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DOAC内服中の脳梗塞発症例にDOAC switch は意味があるのか

はじめに

非弁膜症性心房細動の患者さんで脳梗塞予防目的にDOACを内服されている方が増えています。その患者さんが心原性脳梗塞を発症した際に、その後の予防薬について、元のDOACをそのまま継続、違うDOACの種類に変更、もしくはワーファリンに変更した場合に、その後の脳梗塞発症率がどうなるかを検討している論文です。また抗血小板薬追加の意義についても言及されていました。

論文


Association of Alternative Anticoagulation Strategies and Outcomes in Patients With Ischemic Stroke While Taking a Direct Oral Anticoagulant
Neurology. 2023 Jul 25;101(4):e358-e369


要旨


Background and Objectives
DOAC内服中に脳梗塞を発症した患者さんへのDOACの選択について検討し、また再発する脳梗塞患者のリスクについて検討した
Methods
Retrospective cohort study. Hong Kong. 2015年1月1日から2020年12月31日まで。初発の脳梗塞を発症した非弁膜症性心房細動のあるDOAC内服している患者に対して、再発予防としてDOACからwarfarin に変えた群、別のDOACに変更した群(DOAC switch)、もともとのDOACを継続した群(DOAC same)で以下のoutcome を比較した。また、DOAC same 群の中で、抗血小板薬追加した群と追加していない群で同様に以下のoutcomeを比較した。
Primary outcome: 脳梗塞の再発
Secondary outcome: 頭蓋内出血、急性心筋梗塞、死亡
Result
6年間の間で、非弁膜症性心房細動を有するDOAC内服している患者45946人のうち、2908人が初回の脳梗塞を発症した。その中で、16.5か月の平均観察期間中に315人(13.4%)が新たに脳梗塞を発症した。
Warfarin switch 群とDOAC switch 群は、DOAC same 群よりも脳梗塞再発リスクが増加した。
DOAC same 群に抗血小板薬を追加した群は、抗血小板薬を追加していないDOAC same 群と比較して脳梗塞発症リスク減少を示さなかった。
糖尿病、Cytochrome P450/P-glycoprotein(CYP/P-gp) 修飾薬、大血管アテローム性変化があると脳梗塞再発リスクとなる
Discussion
DOAC内服中に脳梗塞を発症した非弁膜症性発作性心房細動の患者においては、DOACをそのまま継続することが、DOACをswitch したり、warfarin に変更したりするよりは脳梗塞再発を予防する効果が高い


論文を読んでみて


DOAC内服中の脳梗塞再発症例に対して、次の予防薬の選択に困ることが多いです。実際、これまでDOACをしっかり内服できていなかった可能性もありますし、心原性以外の癌などが原因である可能性もあります。
次の脳梗塞は何としても起こさないという気持ちで一人一人のリスクを精査し、治療を行うことが大事だなと思います。
参考になれば嬉しいです。

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