-17 [J: ジュール]
と計算されます。

これで、「時空の最小単位」を導くための3つの定数は揃いました。

・2つの物体が近づける距離の限界
ここでもう一度、「万有引力の法則(式1、図2)」を見てみると
     F=(G×m1×m2)/r^2 [単位:kg・m/s^2]
   引力=[重力定数×質量1×質量2]/[距離の2乗]
となっています。これは「引力は距離の2乗に反比例する」ということを表しているので、つまり「2つの質量の距離がゼロに近づくと引力は無限に大きくなる」ことを意味しています。もしそうなってしまうと「一度近づいたら離れられない」ようになってしまいます。「互いの引力が強すぎて離れられない状態」はどんな状態かと言うと、「ブラックホール」と同じ状態です。「互いの質量から生じる引力から脱出できない距離」以内に近付くとブラックホールが出来てしまいます。

・「ブラックホール化してしまう距離」とは
この距離はあるドイツの天文学者が「一定の質量の星がブラックホールになるときの星の半径」という観点で導き出されました。地球程度の惑星では問題にはなりませんが、太陽の何百倍もの星になるとその中心部の重力も超強大になり、原子もその重力に耐えられなくなります一度原子の崩壊が起こると、質量は変わらず原子同士の距離は縮んでいくため連鎖反応で一気に星の体積は収縮します。このとき超新星爆発を起こしてブラックホールが誕生すると考えられています。
このとき、「その球体がブラックホール化する限界の半径」は提唱者の名をとって「シュワルツシルト(Schwarzschild)半径(*7、図6)」と呼ばれています。

このシュワルツシルト半径(rg)は次の式で表されます。
     rg = 2GM /c^2
   [G: 万有引力定数、M: 質量、c : 光速]
もう既に定数G/光速cについては解説済みなのでMに太陽の質量1.99×10^30kgを当てはめると「太陽のシュワルツシルト半径は約3km」と計算できると思います。ちなみに「地球のシュワルツシルト半径は約9mm」とされていて、「地球を半径9ミリのサイズに圧縮するとブラックホール化する」ということです。

・最小のシュワルツシルト半径を求める
ここからは数式の表記が記述しにくくなるため、図7に計算過程を示します。
魔法の呪文のような文字数列を書き連ねていきますが、ここまで読んだ人なら理解できると思いますので図7の最後まで読んでみてください。
図7を要約すると、ある質量から導かれるシュワルツシルト半径(*7)とコンプトン波長(*8)の関係から理論上最小となるシュワルツシルト半径を導いています。「E=mc^2: すべての物質=エネルギーである(形のあるものと形のないものは等価である)」「全ては波動"Vibration"であり、万物は振動している」という法則に基づいています。そうなると「振動できないものは存在できない」という観点から限界点が推測できます。
ここで最後に導かれた質量Mは理論上ブラックホールを発生させられる最小の質量プランク質量(*10)と呼ばれています。

・理論上の「距離の最小単位」「時間の最小単位」を求める
書いている自分でも頭がパンクしそうですがもう少しでゴールなので頑張りましょう。
先程の図7で最小のシュワルツシルト半径とプランク質量が求められました。この最小のシュワルツシルト半径の半分が長さの最小単位(lp)とされていて、この長さは「プランク長(*9)」と呼ばれています。また、この最小単位「プランク長」が与えられたとき、この長さを最速で移動する時間が最短時間(tp)となり、その時間「プランク時間」は「プランク長÷光速(c)」で求めることができます。

最終的にプランク長やプランク時間を既知の定数(万有引力定数G、光速c、プランク定数h)で表すことができれば実際の数値を計算することができます(図8)。
こうして求められたプランク長は 1.616×10^-35メートルです。目安として原子核の周りにある電子の大きさ(*11)が2.8×10^-15メートルなので、その10の20乗分の1(1兆分の1の1億分の1)なので想像を超えた極小サイズです。また、最小単位となるプランク時間は5.391×10^-44秒という、とてつもなく微小な時間です。そしてこのプランク長(10^-35m)程度が「超ひも理論(*12)」の「ひも」の長さと考えられています。少し賢くなった気がしますね。

しかし、「時間」も「空間」もこれ以上分割できない最小単位が存在することが分かりました。時間も空間もこれ以上分割できない「量子化」ができるということは「この世界のあらゆる事象はデジタル化できる」という可能性が出てきます。逆に言うと「既に想像をはるかに超える精細さでデジタル化されている世界を我々が認識できるようになってきた」のかもしれません。非常にリアルなコンピュータグラフィックスで作られた世界も実際は「0」と「1」だけのデジタルデータで作られています(画像引用:「アバター/2009年」)。映画やゲームでは現実と見間違えるほどのリアルな世界が再現されていますがこれらも全て「0」と「1」だけで表すことが可能です。もし「0」と「1」よりも多くの要素を使って表現する技術を持っているならさらに緻密で膨大な情報をもつ世界を表現できるかもしれません。

映画「アバター/2009年」より

ちなみに前回の「数(*13)」のテーマの観点から「プランク時間毎にカウントするタイマー」があったとすると、1秒間に約1.9×10^43乗カウント、宇宙誕生から約130億年=約4.1×10^17乗秒なので現在まで約7.6×10^60乗=7.6那由多(なゆた)カウントくらいで、最小時間単位でも無量大数(10の68乗)には届きませんでした。今回は時間と空間の「最小」「量子」を扱いましたが、次回もまた「極小」「極大」に関するテーマで脳を活性化していきたいと思います。
(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用/参考資料:

*1. 「観る」ことで「現実が変わる」?:二重スリット実験
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
*2. 量子の最新研究と因果律の崩壊?
https://note.com/newlifemagazine/n/nf66f91110a61
*3. https://ja.wikipedia.org/wiki/万有引力定数
*4. https://ja.wikipedia.org/wiki/光速
*5. https://ja.wikipedia.org/wiki/相対性理論
*6. https://ja.wikipedia.org/wiki/光エネルギー
*7. https://ja.wikipedia.org/wiki/シュワルツシルト半径
*8. https://ja.wikipedia.org/wiki/コンプトン波長
*9. https://ja.wikipedia.org/wiki/プランク長
*10. https://ja.wikipedia.org/wiki/プランク質量
*11. https://ja.wikipedia.org/wiki/電子
*12. https://ja.wikipedia.org/wiki/超弦理論
*13.「数」の瞑想
https://note.com/newlifemagazine/n/n0671628d60c7

画像引用
 https://unsplash.com/ja/写真/T8-kfC8W4b8
 https://wallpaperaccess.com/earth-and-sun#google_vignette
 http://creativity103.com/collections/Lightwaves/slides/light_trails.html
https://www.news.ucsb.edu/2020/019817/hunt-gravitons Photo Credit: R. HURT - CALTECH / JPL
https://pixabay.com/illustrations/blackhole-black-hole-wormhole-worm-6274733/
 https://www.youtube.com/watch?v=5PSNL1qE6VY

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