インパクトも繊細さも兼ね備えるデザインとは…!おちらしさんアワード2023~舞台版~結果発表
こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです!
チラシ宅配サービス「おちらしさん」では2020年より、1年に1度開催される“チラシの祭典”、「おちらしさんアワード」を開催しています! 全国の舞台・美術展ファン、チラシファンの皆さまに、一推しの1枚へ投票していただき、多くの票数を集めたチラシとその作り手の方々を表彰するイベントです。
4回目の開催となる2023年は、10~11月の一次投票、12月の決戦投票と、2回に分けてWEB投票を行いました。投票してくださった観客の皆さま、盛り上げてくださった主催団体の皆さま、本当にありがとうございました!!
今年は新たに、おちらしさんスタッフの念願でもあった、チラシビジュアルが見られる投票ページを叶えることができました。毎年参加してくださっている皆さまも、「おおっ!!」と驚かれたのではないでしょうか!?
こちらの記事では結果発表として、舞台版の上位1~10位に輝いたチラシ10作品を一挙にご紹介します! 投票の際にいただいた観客の皆さまからのコメントや、公演団体・デザイナーの方々からも受賞記念コメントを特別にいただきました!
多くの方はチラシのどんな部分に惹かれたのか? そして作り手の方はどんな部分にこだわられていたのか……? 最後までぜひじっくりとお楽しみください!
▽「おちらしさんアワード2023~美術版~」結果発表はこちら▽
第1位 PSYCHOSIS
「寺山修司没後40年記念認定事業『疫病流行記』」
見事、第1位に選ばれたのは、ザムザ阿佐谷にて上演された、PSYCHOSIS「寺山修司没後40年記念認定事業『疫病流行記』」です!!
朱に染まったインパクト抜群のこちらのチラシ。薄暗く不穏な空気が漂う街のようですが、こちらを見ているのは「帽子を被り、コートを羽織った人??」と思いきや、よく見るとネズミが山のように集まり人の形を成しています。ちょっとゾクゾクしてきますね……。
さらに真っ赤なネズミが中には3匹。『疫病流行記』というタイトルからは、「もしかして何かの病気にかかったネズミなのかな……」「これが伝染していったら最後には……」と恐ろしい想像が掻き立てられます!
「集団を組織していく想像力の『伝染』」というキャッチコピーにふさわしく、まさにこのチラシから手に取った人へ想像が伝染していく、次から次へと『疫病流行記』への妄想があちこちで加速していく、そんな強いパワーを持った1枚です。
「パッと見た瞬間に言いようのない禍々しさ」「この公演のこのチラシからサイコシスを観はじめました」「不思議な絵だと繰り返し見てしまった」といったコメントもいただきました。細部まで描くからこそ生まれる生々しい恐ろしさと、強烈な第一印象。双方で観る人の心をグッと惹きつけた1枚です。劇団の公式noteでは、チラシデザインの過程も特集されていますよ!!!
イラスト・上野顕太郎 さん(漫画家)よりコメント
デザイナー・森永理科 さん(PSYCHOSIS主宰)よりコメント
お二人からは、上野さんお決まりのポーズで
大喜びの記念写真もいただきました!!
第2位 東京グローブ座『After Life』
チラシのお写真は、公演HPにてご覧いただけます↓↓
第2位に選ばれたのは、新国立劇場 中劇場ほかで上演されました、東京グローブ座『After Life』です。
こちらのチラシで注目すべきは、その不思議な構図。上段に写っているのは主演の上田竜也さんですが、奥の白い衣裳の上田さんはハッキリと、手前の黒い衣裳を着た上田さんにはピントが合わずぼんやりと見えます。奥が小さく、手前が大きいことから、距離感を感じさせますが、遠くからもう一人の自分を見つめるような視線がなんとも印象的です。
代わって下段では、黒い衣裳の上田さんをはじめ6名の出演者の方が。自然界の風景が写る大きなパネルは、こちらも奥に行くほど小さくなり、遠くには地平線のようなラインも見え、先ほどと同じような奥行きを感じます。真っ白に広がる世界に、それぞれに視線の合わない出演者たち。一体ここがどこで、彼らは誰なのか、謎めく雰囲気です。さらに裏面ではぽつんと置かれた革靴が見えますが、これも何を暗示しているのでしょうか……?
