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秘密結社!?フリーメイソンとクラシック音楽の関係

新日本フィルnoteではダントツの情報量「岡田友弘《オトの楽園》」。指揮者の岡田友弘が新日本フィルの定期に絡めたり絡めなかったりしながら「広く浅い内容・読み応えだけを追求」をモットーにお送りしております。今回は11月の「すみだクラシックへの扉」「オーケストラキャラバン 横浜公演」で新進気鋭の指揮者、沖澤のどかさんの指揮のもと名演を残した「フリーメイソンのための葬送音楽」に関連したスピンオフ企画です。テーマは「フリーメイソン」・・・多くの音楽家とフリーメイソンの関係性と、世界一有名な「秘密結社」であるフリーメイソンについてのあれこれについてお話しします!

実は推理小説やミステリーものが好きだ。コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」やアガサ・クリスティーの「名探偵ポワロ」「ジェシカおばさんの事件簿」などなど・・・。

サー・アーサー・コナン・ドイル

2006年に出版された「ダ・ヴィンチ・コード」はダン・ブラウンの人気作で、フランスやイタリア、イギリスを舞台にしてキリストの「聖杯伝説」の謎に迫ったフィクションである。この本の文庫版上巻を購入して読み始めた僕は、その面白さにページをめくる手が止まらずに上巻を読破してしまった。翌朝まで我慢できなかった僕は、当時国立市に住んでいたが、その欲望を抑えられず深夜に京王線府中駅前の深夜営業している本屋まで自転車で向かった。しかしそこに中巻、下巻がなく、今度はJR国分寺駅前の古本屋まで自転車を走らせて中巻と下巻を購入した。そしてその日は一睡もすることなく全巻を読破したという思い出深い作品である。「ダ・ヴィンチ・コード」が映画化された際には字幕版、吹き替え版と鑑賞して、豪華付録付きのコレクターDVDも購入するくらいの熱の上げようであった。この作品はイエス・キリストや聖母マリアに関わる「聖遺物」の一つである聖杯=グラールにまつわる伝説をメインテーマとしているのだが、クラシック音楽関連でいえばリヒャルト・ワーグナーの楽劇「パルジファル」はその聖杯伝説にまつわる物語だし、「ローエングリン」の白鳥の騎士、ローエングリンはパルジファルの息子である。

ダ・ヴィンチの代表作「モナ・リザ」

「シオン修道会」「テンプル騎士団」「イルミナティ」など、いわゆる秘密結社の名前が多く登場するのが「ダ・ヴィンチ・コード」の作者であるダン・ブラウンの小説の特徴だ。「ダ・ヴィンチ・コード」をまだ読んでいない人にネタバレになってしまわないように気をつけながら書かなくてはいけないが「ダ・ヴィンチ・コード」の重要な舞台となるイギリスの礼拝堂がある。

ロスリン礼拝堂

その礼拝堂の名は「ロスリン礼拝堂」・・・ケルトやテンプル騎士団にまつわる彫刻などがある歴史とミステリーの宝庫だ。この礼拝堂は「聖杯伝説」と結び付けられることもあるが、教会側はそれを否定しているし、学術的にも否定的な考えが通例である。とはいえ、このスコットランドにある古い礼拝堂はとても美しく、見どころがたっぷりある。

この礼拝堂にはさまざまな「象徴」がある。ユダヤ人、キリスト教、テンプル騎士団、古代文明の神・・・。この不思議な礼拝堂が「ダ・ヴィンチ・コード」の大詰めの舞台になるのだが、それは是非とも本や映画でご覧いただきたい。

真偽には諸説あるが、ロスリンには他にも、ある結社にまつわる「象徴」めいたものがある。

それは「フリーメイソン」。一度はその名を聞いたことがあるだろう。人間は、もちろん僕も「都市伝説」のようなものには興味をそそられるものだ。アメリカ建国に関わったとか、現在もなお世界の政治経済を操っているであるとか・・・フリーメイソンに関わる「謎」や「秘密」については多くの書籍が著され、映画やドラマの題材にもなっている。

同じくダン・ブラウンの「ロスト・シンボル」はアメリカを舞台とした作品だ。この作品のテーマが「フリーメイソン」なのだ。フリーメイソンが守り続けているとされている秘密を巡るサスペンスミステリーである。

