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1枚のチラシから始まったぼくの世界

毎日走って家へ帰った。誰よりも早く、重い荷物を背にして20分走り続けた。家にたどり着くと、もう動けない。そのまま帽子をかぶったまま座り込み、10分動けなくなる。この状況を変えたのは1枚のチラシだった。

チラシとの出会い

学校の中ではルールが沢山あり、指摘され、息ができないような空気に包まれている。そんな中でも好きな時間はあった。図工と読書。一人で好きなことに没頭できる時間。誰からも文句を言われない。毎日、自宅の本棚から「今日は何を持っていこうかな?」と読書の時間に読む本を選ぶのが楽しかった。本は友達との会話のきっかけにもなる重要なアイテムだった。

けれど、他学年でトラブルがあり全学年で本の持ち込みが禁止になってしまった。読書の時間に学校の図書室へ行っても興味がある本はすでに何回も読んでいた。10分間何をすればいいか決められなかった。

そんな時、休み時間に配られた夏休みのチラシが目に入った。これでも読むかと広げた。アクセスの悪い場所に住んでいるため、面白そうなイベントが書かれていても日程が合わず参加できない。沢山ある情報の中で「あれ?」っと目に止まったイベントがあった。

オンラインって書いてある!しかも、マインクラフト・Youtube・動画編集!めちゃくちゃ楽しそうなイラストや写真で飾られ、光って見えた。
心の中で、「なんだこれは!」「地域には、こんな教室ない!」「ぼくには、これしかない!!」と思った。

参考:2022年の学校で配布されたチラシ

オンラインの教室に参加できる!

行きたくても行くことができないと思っていたイベントの中に、まさかのオンラインがある。帰宅してすぐ、荷物も下ろさずにチラシをお母さんのところへ持って行った。

お母さんは、洗い物をしている。「これを今すぐにでも見てほしい」と言ってもなかなか見てくれない。やっと見てくれたと思ったら、「科学館とか遊園地のイベントね。遠くて行けないからゴミ箱へ入れてくれる?」と言う。「絶対にやだ!」と言うと、びっくりした顔をして見てくれた。ぼくは、「ここを見てほしいんだ」と指を指した。

お母さんは「面白そうじゃない。お父さんに言ってみて」と言ってくれた。今度はお父さん。「すぐに見てほしいものがある」と伝えた。「やってみたらいいよ」と言ってくれた。すごく嬉しかった!

どんどん楽しくなる

少し前に、お母さんが見つけてきたオンライン教室に参加したことがあったけれど、参加している人が多いために発言できなかった。だんだん力がぬけていき、やめてしまった。今回はどうだろう?なぜかこれは試してみようという気持ちになれた。

実際に参加してみると、初めて参加したのに名前を呼んでもらえたり、意見をチャットで書くと、読んでもらえた。それがすごく嬉しかった。そしてリアクションしてくれる!どんどん夢中になっていった。

お友達ができた

その日のオンラインでの習い事が終わると、今度はSOZOWが運営している仮想空間(SOZOWパーク)にアクセスし、アバターを通して会場に入り、出会った人と会話をしたり、マインクラフトができるサーバーで会話をしながら一緒に建築して遊ぶことができた。これがめちゃくちゃ楽しい。

外だと、あまり話しかけないけれど、アバターでビデオOFFの環境が声をかけてみようという気持ちになった。初めての人だけど話かけてみた。とても緊張した。自分がまだ知らないマインクラフトのレッドストーン回路を教えてもらったり、どんな建築をするか相談し合ったり、関係ない話をしたり、とにかく楽しく会話ができた。

話の中で意見が食い違っても、相手の意見を聞いて、「それいいね」と言えた。会話が上手ではないので、言葉が出てくるまで時間がかかる。でも、相手は待ってくれた。何か間違ったことをしたらすぐに謝り、相手もそれをすぐに許してくれる。お互い誤解したまま雰囲気がけんかのようになった時は、スタッフが優しく声をかけてくれて、また仲良く遊べる。スタッフが優しく、安心できる世界だった。

みんなで協力して作った世界

一人の仲間が、このご時世で夏のお祭りがなくなったから、みんなでマイクラで作らないか?と声をかけてくれた。良いアイデアだと思って、パークで会った知らない人にも声をかけて誘って、みんなで作った。小学生から中学生と年齢もそれぞれで、感性が豊かで、アイデアにあふれていた。そこでみんなで力を合わせて作ったマインクラフトの世界は最高だった。

みんながそれぞれの建築をして、すごい建物が沢山できた。最後はひとつのまとまりのあるお祭り空間が出来上がった。一緒にオンラインで作業するのは初めてだったから、できたことに感動し、作品全体を見てさらに感動し、この世界を残したい!と仮想空間を撮影することに挑戦。ネットを駆使してやり方を覚えた。そして音楽をつけた。初めて動画を編集できた!

参加のスタイルは自由なところがいい

ここまで自由に自分を出せるのは、無理をさせない環境があるからなんだと思った。子どもはみんなニックネームで参加する。そして、アバターがいるのでビデオをオフにしても違和感がない。住所など個人情報を伝える場面がなく、音声も都合が悪ければチャットでやり取りができる。

SOZOWでは、どんな意見も受けとめてくれるスタッフと、どんな意見も言って良い場がある。それは、相手の意見を責めたり、攻撃的な会話になることがないようにルールになっているから。

間違って言っても、お互いにあやまって「いいよ」という雰囲気になるから、緊張しなくなった。

オンライン・スクールが開校される

オンラインで興味のある教室に参加することに慣れ、仮想空間で友達と遊ぶことが毎日の楽しみになった。

でも、学校は日に日に辛くなっていく。とうとう体調が悪くなり、休みたいと家族に伝えた。家族は、いいよとすぐに言ってくれた。でも、宿題が沢山用意されるのではないかとか、勉強がわからなくなるかなとか不安だった。

