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【6/24更新】団地に住まう人々を描く、一話完結の連続ドラマ!新国立劇場『デカローグ』をどこよりも簡単に解説!

新国立劇場で4月13日(土)より上演される、舞台『デカローグ』。ポーランドの名作映画を原作に、7月まで約4か月間・全10篇を上演する壮大なプロジェクトです。

その大きなスケールに注目が集まっていますが、実は一つの団地に住む様々な人々を1話ずつピックアップして描いた、とっても身近な現代ドラマだとご存じでしたか!?

チラシでは、『デカローグ』に登場する団室の各部屋がモチーフとして描かれています!

おちらしさんWEBでは、先日行われた記者発表に潜入。『デカローグ』というプロジェクトをまるっと楽しむポイントや、各話のあらすじやキャラクターをわかりやすく簡単にご紹介します!!


『デカローグ』は“一話完結の連続ドラマ“!

新国立劇場が始めて舞台化する『デカローグ』は、ポーランド出身の世界的映画監督、クシシュトフ・キェシロフスキによるテレビ映画が原作です。その評判の高さから世界でも劇場公開され、多くの称賛の声が送られました。

物語は旧約聖書の十戒をモチーフに、1980年代のポーランド・ワルシャワに建つとある団地で暮らす人々を十遍にわたり描いています。約1時間のそれぞれの物語は独立しながらも緩やかにリンクし密かな繋がりを持っているため、“一話完結の連続ドラマ“のように楽しめる点が特徴です!

物語のモチーフとなる「十戒」とは、旧約聖書の「出エジプト記」「申命記」に描かれる神様から授けられた戒律です。難しそうにも聞こえますが、3000年以上前から変わらない、人間を取り巻く10のテーマが示されています。

1. あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない
2. あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない
3. 安息日を心に留め、これを聖別とせよ
4. あなたの父母を敬え
5. 殺してはならない
6. 姦淫してはならない
7. 盗んではならない
8. 隣人について、偽証してはならない
9. あなたの隣人の妻を欲してはならない
10. 隣人のものを一切欲しがってはならない

日本聖書協会『聖書』より

これらのテーマが物語になる『デカローグ』では、どこにでもいる“私たちの隣人”であり、”現代人の象徴”とも言えるキャラクターを通して、人間が存在すること、「そこに居ることへの根源的な肯定」が描かれています。

誰の人生でも探求する価値があり、秘密と夢があると私は信じているんだ。
                   ――クシシュトフ・キェロンスキ

『デカローグ』公演チラシより


『デカローグ』に登場する、“あなたの隣にも住んでいるかもしれない誰か”

それでは、大きな団地のそれぞれの部屋には、どのような人々が暮らしているのでしょうか? 各話のキャラクターが他のエピソードにも登場するところも、集合住宅を描く『デカローグ』ならではの面白さ! 全エピソードを通して、天使が人々の営みを見守ります。

デカローグ1. ある運命に関する物語
<あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない>

とある家族にスポットを当てた、デカローグ1。大学教授12歳の息子、目に見えない魂や神様を信じる教授の姉の家族を描きます。

〈原作テレビ映画を鑑賞した、おちらしさんスタッフのコメント〉
教授の息子である男の子のかわいらしさと、賢さ、父や叔母との絆がとても印象的でした。クリスマスプレゼントのスケート靴を使って遊ぶために、まだ普及し始めた頃であろうコンピューターを使って池がどのくらい凍っているのか計算をしますが、家族の運命も思いも寄らぬに方向に動き……。

デカローグ2. ある選択に関する物語
<あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない>

大きな選択を前にした葛藤を描く、デカローグ2。重い病気を患う夫の余命を知りたいと、医長のもとを訪ねた女性。なんと彼女は、愛人の子どもを身ごもっていたのです。

〈原作テレビ映画を鑑賞した、おちらしさんスタッフのコメント〉
大切な人の命、これから生まれてくる命、自身の命。生死の選択に直面した時、人はどのような感情を抱え、考えるのか。自分事として、とてもリアルに考えられる内容でした。“自分ではどうしようもできないこと”と、“選択ができること”の違いにも、ハッとさせられます。

デカローグ3. あるクリスマス・イヴに関する物語
<安息日を心に留め、これを聖別とせよ>

あるクリスマスイヴを描く、デカローグ3。過去に不倫関係にあった男女が再会し、行方不明となった女性の夫を探しに行きます。

〈原作テレビ映画を鑑賞した、おちらしさんスタッフのコメント〉
大人になっても誰かにすがりたくなったり、ときには迷惑をかけてでも気を惹きたくなったり、みっともない姿を見せてしまうことってありませんか!? 体面とは違う二人の真意や駆け引きに、ミステリー作品ようなスリルも感じました。