ワシントン記念塔

アメリカ初代大統領ワシントンをはじめとした建国の重要人物たちがフリーメイソンであったことや、アメリカ1ドル紙幣に描かれているピラミッドの上の目がフリーメイソンの象徴なのでは?という憶測から広がっていった「伝説」が、この作品の根底にある。その「プロビデンスの目」こそ、今回のコラムのアイキャッチとなっているものだ。これはアメリカ合衆国の国璽の裏面の図柄なのである。

この「有名な秘密結社」であるフリーメイソン・・・1人2人ではない多くの作曲家に、フリーメイソンと関係性を持つものがいるのだ。今回は「フリーメイソンとクラシック音楽」の不思議な関係について綴りたい。

「オトの楽園」の読者にはよく知られていることだが、「大バッハ」と言われる「音楽の父」J.S.バッハは子だくさんな音楽家である。その11男として生まれたのがヨハン・クリスチャン・バッハ。彼は代々音楽家の家系に生まれ、大バッハの息子の中では最も成功した人物のひとりで、父親やカール・フィリップ・エマニュエル・バッハに続いて現在でもその作品が多く演奏されている作曲家である。

ヨハン・クリスチャン・バッハ

彼はイギリスのロンドンで大きな成功を収めながら、47歳で急逝した。彼は自身が活躍したロンドン時代にフリーメイソンに入会したと言われている。

息子がメイソンであったということに、さまざまな憶測が憶測を呼び、父親であるヨハン・セバスチャンもメイソンであったのでは?という説を唱える者もいるようだが、今のところ確定した情報ではない。

ヨハン・クリスチャン・バッハと親交があった人物がいる。それはウォルフガング・アマデウス・モーツァルト。ヨハン・クリスチャンとの関係が影響していたのかは定かではないが、モーツァルトもまたメイソンであった。11月の「すみだクラシックへの扉」で取り上げられた「フリーメイソンのための葬送音楽」は特にフリーメイソンとの関わりを示す作品だ。またモーツァルトの「魔笛」にもフリーメイソンの儀式を思わせる場面があり、フリーメイソンとの関係を想起させる。また、父のレオポルド・モーツァルトもメイソンであったと言われている。

ハイドン
モーツァルト

フリーメイソンの組織には細分化された「階級」があるが、モーツアルトの階級は下級のメイソンだったと言われている。また映画アマデウスでモーツァルトを殺した人物として描かれるアントニオ・サリエリもメイソンだったという説もある。

ドイツ国歌(旧オーストリア帝国国歌)を作曲したことでも知られるヨーゼフ・ハイドンもメイソンである。この旧オーストリア帝国国歌を作詞したレオポルド・ハシュカもメイソンであったとされている。この「ドイツ国歌」の楽譜を見てみたところ、この曲の調性は「変ホ長調」である。これは「フラットが3つ」の調であるが、これはフリーメイソンを象徴する調と言われているそうだ。ちなみにモーツァルトの「フリーメイソンのための葬送音楽」や「魔笛」序曲もフラット3つの調性を採用している。

入会についての確証はないが、メイソンとの関係を噂される作曲家はまだいる。歌曲王と言われるフランツ・シューベルトや「楽聖」ベートーヴェンにもメイソンの噂がある。

ベートーヴェンにはフリーメイソンのロッジ(活動の拠点で、各地にある)のために書かれた作品があり、またベートーヴェンがフリーメイソンの儀式の演奏会に出席した記録がある。また彼の代表作で、年末の日本の風物詩である「第九」の歌詞は、元々シラーがフリーメイソンリーの儀式のために書かれた詩に由来しているという説も紹介しておきたい。

フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」の作詞と作曲をしたクロード・ジョセフ・ルージェ・ド・リールもフリーメイソンであった。これを独唱とオーケストラのために編曲をしたベルリオーズもメイソンであると掲載しているロッジがある。

