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誰もが自由に作品を選び、当たり前に観劇を楽しめるように。|舞台ナビLAMPの「舞台芸術鑑賞サポート講座」

こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです! いつもおちらしさん、おちらしさんWEBをご覧いただきありがとうございます。

突然ですが、日本には障がいを持っている方が、何人いらっしゃるかをご存知ですか?

答えは、936.6万人。人口比にすると100人に7人が何らかの障がいを持っている割合になります。「障がい者手帳はないけれど、日常生活の一部が人に比べて難しい」という方を含めると、さらにその割合は増えるでしょう。

そういった方々も観劇を楽しめることが当たり前になってほしい。この願いを実現しようと活動されているのが、舞台ナビLAMP(NPO法人シニア演劇ネットワーク)です。

舞台ナビLAMPが開催する「舞台芸術鑑賞サポート講座」にお伺いし、入門編の講座を受講してきました! 今回はその模様をお届けします。

「演劇なんか観る人間じゃないと諦めていた」

「舞台芸術鑑賞サポート講座」のうち、個人で受講できる企画は全5種類に分かれています。いずれも、舞台芸術を鑑賞するうえでハンディキャップをお持ちの方をサポートするための方法を学んでいく内容です。

▼詳しい講座の内容についてはこちらでご紹介しています▼

先日、7月6日に開催されたのは第一弾となる入門編。障がい者福祉の歴史や社会的な背景を知るとともに、障がいを持った当事者の方やスタッフとして鑑賞サポートに取り組まれている方をお迎えし、お話をお聞きしました。

その中で最も衝撃を受けたのは、やはり生の声です。ゲストとしていらっしゃった富岡律子さんは、視覚障がいを持っていらっしゃいます。28歳ごろから目が見えにくくなり、全盲ではないものの、現在の視力はぼんやり明かりが感じられる程度。ガイドヘルパーの方と一緒だと外出できるような状況だそうです。

富岡さんはとてもユーモラスな方で、「私は消極的なタイプなので……」と仰りながらもカラッと朗らかなお話が印象的でした!

今年4月にたまたま駅で手助けをしてくださったのが文学座の演出家・松本祐子さんだったことをきっかけに、松本さんが演出を担当されていたPカンパニー『5月35日』を観劇。そこからこれまでにTHEATRE MOMENTS、かんじゅく座と、視覚障がい者向けの鑑賞サポートが用意された3つの公演をご覧になられたそうです。

イヤフォンガイドを使用しての観劇について、「見えなくなってからも演劇を楽しめるとは思っていなかった」「演劇なんか観る人間じゃないと、諦めていたので嬉しかった」とお話しされる富岡さん。一方で「自分も障がい者になるとは思っていませんでしたから……」という言葉も強く印象に残りました。

鑑賞サポートは“みんなでつくるみんなのもの”

冒頭でご紹介した通り、日本で暮らす障がい者は936.6万人。そのうち65歳以上の高齢者は72.6%で、多くの割合を占めています。つまり現在は不自由なく観劇を楽しむことができていても、歳を重ねるにつれ、舞台を観ることが難しくなってしまう可能性も大きいのです。

―― 誰もが自由に作品を選び、当たり前に観劇を楽しめるように。

その想いで導入されている鑑賞サポートは、さまざまな障がいやハンディキャップを想定し多岐に渡ります。今回の講座では具体的なサポートの内容や目的について、舞台ナビLAMPの代表・鯨エマさんよりご紹介がありました。

例えば、聴覚障がいをお持ちの方との“筆談”。公演当日にはスムーズにお話ができるよう、事前の練習や準備は必ずしておいたほうが良いそうです。「書くだけならと他のサポートより簡単そう!」と思われるかもしれませんが、これが意外と難しいとのこと……。(今後の講座では、筆談を練習する企画もあります!!)

他にも、障がい者の方が公演を知る~観劇するまでのサポートについて、一部ではありますがご紹介します。

1. 公演についての情報提供
●メールやSNS、ホームページでの案内
(視覚障がいがある場合は、スマホの読み上げ機能を使われている方が多い)
●点字のダイレクトメール・新聞の掲載・FAX
(聴覚障がい者の方向け)
●チラシなどでのアイコンを使った案内
(どういったサポートがあるのか見つけやすい)

2. チケットの予約受付
●電話、メール、FAXなど、できるだけ2種類以上の手段を用意しておく
●介助者・介助犬の有無、来場方法を確認しておく
(お迎えが必要か、駐車場が必要か等)
●タイムテーブルはしっかり伝える
(余裕を持っておく、事前解説などにも間に合うように設定)

3. 会場でのサポート
●鑑賞サポートの導入について、スタッフ全員で共有しておく
(たらいまわしは不安を招いてしまう)
●お手洗いの誘導ができるよう、男性・女性ともにスタッフを配置する
●館内の表示や掲示物を分かりやすく工夫する
(白地に黒の文字が一番見えやすい)

4. 作品の理解を手助けする
●当日までに、文章や音声での作品解説・台本などをお送りする
●当日の開演前に、作品や演出のポイントについて事前説明を行う
●上演中の音声ガイド、字幕表示、手話通訳
●終演後に個別で、もしくは交流会などでフォローする

このような鑑賞サポートを広めていくとともに、劇場に足を運ぶ人全員に知らせること、知ってもらうことも大事であると鯨さんは言います。その言葉をお聞きし、私たち観客も鑑賞サポートが当たり前にある環境ををつくっていく一員としての責任があるのだなと実感しました。

講座後は、スタッフとしても活動できます!!

現在、鑑賞サポートはオペラシアターこんにゃく座、劇団青年座、Pカンパニー、劇団『横浜桜座』、演劇集団キャラメルボックスをはじめ、多数の劇団・公演団体で導入されています。

講座ではスタッフとして、鑑賞サポートに取り組まれている劇団青年座・藤井佳代子さんのお話もお伺いしました。

藤井さんは2020年に「舞台芸術鑑賞サポート講座」を受講。現在では俳優としてだけでなく、音声ガイドや事前解説を行う「ガイドナレーター」としても公演に関わっていらっしゃいます

本番前ギリギリの準備になるので大変だけれど、ガイドとなる文章を書いたり、自分が演出家ならどこを観てほしいか考えたりするのがとっても楽しい。そう、笑顔で仰られているのが印象的でした!!

「舞台芸術鑑賞サポート講座」を受講後、舞台ナビLAMPのスタッフとして活躍される方も多いそうです。もちろん私たちも藤井さんのように活動していくことができます!

「鑑賞サポートについて知りたい!」、「自分もスタッフとして関わってみたい!」とご興味のある方は、まずは一度講座に参加されてみてはいかがでしょうか? 「舞台芸術鑑賞サポート講座」を通して、自分だけでなく様々な状況に置かれた方の視点からも舞台芸術に触れることができ、観劇の魅力をもっと深く知ることができる。そんな新しい一歩だと感じました。


講座についての詳細・お申し込みは、こちらからどうぞ↓↓

舞台ナビLAMP(NPO法人シニア演劇ネットワーク)
お申し込みフォームはこちら
lamp@s-engeki.net





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