シンプルで澄んだイメージに隠された、ミステリアスな物語。少ない要素が印象的に描かれているからこそ謎が謎を呼び、頭の中で忘れられないチラシデザインです。「死後の世界なのか背景に色がないのが印象的」「現実の延長にありつつも、現実ではない不思議な空気感が感じられる」「自分を見つめ直すというイメージぴったりでした」といったコメントもいただきました。
第3位 PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『ひげよ、さらば』
チラシのお写真は、公演HPにてご覧いただけます↓↓
第3位に選ばれたのは、PARCO劇場ほかで上演されました、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ひげよ、さらば』です。
こちらのチラシは、ビジュアルから伝わる世界観が素敵な1枚。月が見え隠れする夜に佇むのは、その夜を映したような暗い紺色の衣裳に身を包む出演者の方々。よく見ると可愛らしいしっぽが生えていますが、この物語に出てくるのは、猫や犬たちです!!
児童文学を原作に、以前には子ども向けの人形劇としてテレビでも放映されていた『ひげよ、さらば』。人間が演じるにあたり動物らしいコスチュームを身に着けることもできますが、今回の舞台化では彼らを人の姿に翻案。それぞれのスタイリッシュな出で立ちと、野生に生きる犬猫たちの姿が重なるようでワクワクする仕上がりです。
裏面は写真はなく情報のみで構成され、クールな印象。月の光を受けて輝くような、タイトルロゴがピリリと効きます。「野良猫たちのシビアな世界観が表現されていた」「闇夜に立つ猫たちの姿が美しくキレイ」「猫なのに猫っぽくない!!」といったコメントもいただきました。
子どもたちに長年愛されてきた有名作品を、あえてらしくない形で描く面白さ。都会的な雰囲気をチラシビジュアルから醸し出すことで、物語の新たな一面を期待させます……!
第4位 NODA・MAP 第26回公演
『兎、波を走る』
第4位に選ばれたのは、東京芸術劇場プレイハウスほかで上演されました、NODA・MAP 第26回公演『兎、波を走る』です。
丸や波線でふしぎなグラフィックが描かれたこちらのチラシ。2つ折りの見開き部分を開くと、出演者の高橋一生さん、松たか子さん、多部未華子さんの写真とこのグラフィックが横並びになるのですが、実は同じモチーフを表していることに気が付きましたか……!? ロゴをはじめ、放射上に伸びた公演の詳細、左上の黄色の丸、右側の2つの赤い丸、下に写る青い波のような模様、すべてが左右で対応しているんです。
シンプルな構図にも関わらず、この左右の見開きを見比べているうちにふわふわと誘い込まれ、既に作品の世界へ迷い込んでしまうかのよう。
中面も同じく、丸と波線のグラフィック。3つのページが3つともほぼ同じモチーフで構成されていることってなかなかに個性的なはず。逆に言えば、このデザインこそ、『兎、波を走る』という作品の芯を表すのでしょう。
「斬新で、公演への期待がいっぱいになった」「ポップな色合いの可愛らしいチラシなのに、観劇後に見ると隠された意味が分かってジンとした」「タイトルとデザインと劇の内容のシンクロが素晴らしい」というコメントもいただいています。
まもなく2月9日(金)より、マルチアングル配信も行われる本作! どんなストーリーが紡がれるのか、チラシのデザインから気になった方はぜひそちらでの答え合わせも楽しみに待ちましょう……!
第5位 ケムリ研究室no.3
「眠くなっちゃった」
第5位に選ばれたのは、世田谷パブリックシアターほかで上演されました、ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」です。
まずこのチラシは「眩しい」。チラシなのに、紙なのに、眩しいんです……!! その仕掛けは真っ黒な背景に描かれた、緒川たまきさんの覗く窓のような部分。窓の外の世界は眩いほどに真っ白に発光していることが、漆黒とのコントラストで伝わってきます。チラシで舞台上のようなライティングが感じられるとは、驚きです!!!
