脳神経内科医 カテ

脳神経内科専門医として勤務しています。パーキンソン病、認知症、脳卒中などの疾患について…

脳神経内科医 カテ

脳神経内科専門医として勤務しています。パーキンソン病、認知症、脳卒中などの疾患について、脳血管カテーテルについてや、日々の論文で勉強したことなどを記録していこうと思います。よろしくお願いします。

最近の記事

抗IL-6受容体抗体使用中のプロカルシトニン測定

抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ、サトラリズマブ)は、視神経脊髄炎や血管炎の治療として現在使用されています。 IL-6の効果を阻害するため、薬剤使用中は感染症を発症しても発熱しない、採血で白血球、CRPや赤沈などの炎症反応が上昇ないことで知られています。そのため、検査をしても異常が検知できず、気がついたら重篤な感染症になっているというリスクがあります。特にこういった薬剤を使用しているときはステロイド等免疫抑制剤も併用していることが多いため、十分注意が必要です。 これまで、プ

    • 脳卒中後に不随意運動がでることがある

      脳梗塞発症直後より片側性に不随意運動 を呈した患者さんを経験しました。当初は上肢をなげだすような動きがありヘミバリズムと思える動きでしたが、遠位優位に上肢を中心とした動きで、軽度捻転する動きもあり、舞踏アテトーゼと考えました。1週間ほどで症状はほぼ改善し、意識した際や少し動いたときにわずかに出現する程度で日常生活は問題なくすごせるようになりました。 治療として血栓回収療法を施行した患者さんで、左島周囲にDWIで高信号が残存した方です。驚いたことに、基底核領域には梗塞像は認めま

      • フィコンパはミオクローヌスに奏功する可能性がある

        症候性にミオクローヌスを呈している患者さんで、フィコンパ (ペランパネル: perampanel, PER)が有効であった経験をしました。もちろんフィコンパの適応は一般には、部分発作などのてんかん発作が適応ですので、十分留意するする必要があります。 どの程度ミオクローヌスに期待ができるのか、Epileptic Disorders 誌に報告がありました。 260人の患者を対象とした、27件のstudy のシステマティックレビューで、 内訳は7-71歳(平均28歳)で、113人

        • 糖尿病性神経障害で頚髄神経根と神経叢に障害がでることがある:diabetic cervical radiculoplexus neuropathy の臨床的特徴

          はじめに 糖尿病の患者さんでみられるDiabetic lumbosarcal radiculoplexus neuropathy(DLRPN)は、虚血性障害と微小な血管炎によって発症する、亜急性で疼痛を伴う非対称性の下肢末梢神経障害としてしられています。頚髄でも同様に糖尿病性にradiculoplexus neuropathy を発症することが指摘されており、Diabetic cervical radiculoplexus neuropathy(DCRPN)といわれています。

        抗IL-6受容体抗体使用中のプロカルシトニン測定

          視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の生物学的製剤について

          はじめに 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の再発予防はこれまでステロイドと免疫抑制剤内服が主流でしたが、CD19細胞除去療法、IL-6Rシグナル阻害、補体C5開裂阻害といった生物学的製剤が使用できるようになりました。一覧にして使用方法について少しずつまとめて、断片化した知識をまとめようと思いました。 CD19陽性B細胞除去療法 他の薬剤と比較して半年に一回の点滴というのは頻回の通院が難しい方にも対応可能と思いました。長期的にはIgGの低下があるようで、また感染にも

          視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の生物学的製剤について

          髄膜種の臨床症状発現は腫瘍体積と最大径に注目する

          髄膜種は臨床上よくみる腫瘍性病変のひとつで、MRI撮影して偶然みつかることも多い腫瘍の一つと思います。一般的には症状がない場合はMRI を定期的に撮影し、サイズ増大の有無をチェックしていくことが多いと思います。 しかし、脳実質が圧排されることでてんかん発作を発症したり、運動麻痺が出現したりすることがあり、どの時点で症候性となるかを判断することはとても重要です。 髄膜種発生の多い場所として、円蓋部、傍矢状洞、大脳鎌があります。 そこで発生した髄膜種について症状発現を目安となる

          髄膜種の臨床症状発現は腫瘍体積と最大径に注目する

          脳血管造影検査で使用するカテーテル

          脳神経内科医が脳血管造影検査を学び、経験していく機会は少ないのかなと思っています。脳血管造影検査ばかりをするわけにもいかないのですが、一方で脳梗塞や頸動脈狭窄などで脳血管障害の精査や治療の判断をすることが多いのも事実です。 脳血管造影検査をしている脳神経内科医は少ないですが、脳神経内科医が脳血管造影検査の技術を習得していくことでより深く脳血管に必要な知識と経験を得ることができ、患者さんへのベストな治療につなげることができると思っています。 脳神経内科医が初めてする脳血管造影

          脳血管造影検査で使用するカテーテル

          COVID-19で出現する脳神経障害とは?

          はじめに COVID-19感染が再び猛威をふるっているように思います。外は暑いですが、マスク対策と手洗いはしっかりするようにしています。 最近、COVID-19感染後に複視が出現し来院された患者さんの診察をしました。数週の経過で回復しましたが、COVID-19関連脳神経障害について調べました。 方法は、PubmedとGoogle scholar で2021年1月までで検索し、36の文献で56人のCOVID関連脳神経障害を抽出し、まとめていました。 結果としては、脳神経障害

          COVID-19で出現する脳神経障害とは?

