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抗MOG抗体測定は髄液で測定するのがよいか?血清がよいかについて

抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)は、視神経炎(ON)、脊髄炎(MY)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、大脳皮質性脳炎(CE)など多彩な表現型が指摘されています。こういったMOGADが疑わしい患者さんに対して、抗MOG抗体を測定する際に血清での測定がよいか、髄液での測定がよいか迷うことがありました
今回、皮質性脳炎(CE)を発症した患者さんの診察をするにあたり、論文を調べていたところ、東北大学が検体結果と臨床病型についてまとめた論文がBrain に発表されていました(Brain 2023: 146; 3938-3948)。とても参考になり勉強になったので記載したいと思います。


2015年8月から2018年1月までに日本全国から集められた髄液と血清検体で、急性期に脳と脊髄MRIを撮影し、臨床情報のある患者でMOGAD疑い405名について解析されていました。横断研究になります。
MOGAD疑い405例のうち、133例(33%)が血清もしくは髄液で陽性でした。
その内訳は、94例(23%)が血清と髄液ともに陽性(ADEM 36, CE 15, MY 8, NMOSD 9, ON 15, others 11)でした。

興味深いこととしては、
皮質性脳炎(CE)症例は、髄液でのみ陽性となる抗MOG抗体例で最も頻度が高く、また血清でのみ陽性の抗MOG抗体例では0%でした。
また、視神経炎(ON)症例についてはその逆で、血清でのみ陽性となる抗MOG抗体例が最も頻度が高く、また髄液でのみ陽性の抗MOG抗体例は0%でした
(以下 table 2)


また、ADEMの半分と皮質性脳炎(CE)の大半が髄液と血清のどちらかで陽性であり、その他の臨床病型では60%が検査結果が陰性でした。
解析結果からわかることとして、血清の抗MOG抗体陰性の皮質性脳炎(CE)は髄液での測定をしないと診断がつかず、視神経炎例については血清のみで診断がつくということでした。
髄液の抗MOG抗体測定で1人のMOGADを診断するためのNNT(number needed to test)については、ADEM 14.3, CE 2, NMOSD 19.5, ON infinite, MY 18.5, Others 6.1となり、皮質性脳炎(CE)では髄液での測定に意義があると報告されていました。

参考となるフローチャートがついており、とても臨床に役立ちます
(以下figure)



もちろんバイアスについての記載もありますが、日本の症例でこれだけの数をまとめたものはないと思われ、とても参考になりました。
今回診療した患者さんも抗MOG抗体測定をまずは髄液で提出することとしました。
診断に役立つ可能性の高い検体を選択して測定できるようになることで、患者さんにとってよりよい診療に直結することにつながる論文と思いました。

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