続いて中面は、先ほどとは別の窓から見えた別の世界でしょうか? SFチックな退廃的な街並みに、出演者の皆さんが。足元にはのりしろがあるので、実はペーパークラフトなのでしょう。赤いレーザーのような線が張り巡らされ、なんだか危ない雰囲気……。この線も無造作なようで、全員の顔の上を通らないよう計算されているところカッコいいですよね。
裏面では、またもや緒川さん以外の方々がテレビの中で囚われている!? 真正面でなく斜めな角度でのキャスト写真というのも、目新しくビビッドです。
「未だに閉じたり開いたりしちゃう」「どんな景色が観られるのか、とても惹きつけられた」「気になる要素が多すぎる!」というコメントもいただきました。1ページ1ページに仕掛けが詰め込まれ、愉快なおもちゃ箱のようなチラシ。観劇前から驚き、クスっと笑い、舞台に繋がる序章を見せてくれています。
デザイナー・ チャーハン・ラモーン さんよりコメント
第6位 ミュージカル
『アルジャーノンに花束を』
第6位に選ばれたのは、日本青年館ホールほかで上演されました、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』です。
こちらのチラシからキーワードを挙げるならば、「優しさ」と「誠実さ」でしょう。白とエメラルドグリーンを基調にしたデザインは、新緑が芽生え、成長していく柔らかな春を思わせます。箱に入った草花、モチーフとして使われているボタニカルテイストのイラストも爽やかな雰囲気です。「ぼくわ かしこく なりたい」という縦書きのキャッチコピーも、たどたどしくも純真なイメージを想起させますよね。
世界的に著名な小説を原作に、ミュージカルとしても日本で何度も上演されてきた本作。2006年の初演と2014年の再演でも主演を務めた、浦井健治さんが待望のカムバックとのことで、まっすぐにこちらを見つめるビジュアルからは物語に描かれた“大切なもの”が滲み出ているかのよう。真摯に積み重ねられてきた作品の歴史と、長い間深められてきた役の歴史が感じられます。
「アルジャーノンの儚さが淡い色合いで表現されていて、心にグッとくる」「言葉は必要のない、美しく印象的な一枚だった」「初演から17年が経っても、このピュアさを表現できるなんて……」というコメントもいただきました。
愛され続ける作品の無垢でイノセントなキャラクターを表すビジュアル。変わらない魅力を前面に押し出した1枚は、心にスッとダイレクトに響きます。
第7位 ワカバコーヒー
「おどらない、からだ」
第7位に選ばれたのは、高架下空き倉庫にて上演されました、ワカバコーヒー「おどらない、からだ」。こちらは舞踏の公演チラシです。
墨を溶いたかのようにグレーが混ざり合う混沌のなか、浮かぶのは不思議な塊。……いや人間の体です! 二人の男性が組み合うようにポーズをとっていますが、まるで木でできているようにも、石膏でできているようにも錯覚してしまいます。漂うような背景と、硬質な人体。非日常的な面白い表現です。
「人間ってこんな形にもなれるのか……」と、驚嘆しながらよく見てみると、実は足が5本に、手が6本。ただの二人の人間でもなかったんです!! あり得ないところから手足が出で、折れ曲がっているようで、なんだかナチュラルな感じもする。よくよく観察しないと分からない神秘的な何かが人の体にはあるのでしょう。血のような赤の差し色も、不可思議な人体への憧れを思わせますよね。
「身体表現の本質的なところを、シンプルに、的確に表現している」「身体と身体が絡み合い、新しい生命体のよう」「心を突き刺してくるような美しさがある」といったコメントも寄せられました。踊らないようで踊っているみたい。人のようで人ではなかった。自然界での矛盾を孕む人体に魅せられます。
ワカバコーヒー・若羽幸平 さんよりコメント
アートディレクター・腰山大雅 さんよりコメント
第8位 演劇企画集団Jr.5
第15回公演『明けない夜明け』
第8位に選ばれたのは、東京芸術劇場 シアターウエストにて上演されました、演劇企画集団Jr.5 第15回公演『明けない夜明け』です。
こちらのチラシは、ひと言でいうならば「意味深」。『明けない夜明け』のタイトルとともに表面で並ぶのは、「私はある日を境に加害者になり、被害者にもなってしまった――」というコピーに、白い洋服をきた3人の女性と、作業着の男性、懐中電灯を持った警察官。白い花。赤く染まった飲み物と、お皿に載った食べ物。警報機のランプ。これだけの要素が揃えば、まず間違いなく事件が起きているのでしょう。ドラマティックな物語を感じさせます……!