ロマン派の作曲家たちにもメイソンとされている人物が複数いる。

フランツ・リストもフリーメイソンに入会記録がある。イタリアのオペラの2大巨匠であるヴェルディプッチーニもメイソンであったという説がある。明確な入会の記録があるわけではないので「状況証拠」の積み重ねからその説を唱える人がいる。特にプッチーニの最後のオペラ「トゥーランドット」はフリーメイソンの儀式や思想の影響があるとする説もある。「魔笛」同様、神秘的で不思議な内容のものは「何かしらの宗教的儀式なのでは」という考えを持つ人は少なくないだろう。ドイツのリヒャルト・ワーグナーもメイソンであったという説があるが、それは文献により見解が異なっている。ある本では入会を断られたという記録がある。

フランツ・リスト

これまではメイソンかどうか定かではない例を挙げてきたが、フィンランドを代表する作曲家ジャン・シベリウスがフリーメイソンであることは確かだ。

ジャン・シベリウス

シベリウスは1922年に設立されたフィンランドのロッジの創立メンバーとなり、のちにフィンランドを統括する「グランド・ロッジ」のオルガニストとなった。シベリウスにはフリーメイソンのための音楽がある。それは「フリーメイソンのための儀式用音楽 作品113」であるが、後年数曲追加され、また改訂されたのだが、その改訂版がシベリウス最後の作品となった。

その「儀式用音楽」の12曲目が「フィンランディア讃歌」なのだが、その名の通り、この作品は交響詩「フィンランディア」の有名な中間部旋律そのものである。しかし、「フィンランディア」内で歌われる場合の「おお、スオミよ」で始まる歌詞ではなく、全く別の歌詞があてられている。

「マーチ王」と呼ばれるアメリカの作曲家ジョン・フィリップ・スーザもメイソンで、これは入会の記録がある。またアメリカ国歌「星条旗」の作詞者は米国フリーメイソンのフランシス・スコット・キー、作曲は英国フリーメイソンのジョン・スタンフォード・スミスだ。またラッシュモア山のアメリカ大統領4人の顔の彫刻を作ったガットスン・フォーグラムもまたメイソンであった。

ジョン・フィリップ・スーザ

また指揮者として知られるセルゲイ・クーセヴィツキーオットー・クレンペラーもメイソンと言われているし、イギリスの作曲家アーサー・サリヴァンほか何人かメイソンとされている作曲家、音楽家がいることを付記しておきたい。

オットー・クレンペラー

クラシック以外にも、フリーメイソンの音楽家が何人かいる。メイソン会員が多いアメリカのミュージシャンにも多くのメイソン、メイソンとされている人物がいるので参考までに追記しておきたい。

ポール・ホワイトマン

「ラプソディ・イン・ブルー」の委嘱をしたポール・ホワイトマンはメイソンであった。そのためガーシュインもメイソンであると思いたい人々も多いようだが、残念ながらガーシュインがメイソンであるという証拠はない。ジャズの巨人で「A列車で行こう」で知られているデューク・エリントンもメイソンである。またカウント・ベイシーもメイソンとされている。「スマイル」という曲が有名なナット・キング・コールもメイソンであった。

その他にもベニー・グッドマン、グレン・ミラーもメイソンであったという説もあるが、それは今回調べた範囲内では信頼するに足る情報はなかった。同様にルイ・アームストロングをメイソンとする説もあるが、これについては否定的な意見が多い。

このように音楽関係者を見るだけでも、フリーメイソンの会員やメイソンであったと想像されている作曲家・音楽家が多いことがわかっただろう。これはメイソンが音楽家に特化してその数が多いということではなく、さまざまな国、さまざまな分野にメイソンは多くいる。以下に国別に名前だけ列挙していくが、多くの歴史的人物の名を見つけることができるだろう。

アメリカ

ベンジャミン・フランクリン(政治家)、マーク・トウェイン(作家)、キング・キャンプ・ジレット(剃刀メーカーの創業者)、ヘンリー・フォード(自動車メーカーの創業者)、ウォルター・クライスラー(自動車メーカーの創業者)、タイ・カップ(プロ野球選手)、カーネル・サンダース(フライドチキンチェーン創業者)、クラーク・ゲーブル(俳優)、チャールズ・リンドバーグ(飛行士)、ジョン・スタインベック(作家)、アーノルド・パーマー(プロゴルファー)、マシュー・ペリー(幕末に日本に開国を迫ったアメリカ軍人)、ダグラス・マッカーサー(GHQの最高司令官)

