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視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の生物学的製剤について

はじめに
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の再発予防はこれまでステロイドと免疫抑制剤内服が主流でしたが、CD19細胞除去療法、IL-6Rシグナル阻害、補体C5開裂阻害といった生物学的製剤が使用できるようになりました。一覧にして使用方法について少しずつまとめて、断片化した知識をまとめようと思いました。

CD19陽性B細胞除去療法
他の薬剤と比較して半年に一回の点滴というのは頻回の通院が難しい方にも対応可能と思いました。長期的にはIgGの低下があるようで、また感染にも注意が必要と思います。またNMOSDはSLEなど各種自己抗体を合併することがあり、NMOSD以外の疾患活動性がある場合にもB細胞を除去することで抑制効果が期待できるかもしれないなと思いました。注射時には抗ヒスタミン剤やステロイドの併用が必要です。

IL-6Rシグナル阻害剤
皮下注射製剤で投与が一瞬で終了することが魅力と思います。また自己注射ができることもよいと思います。そのくらい簡単で、実際、NMOSDの生物学的製剤としては一番使用されているのもわかります。
ただし、感染を発症した際に、発熱やCRPなどの炎症反応がはっきりとはしないために重症になってから発見されることもあるので注意が必要です。感染対策がしっかり継続できる方で、実際に尿路感染などの感染症を頻回におこしていないことや、途切れず通院ができる方で、NMOSD急性期治療後ステロイド内服を減量しながら発作リスクも減らす目的の方が対象となると思いました。また、脊髄障害後の神経障害性疼痛にも効果があることが言われていますので、そういった目的もふまえて検討ができそうです。

補体C5開裂阻害剤
治験の結果で100%再発なしというのが魅力だと思います。ただし、免疫状態が人によって違いがあること、その他の自己免疫併存疾患の影響や、再発しやすいcluster期である可能性など、一人一人の再発リスクは違うので再発抑制効果が最も強いと単純には言えないと思うのですが、次に絶対に小さな再発も起こせないといった状況では期待できる薬剤だと思います。もちろん実際に投与していても再発例はあります。また、他の薬剤と比較して、投与後比較的すぐに効果が期待できる点もよいと思います。
ごく一部の日本人では効果が期待できない方もいるようで、投与後補体の値を採血でチェックして補体低下を確認することが重要です。
また、一番のリスクは髄膜炎菌感染症と思います。重症化すると重篤な状態となる感染症であり、そのためにワクチンをあらかじめ接種しておくことが必要です。
NMOSDで急性期治療後、なぜか症状が進行する、もしくは改善が乏しい方に、比較的早い効果発現が期待できることや、病巣での補体による炎症抑制効果を期待して比較的早期から投与する方法もあるのかもしれません。

まとめ
膠原病科やリウマチ科の先生に比較すると脳神経内科医にとっては治療経験として手探りなところがあるかもしれませんが、今後生物学的製剤がもっと一般的な治療法になることは間違いありません。生物学的製剤を使用開始後いつ、どういった段階で終了できるのかといった明確な出口戦略がみつかっていないこと、また高額な治療薬であることなどまだまだ問題点もあるなと思いました。
患者さんにベストな治療法を提案できるよう、知識の整理と勉強を続けていきたいなと思います。

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