チラシ裏面の上部も、温かな家族写真と思われるなか、男性の顔にはガラスが割れるような亀裂が……。チラシの時点でおおまかなストーリーをわかったような気がするのに、物語の細部もだんだんと気になり、「一部始終に迫ってみたい!!」と思わせられますよね。
「モノトーンでシンプルなのに、受ける印象に奥行きがあった」「謎めいた匂わせで興味を引いた」「このチラシだけで物語が見えてくるように感じた」というコメントもいただきました。ネタバレ厳禁という方でもこれは唸ってしまうのではないでしょうか……!? 映像の予告編のように、琴線にぐぐっと触れてくる1枚です。
宣伝美術・大嶽典子 さん よりコメント
第9位 モヘ組『せいなる』
第9位は、浅草九劇にて上演されました、モヘ組『せいなる』です。
こちらのチラシは正方形。しかもA4と比べるとかなり小さいのですが、そう、CDジャケットのサイズです! 音楽を聴くにも、配信ダウンロードやストリーミング再生が広く一般的になった昨今。CDサイズに懐かしさを覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
幾何学的な曼荼羅の模様は、よく見ると「モヘ組」「せいなる」をはじめ、公演日程や劇場名、さまざまな漢字での「セイ」、へのへのもへじが組み込まれ、100%文字だらけ。ごちゃっとしたポップでキッチュなデザインは、“平成のかわいさ”とも言うべきで、こちらもチラシサイズと同じく今やちょっとふと懐かしんでしまう郷愁を感じます。
裏面も曼荼羅を思わせる、どこが正面か分からないデザイン。チラシをグルグル回しながら文字を読んでしまいます。「『せいなる』というタイトルに無限の解釈が与えられていた」「手に取るだけでワクワクする」「一目見た時からかわいいのに、なんじゃこれ?と思いました」といったコメントもいただきました。
さらに「面白いから写真を撮ろう」とスマホのカメラをかざすと、円中央のQRコードが読み込まれ、ついつい公式サイトへアクセスするポップアップを押したくなってしまうのです。通常、QRコードは端っこに配置されていることが多いものですが、このチラシはド真ん中。しかも角には別のQRコードが2つもあるのに、真ん中の圧倒的な主張!! この仕掛けはなかなか見られないのではないでしょうか。曼荼羅デザインによるミラクルにあっぱれです!
デザイナー・よシまるシン さんよりコメント(チラシ表面)
役者/宣伝美術・酒井まりあ さんよりコメント(チラシ裏面)
第10位 タカハ劇団『おわたり』
ラストを飾る第10位は、新宿シアタートップスにて上演されました、タカハ劇団『おわたり』です。
「薄暗くてちょっと不気味だけれど、出演者が並んだ普通のチラシじゃん」と思ったアナタ!! もう一度よく見てください。実は普通じゃないです。おわかりいただけましたか……?
口元に手みたいなのが伸びてる! 腕が伸びてる! お腹消えてる! まさかの怪奇現象3連発。夏休みの風物詩 “土着ホラー”のお芝居です。『おわたり』という、とある集落の祭をテーマにした作品ということで、いつもの日常だったのに、あれっと気づいた時にはゾゾゾーっと背中がひんやり冷たくなる、心霊写真の恐ろしさがチラシデザインにも落とし込まれています。
裏面ではキャスト写真が並びますが、どなたも眉が薄く、表情に生気がない、海から濡れてぼんやりと這い上がってきたような写りです。宣伝美術というと、たとえホラーであってもパンチを効かせるアプローチが多いなか、引き算の表現は「日本の怖い話」特有とも……。夏を目の前に、7月の上演を楽しみにチラシを受け取った方も多いのではないでしょうか?
「まさにホラーって感じで大好き」「細かいところをじっと見たくなる」「観劇後も普通のチラシだと思っていて、あとから気付いてゾワッとした」というコメントもいただきました。
最後にもう一つ怖い話を。チラシ表面では、もう一人誰かの手が見えるって気が付きましたか?
デザイナー・羽尾万里子 さんよりコメント
以上、10位までにランクインしたチラシ10点をご紹介いたしました! 今回4度目の開催となった「おちらしさんアワード」。今年は一次投票を経てノミネートチラシを決定いたしましたが、自由記述式にも関わらず幅広い公演のお名前を挙げていただきました。その中から選ばれたということで、決選投票では主催団体の皆さまの盛り上げも例年以上に本当に大きく、公演前も公演後もチラシというアイテムのパワーが持続する強みを改めて感じています。
一推しのチラシへ投票やコメントを寄せてくださった観客の皆さま、一緒におちらしさんアワードを盛り上げ、写真・コメントの掲載にもご協力くださった公演団体の皆さま、本当にありがとうございました!!
さて、一次投票を経て選出された、舞台版のノミネートチラシは全49点。 こちらでお名前すべてをご紹介します!
おちらしさんアワード2023~舞台版~
全ノミネートチラシご紹介
以上をもちまして、「おちらしさんアワード2023~舞台版~」の結果発表といたします。最後までお読みいただきありがとうございました! 美術版の「おちらしさんアワード2023」結果発表も、あわせてお楽しみください!!
▽これまでのおちらしさんアワード結果記事はこちら▽
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