デカローグ4. ある父と娘に関する物語
<あなたの父母を敬え>

生まれてすぐに母を亡くした女子大学生と、その父親の2人家族を描くデカローグ4。友達のように仲睦まじい暮らしをするなか、娘は父親の筆跡で「死後開封のこと」と書かれた一通の手紙を見つけます。

〈原作テレビ映画を鑑賞した、おちらしさんスタッフのコメント〉
父と娘として生きてきたこれまでの歴史が、一瞬にして崩されていく場面に苦しくなりつつも、その歴史が簡単に壊れるわけではなく……。家族・親子の関係性というのは、ただ一緒に過ごしてきただけのもの、ではないと感じさせてくれました。

デカローグ5. ある殺人に関する物語
<殺してはならない>

殺人から物語が始まる、デカローグ5。タクシー運転手を殺害し、死刑判決を受けた青年の弁護を担当したのは、死刑制度に反対する新米弁護士でした。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
新米弁護士と、自らが担当した若い囚人との死刑直前のやりとり。生死の境目にいる極限状態でどのような会話が繰り広げられるのか、客席で緊張しながら固唾を飲んで見守りました。「殺人」と「死刑」、「殺してはならない」という十戒の言葉の意味を、全身で受け止めるような1時間でした。

デカローグ6. ある愛に関する物語
<姦淫してはならない>

見返りを求めない愛を描く、デカローグ6。向かいに住む年上の魅力的な女性の生活を、日々望遠鏡で覗き見ている郵便局員の青年。彼はある日彼女と鉢合せたことから、自分に何を求めてるのかと問われます。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
覗く男と、覗かれる女のゆがんだロマンスはどこへ向かうのか!? 純粋さや好奇心は、ときに誰かを傷つけたり惹きつけたり、他人をめちゃくちゃにして元には戻れなくなってしまう。恋に浮かれるコメディチックな場面も面白い見所です!

デカローグ7. ある告白に関する物語
<盗んではならない>

母親の真実を描く、デカローグ7。学校長である女性は、当時16歳の生徒だった自身の娘と、国語教師との間に生まれた子どもを、密かに自分の子供として育てていました。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
娘と親子であるという真実が、実の母親によって盗まれてしまった若い女性。人が人から盗めるのは実体のあるものだけなのか? 本当に取り返したいもの何なのか? 見えないところから手探りで真実を探すかのような物語でした。

デカローグ8. ある過去に関する物語
<隣人について、偽証してはならない>

数十年前の辛く重い過去と向き合う、デカローグ8。倫理学を教える大学教授の元を訪れた聴講生の質問から、二人に関わる隠された過去が暴かれていきます。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
何十年が経とうとも忘れられない、人生の分岐点はどうして訪れたのか……。後悔や疑念を背負いながらも、真摯に過去と向き合う登場人物たちの生き様にグッと胸を打たれます。重く伸し掛かっていたその石をどかしてくれるのは、誰かとの対話なのかもしれません。

デカローグ9. ある孤独に関する物語
<あなたの隣人の妻を欲してはならない>

人間の拭い去れない孤独を描く、デカローグ9。性的不能と診断された外科医の男性は、若い妻と話し合い、そのことを受け入れられますが、実は妻には学生の不倫相手がいました。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
妻の浮気相手は、大学生の男……!? なかなか他人には相談しづらい「孤独」が、小気味よくユーモラスに描かれ、観終わったころにはキャラクターたちが愛おしくってたまりません! ここまでのデカローグとは一味も二味も違う異色作に感じました。

デカローグ10. ある希望に関する物語
<隣人のものを一切欲しがってはならない>

父親が亡くなったことをきっかけに再会した兄弟を描く、デカローグ10。が残した切手のコレクションに莫大な資産価値があると判明したことをきっかけに、思わぬ事件に巻き込まれていきます。

〈公演を観劇した、おちらしさんスタッフのコメント〉
父にも果たせなかった切手コレクションの完成のために、兄と弟が仲良く猛奮闘!! 素人から見ればただの切手も、実は豪邸が立ってしまう価値ある代物だったならば誰だって舞い上がってしまうでしょう(笑)。たっぷり盛り上がったあとにはどんな結末が待っているのか、ジェットコースターに乗っているかの如く楽しめました!