          脳血管造影検査 カテーテルのFrとinchとmmの関係

          脳神経内科医として脳血管造影検査、いわゆるカテーテル検査をするときにFrやinchなど普段使わない単位がでてきて、最初の頃に混乱してました。 脳神経内科医が脳血管カテーテルを習得していく上で、つまづくこと少しずつまとめていけたらと思っています。参考程度でみていただけたらと思います。 シースとガイディングのFrの表記の違い シースは内径表記で、ガイディングは外径表記です。 そのため、シースで4Frというと内腔が4Frという意味で、4Frの太さの機材が通過する太さです。 一方、

          脳血管造影検査 カテーテルのFrとinchとmmの関係

          どんな時に遺伝性脳小血管病を疑うか?日本人のデータで考える

          50歳以下の若年で脳梗塞を発症する方がいます。プロテインS活性、プロテインC活性や抗リン脂質抗体症候群など通常の採血で測定できる項目を調べても異常がなく、また脳血管病の家族歴もないときに遺伝性脳小血管病をいつ検討すべきか、どの臨床情報に注目すべきか迷うことがあります。 今回、新潟大学が発表した論文(Uemura M, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2023;94:74–81)では、日本人の重症脳小血管病の遺伝子異常について、その頻度

          どんな時に遺伝性脳小血管病を疑うか?日本人のデータで考える

          抗MOG抗体測定は髄液で測定するのがよいか?血清がよいかについて

          抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)は、視神経炎(ON)、脊髄炎(MY)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、大脳皮質性脳炎(CE)など多彩な表現型が指摘されています。こういったMOGADが疑わしい患者さんに対して、抗MOG抗体を測定する際に血清での測定がよいか、髄液での測定がよいか迷うことがありました。 今回、皮質性脳炎(CE)を発症した患者さんの診察をするにあたり、論文を調べていたところ、東北大学が検体結果と臨床病型についてまとめた論文がBrain に発表されていました(Bra

          抗MOG抗体測定は髄液で測定するのがよいか?血清がよいかについて

          瞳孔が緊張する?Adie症候群

          はじめに 20歳台の方でまぶしさを感じて外来に来られました。瞳孔不同があり、脳MRIでは異常はなく、症状は次第に改善しました。眼科での検査と経過からAdie 症候群と診断しました。 Adie症候群についてneurologyにもteaching neuroimages がありましたので、まとめました。瞳孔不同の鑑別として重要で、まれな症候でしっているかどうかで決まる重要な徴候と思いました。 論文 Teaching Video NeuroImages: Acute Adie s

          瞳孔が緊張する?Adie症候群

          妊娠と頭痛

          はじめに 片頭痛がある方で、妊娠されて外来を受診され、片頭痛が妊娠中にでたらどうしたらよいかと相談を受けました。 一般に妊娠期間においては、第2三半期までに片頭痛は改善していくことが多いといわれていますが、妊娠と頭痛について論文を読んだので記載します。 気を付けておくこととして、この論文は救急外来を受診された頭痛の方を対象としており重症な例を集めた論文であり、通常の頭痛の方の集団とは異なることに注意が必要と思います。 論文 Acute headache diagnosis

          認知症と睡眠 -不眠症薬ベルソムラが髄液中アミロイドβやタウリン酸化濃度を低下させる-

          はじめに 質の低い睡眠が、アルツハイマー型認知症患者の脳内アミロイドβやリン酸化タウの増加に関連していることは以前より知られていました。今回不眠の薬でよく使用するスボレキサント(Suvorexant, 商品名:ベルソムラ)が、人の髄液中でアミロイドβとリン酸化したタウ濃度を減少させたという論文があったので読んでみました。 参考になれば幸いです。 論文 Suvorexant Acutely Decreases Tau Phosphorylation and Aβ in the

          認知症と睡眠 -不眠症薬ベルソムラが髄液中アミロイドβやタウリン酸化濃度を低下させる-

          造影剤使用後に目がみえない - 造影剤脳症と皮質盲

          はじめに 造影剤による後方循環系動脈瘤に対してコイル塞栓術が脳神経外科で施行された患者さんで、その検査の日の夜に両目がみえないという症状でコンサルトと受けました。診察、脳MRI などの検査をすぐに行い、結果として造影剤脳症による皮質盲で、翌日には改善しました。 造影剤脳症、また皮質盲について文献を読みました。参考になれば幸いです 論文 Incidence and Risk Factors for Acute Transient Contrast‐Induced Neurol

          造影剤使用後に目がみえない - 造影剤脳症と皮質盲

          DOAC内服中の脳梗塞発症例にDOAC switch は意味があるのか

          はじめに非弁膜症性心房細動の患者さんで脳梗塞予防目的にDOACを内服されている方が増えています。その患者さんが心原性脳梗塞を発症した際に、その後の予防薬について、元のDOACをそのまま継続、違うDOACの種類に変更、もしくはワーファリンに変更した場合に、その後の脳梗塞発症率がどうなるかを検討している論文です。また抗血小板薬追加の意義についても言及されていました。 論文 Association of Alternative Anticoagulation Strategies

          DOAC内服中の脳梗塞発症例にDOAC switch は意味があるのか