マシュー・ペリー

歴代アメリカ大統領

ジョージ・ワシントン、セオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・トルーマン、リンドン・ジョンソン、ジェラルド・フォードなど15人の名前が知られている。

ジョージ・ワシントン

フランス

モンテスキュー(哲学者)、ヴォルテール(哲学者)、スタンダール(作家)、ジャコブ・マイエール・ド・ロチルド(ロスチャイルド財閥開祖)、ヴィクトル・ユーゴー(作家)、ギュスターヴ・エッフェル(技師、エッフェル塔の設計者、自由の女神の内部設計者)、アンドレ・シトロエン(自動車メーカー創立者)

パリのエッフェル塔
ギュスターヴ・エッフェル

ドイツ・オーストリア

ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ(作家、政治家)、フリードリッヒ・フォン・シラー(作家)、ハインリッヒ・ハイネ(作家)、ハインリッヒ・シュリーマン(考古学者)、ヘルマン・ヘッセ(作家)、エマヌエル・シカネーダ(劇作家、モーツアルトのオペラを多く手がけた)

ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ

イングランド・スコットランド・北アイルランド・アイルランド

アーサー・コナン・ドイル(作家)、ウィンストン・チャーチル(作家、政治家、英国首相)、ジェームズ・ワット(蒸気機関の発明で知られる)、ウォルター・スコット(作家)、トーマス・カーライル(歴史家)、トーマス・リプトン(紅茶ブランド創業者)、オスカー・ワイルド(作家)

ウィンストン・チャーチル

また万有引力の法則を発見したことで有名なアイザック・ニュートンはイギリスのフリーメイソン乗っ取り計画を画策、弟子にロンドン・グランドロッジを設立させて、ニュートンは実質的な支配者となったという説がある。

その他の国のメイソン

アルフォンス・ミュシャ(チェコの画家)、アンリ・デュナン(赤十字の父)、プーシキン(ロシアの作家)、トルストイ(ロシアの作家)、マルク・シャガール(画家)、シモン・ボリバル(ベネズエラ初代大統領、「シモン・ボリバル交響楽団」にその名を残す)

アルフォンス・ミュシャ

日本

日本人にもメイソンはいる。もちろん今でも日本にはフリーメイソンリーのロッジがあり会員活動もされていて会員数は約1500人、その中で日本人は約250人だそうである。

西周(政治家)、後藤新平(官僚、政治家)、鳩山一郎(政治家、首相)、東久邇宮稔彦王(元皇族、首相)など

東久邇宮稔彦王

幕末の志士で、現在でも絶大な人気を誇る坂本龍馬にもメイソン説がある。それに関連した真偽不明の伝説もあるがいずれも空想の域を現時点ては超えないものだろう。坂本龍馬は暗殺されておらず、彼は生き残り英国に渡った・・・というものまであり、明治初期に岩倉具視ほか「岩倉使節団」が英国を訪れた際、彼らがロンドンから遥かに離れた場所、冒頭に触れたロスリン礼拝堂を訪れたのは、そこに生きて暮らしている坂本に会うためであったという俄には信じがたい説を唱える人がいる。荒唐無稽な話にも思えるし、ロマンに溢れた伝説であるとも言えるこのエピソードにも「フリーメイソン」の影が見え隠れするのである。ちなみに幕末に長崎に来た「グラバー園」で有名なグラバーもまたメイソンであったとされ、長崎で活動した龍馬とグラバーの関係を考えた時に、全くのガセネタではないようにも思えてくる。

坂本龍馬

このように歴史的に大きな業績を残し、現在にもよく知られたこれだけ多くの人物がフリーメイソンであったことに驚きを持つ人もいるかもしれない。また過去の歴史からフリーメイソンを陰謀論と結びつける本が日本では多く出版されているので「密かに世界を支配している」であるとか「世界征服を企んでいる」とか言われることが多い。実際のところそれが現実的であるとは思えない。いつの間にか話が大きく広がって、思いもよらない「虚像」が作り出されたのだと思う。現在、全世界に600万人もの会員がいるという大規模な団体だということも、その噂に拍車を掛けているのかもしれない。