どのエピソードも、ドラマチックながら私たちの日常のそばにも「ありそう」な話ばかり……。本作の演出を務める上村聡史さんは、作中のキャラクターについて次のように語っています。

作中では、愛を信じて常識外の行動に出てしまう人がいたり、逆に憎しみから常識外の行動に出てしまう人がいたり、十戒というものが必要なのではないかと思える登場人物たちが、自らの感性と実直に向き合っている葛藤が繊細に描かれています。表層的に面白いシーンではなく、感性の輝きや人間の内面が舞台で見せられるってちょっと贅沢じゃないかなと思うところがあって。いかにパフォーマーの内面を表だって見せられるかというのは、今、社会の中でも芸術の在りようって考えたときに、すごく魅力的なパフォーマンス、演技、演出だと思うので、そのあたりも楽しみどころです。

上村聡史さん(『デカローグ』演出・新国立劇場 演劇 次期芸術監督予定者)

「十戒というものが必要なのではないかと思える登場人物」は、一体どんな行動をするのでしょうか!?

上村さんと交互に演出を務めるもうお一方は、新国立劇場の芸術監督でもある、小川絵梨子さん。小川さんは、そんな登場人物たちをどのように見て、『デカローグ』をどのような作品だと考えているのでしょうか?

人間が不完全なものであるという前提に対して、断罪的ではなく、「そういうものなのだ」というところを含めて、肯定的な目を持っている作品です。人間が選択をして失敗してしまったときに、その選択が良かった悪かったという話を描いているのではなくて、失敗してしまった人の葛藤だったり、自分を責めたり、道を探したりという、人間の存在自体に対する、ある種の根源的な肯定というのはすごく大事な要素だと思っています。日常では実は忘れがちになってしまうこともありますが、その人がそこに居てくれることに対する根源的な肯定感というのは持っていなくてはならないなと。相手がそこに居るということ、人がそこに居るということ、家庭があるということ、友達が居るということ、コミュニティがあるということ、自分以外の他者がそこに居ること、そして自分がここに居るということ。「居るということ」や「生きているということ」への根源的な肯定に改めて出会って、これからの社会をより良くしていくための、改めて背中を押してくれるような作品になるのではないかなと思っています。

小川絵梨子さん(『デカローグ』演出・新国立劇場 演劇 芸術監督)

さらに小川さんは、本作全体の仕組みについても語ります。

一枚一枚の素晴らしい絵を重ねていくと、エピソード10までいったときに、その重ねた絵が実はもう一個壮大な絵になっている仕掛けがあります。

小川絵梨子さん(『デカローグ』演出・新国立劇場 演劇 芸術監督)

彼らひとりひとりの人生を見つめる視点だけでなく、すべての人々の暮らしを広く見晴らす大きな視野は、人間の手の届かない神様や宇宙の存在を感じさせるようです。10つのエピソードの先にある景色を、観てみたくなってきませんか……!?

新国立劇場が4か月にわたって挑むプロジェクト『デカローグ』の上演は、来月4月13日(土)よりスタート。まずは気になる1作から、団地に住まう人々が生きる人生の一幕を覗いてみてください。

取材/田中莉紗(おちらしさんスタッフ)
文・構成/清水美里(おちらしさんスタッフ)


新国立劇場 演劇 2023/2024シーズン『デカローグ 1~10』
会場:新国立劇場 小劇場

『デカローグ1~4』プログラムA、B交互上演
2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)
■プログラムA デカローグ1&3
デカローグ1 「ある運命に関する物語」 演出:小川絵梨子
出演:ノゾエ征爾、高橋惠子 亀田佳明 ほか
デカローグ3 「あるクリスマス・イヴに関する物語」 演出:小川絵梨子
出演:千葉哲也、小島聖 亀田佳明 ほか
■プログラムB デカローグ2&4
デカローグ2 「ある選択に関する物語」 演出:上村聡史
出演:前田亜季、益岡徹 亀田佳明 ほか
デカローグ4 「ある父と娘に関する物語」 演出:上村聡史
出演:近藤芳正、夏子 亀田佳明 ほか

『デカローグ5・6』プログラムC
2024年5月18日(土)~6月2日(日)
デカローグ5 「ある殺人に関する物語」 演出:小川絵梨子
出演:福崎那由他、渋谷謙人、寺十吾 亀田佳明 ほか
デカローグ6 「ある愛に関する物語」 演出:上村聡史
出演:仙名彩世、田中亨 亀田佳明 ほか

『デカローグ7~10』プログラムD、E交互上演
2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)
■プログラムD デカローグ7&8
デカローグ7 「ある告白に関する物語」 演出:上村聡史
出演:吉田美月喜、章平、津田真澄 亀田佳明 ほか
デカローグ8 「ある過去に関する物語」 演出:上村聡史
出演:高田聖子、岡本玲、大滝寛 亀田佳明 ほか
■プログラムE デカローグ9&10
デカローグ9 「ある孤独に関する物語」 演出:小川絵梨子
出演:伊達暁、万里紗、宮崎秋人 亀田佳明 ほか
デカローグ10 「ある希望に関する物語」 演出:小川絵梨子
出演:竪山隼太、石母田史朗 亀田佳明 ほか


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