フリーメイソンのシンボルのひとつ「直角定規とコンパス」

フリーメイソンの起源には諸説あるが、石工職人のギルド(組合)が起源だとされている。その名残はフリーメイソンのシンボルである「直角定規とコンパス」に残されている。なぜ石工がこのような職人組合を組織したかというと、当時確実な腕を持つ石工のほか、そのような確かな技術のない「怪しい」石工が多く存在し、そのマガイモノとホンモノを区別するために組織されたとされている。その「本物」の中でしか通用しない秘密や儀式をもち、それを守ることで、マガイモノでないことを確認するという意味合いもあり、それらの儀式が存在したとされている。そのような職人集団の名残は、現在のフリーメイソンの階級「親方」「職人」「徒弟」という名称や、集会の際に石工の作業着であるエプロンを着用することに残されている。

その職人の組合が時代が進むにつれて職人以外のフリーメイソンが増えてきて、フリーメイソンは「職業団体」から「友愛団体」へと変貌していったとされている。「友愛団体」としてのフリーメイソンの性質を表すものとしては「ロータリークラブ」や「ライオンズクラブ」、また「ボーイスカウト」の創立者はフリーメイソンであったという点に注目したい。また赤十字の父デュナンや近代オリンピックの父であるクーベルタン男爵もまたメイソンであることからもわかるように「世の中をより良くするために役にたつ」という考えがフリーメイソンの考えの根底にあることが窺われる。

フリーメイソンの日本グランド・ロッジのウェブサイトによると「フリーメイソンリーとは会員の自己成長を求め、またそのことを通じて社会の向上を求める組織」と説明している。実際のところ「会員同士の親睦を目的とした友愛団体」なのだ。「陰謀論」や「宗教か否か」など一般の人が気になっていることについてもホームページで答えているので、興味のある方はサイトを訪れると良いだろう。そこには会員同士での親睦やバーベキューの様子が掲載されている。

フリーメイソンには各団体に「秘密」があり、それを漏らしてはいけないという誓いがあるらしいが、それをもって「何やら怪しげな団体」と断定してしまうのは拙速だ。どんな組織でも、その構成員しか知り得ないものがあり、それを構成員の中で守り、組織の中でだけ通用するものを持つことで「組織の結束」を強くすることができる。悪い意味で言うと「内輪」の話題で盛り上がるのと根底では同じだろう。また「秘密の共有」というのもまた、当事者同士の絆を強くする。また、それに伴う「儀式」も神秘性や非現実性を共有することで、その組織のメンバーとしての「帰属意識」を強める効果があるのかもしれない。それは別にフリーメイソンだけがそのようにしているわけではない。

現在でも続いている伝統なので、多くを語ることを避けるが、母校の大学の吹奏楽部には入部にあたり「入部式」という儀式がある。その内容は「秘密」だが、その儀式を経て正式に部員として認められるのである。その内容が新入生には知らされないので、新入生にとっては不安と恐怖に襲われる行事なのだが、このようなケースもまた「秘密」と「儀式」の一例と言えるだろう。念のために付記しておくが、決してハラスメントに該当するようなものではないので今後入部を検討する方がいたら、是非とも安心していただきたい。

フリーメイソンの基本理念は「自由」「平等」「友愛」「寛容」「人道」という5つで、これは普遍的に我々が大事にしていきたいことだと思う。

我が家は先祖のことを多く語らない。実は比較的全国に分布する「岡田」姓、実は故郷の秋田をはじめ北日本には少ない苗字で、僕も秋田にいた頃は自分たちの親戚以外の岡田姓は小学校の頃にひとりと、そして市内の魚屋さん一軒だけだった。しかし、父親が生まれた集落にのみ岡田姓が集中しており、そのような地域は他になかった。何かの事情でこの地域に岡田氏の先祖が定着したのだろう。岡田姓は主に西日本には多く、大手スーパーの創業家で某野党の国会議員の地盤である三重県や、うどん県として知られる香川県には多いようだ。かつてお世話になった不動産屋さんの岡田さんは香川出身で、クラスには複数名の岡田さんがいたと教えてくれた。

その数少ない情報の中で、記憶にあるのは「先祖が石工だった」という話である。しかし聞いたのはそれだけで、詳細なことは全く知らない。謎に満ちた「石工」・・・まさか代々フリーメイソンであったとは思っていないが、石工にまつわる不思議なエピソードは意外にも身近にあった。まさか、これから親に「実はウチは代々ある組織の会員だ。これからその会員としての秘密を伝承する」と突然言われたりしないだろうか・・・きっとそんなことはないと思う。

最後にもう一つ、これは今まであまり言っていなかったことなのだが、父方祖母の実家には代々言い伝えられていることがある。これは過去の歴史的人物にまつわる話であるのだが・・・これについては全国各地にある言い伝えの一つで、信ぴょう性がないものだとは思う。しかしながら父方の祖母の実家のある土地は人里離れた山奥の集落で、交通の要衝という場所ではい。むしろ身を隠すのに適している場所である。そのような土地柄が年月を経て「伝説」や「言い伝え」になっていったのかもしれない。

フリーメイソンにしても、僕のような身近な言い伝えにしても・・・「その人が何を信じるか」ということが一番大事なのだろう。その言葉は「ダ・ヴィンチ・コード」のラストシーンでトム・ハンクス演じるロバート・ラングドンが、オドレイ・トトゥ演じるソフィーに語る言葉である。

「何を信じるか」で「魔笛」や「フィンランディア」「星条旗よ永遠なれ」などの作品が、今までと違ったように聴こえてくるかもしれない。

(文・岡田友弘)


これからの新日本フィル公演情報


今回の「オトの楽園」の中でも触れたベートーヴェン「交響曲第9番」の特別演奏会が開催祭されます!今回はNJPミュージック・アドヴァイザーの佐渡裕の指揮で開催。12月17日、18日の公演については11月29日時点て予定枚数を終了し、残りの3公演のチケットも残りわずかとなっております。

2022年の締めくくりに、新日本フィルの「第九」で一緒に盛り上がりましょう!

詳細、最新情報は新日本フィルのウェブサイトでご確認ください。

執筆者プロフィール

岡田友弘
1974年秋田県由利本荘市出身。秋田県立本荘高等学校卒業後、中央大学文学部文学科ドイツ文学専攻入学。その後色々あって(留年とか・・・)桐朋学園大学において指揮を学び、渡欧。キジアーナ音楽院(イタリア)を研鑽の拠点とし、ヨーロッパ各地で研鑚を積む。これまでに、セントラル愛知交響楽団などをはじめ、各地の主要オーケストラと共演するほか、小学生からシルバー団体まで幅広く、全国各地のアマテュア・オーケストラや吹奏楽団の指導にも尽力。また、児童のための音楽イヴェントにも積極的に関わった。指揮者としてのレパートリーは古典から現代音楽まで多岐にわたり、ドイツ・オーストリア系の作曲家の管弦楽作品を主軸とし、ロシア音楽、北欧音楽の演奏にも定評がある。また近年では、イギリス音楽やフランス音楽、エストニア音楽などにもフォーカスを当て、研究を深めている。また、各ジャンルのソリストとの共演においても、その温かくユーモア溢れる人柄と音楽性によって多くの信頼を集めている。演奏会での軽妙なトークは特に中高年のファン層に人気があり、それを目的で演奏会に足を運ぶファンも多くいるとのこと。最近はクラシック音楽や指揮に関する執筆や、指揮法教室の主宰としての活動も開始した。英国レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ・ソサエティ会員。マルコム・アーノルドソサエティ会員。現在、吹奏楽・ブラスバンド・管打楽器の総合情報ウェブメディア ''Wind Band Press" にて、高校・大学で学生指揮をすることになってしまったビギナーズのための誌上レッス&講義コラム「スーパー学指揮への道」も連載中。また5月より新日フィル定期演奏会の直前に開催される「オンラインレクチャー」のナビゲーターも努めるなど活動の幅を広げている。それらの活動に加え、指揮法や音楽理論、楽典などのレッスンを初心者から上級者まで、生徒のレベルや希望に合わせておこない、全国各地から受講生が集まっている。


岡田友弘・公式ホームページ

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