■自分の進みたい道を見つけた瞬間

これからどうなるんだろうという不安がいっぱいだった中、オンラインの面談があり、2021年10月からスクールが開校することを聞いた。参加の希望はあるかを聞かれ、力強く「参加したいです」と答えた。

面談の後は、寝っ転がって大きく大の字になり、天井にむかって「やったーっ」と笑顔でポーズをした。嬉しくて、嬉しくて、体全体で表現した。そして、「ぼくには、もうこの世界しかない。絶対に間違えられない。真剣に取り組んでいく。」と家族に伝えた。

■スクールの様子

参加すると、10人の子と会えた。「こんにちは」と声をかけてみると、むこうも返事をしてくれた。そこへスタッフが来て、会場の説明やスクールの説明をしてくれる。新しく見る世界は新鮮で、どんどん集中できた。ホームルームのようなチェックイン時間が終わると、仮想空間へアクセスし、希望する授業の部屋へ行く。1つのテーブルにアバターが集まると、授業が始まる。自分のビデオをオフにしたままでも参加できる。授業ではチャット機能を使って自由に発言ができる。終わるとその場にいる人とマインクラフトができるSOZOWサーバにアクセスし、一緒に遊んだ。

■趣味が同じ友達ができた

スクールの参加から6ヶ月が経ち、平日の放課後に遊ぶ友達と土日に遊ぶ友達ができた。年齢は様々で小4から中学3年生まで。年齢を気にしない世界がある。学校へ行っていても、行っていなくても関係ない世界。相手を否定する会話をしない平和な付き合いができている。どんな意見も受け入れるというSOZOWのやり方を知っている人だから。マイクラ建築・動画作成・イベントの企画会・ゲームで遊ぶなどなど、毎週が待ち遠しい。

■知りたいことを自分で調べる

インターネットのことをお父さんに教えてもらいながら、パソコンの設定をやっていった。でも、段々聞くより調べたほうが早いと思うようになった。
検索しながら、知りたいことが書かれているページを探して、読む。でもわからない漢字や用語が出てくる。そんな時は、そのままコピー&ペーストで別のタブで貼り付けて検索する。そしてわかったら、元のページに戻る。これを繰り返したら、どんどん親に聞く時間が減っていって、解決できるようになった。

Scratchの作品公開では、外国からのメッセージが届くときがある。そうゆう時は、Deep-Lという翻訳サイトで日本語にして見てみる。それでも、何のことかがわからない時は親に聞いている。インターネットは、勘違いされて怒られる時もあるから、言い方を丁寧にして、まずお礼から伝えるようにしている。時々、ふざけた書き込みがある時は親に見せて、一緒にネットでやってはいけないことについて話し合う。

■社会で役立つアプリを実践で学ぶ

ゲーム機は持っていないけれど、パソコンが1台あれば、授業や調べ学習、ゲーム、ディスカッションができる。

SOZOWスクールでは、実社会で役立つカレンダーアプリやSlack、Zoom、デザインアプリなどを積極的に使っていく。時々、使っていて自分には合わないものもある。そうしたら、違うものを試してみる。カレンダーアプリは最初は慣れなかったけれど、今では自分の予定を入力したり、出席の返事ができるようになった。時々、何かに集中していると予定を忘れてしまうことがあるので、タイマーを机に置いて使っている。自分で苦手なことを、どうすれば攻略できるか考えている。

SOZOWではいろいろなアプリを使っていく

4月からは新しい学期が始まる。オンライン・スクールは、週3→週5になり、参加人数も増える。今から待ち遠しい。でも新しい友だちができるかはわからない。ちょっと緊張する。

■オンラインの面談

週に1回、メンターと面談ができる。毎週会えるように希望を伝えた。メンターは予め、どの人が良いかを希望を出すことができる。すごく悩んだ。SOZOWのスタッフは、みんなすごい人。楽しい人、遊びを知っている人、お金のことを教えてくれる人、悩みを相談できる人、専門的なことを聞ける人などなど。選ぶのが難しい。希望は、将来なりたいものに近い人を書いた。

メンターが決まると、1対1のオンライン面談(1on1ミーティング)がある。そこでは、日々の授業の様子や変わってきた良い点、苦手になった点、改善へ向かっている点など話をする。ありのままを見てくれて、決して点数をつけたりしない。あっという間に面談が終わる。親も希望すれば面談ができる。お母さんは面談が好き。すぐに話したくなる。

■子どもの知らない興味を引き出すメンター

面談の最初は、何を話していいかわからなかった。すごく緊張した。けれど、予め「興味・関心シート」が配られ、それに書かれていることをどう思うかを書いていく。例えば、項目の中に「ぼーっとする」があり、「好き/興味あり」にする。こうゆう感じでシートを使って伝えると、こんな授業があるよと提案してくれる。希望の授業がなければ、募集チャンネルに書き込んで、自分で作ることもできる。

■授業

授業内容がSOZOWのほうで決まると、Googleカレンダーに授業の時間割が書き込まれる。参加を希望する授業をクリックして、「参加する」をクリックしていく。そうすると、カレンダーを共有している人の中で誰が参加するかがわかる。

個人の予定も、カレンダーに書き込む。クラスメイトと共有しなくていい予定は「非公開」に設定する。一緒に書き込んで、毎日見ることで予定が一緒になることを防げる。何回か、予定があるのに遊んでしまったことがあった。「なんで気が付かなかったんだろう」とへこむ。最近は、友達と遊ぶ時は、予定を見てからにしている。

■行事

その他には、スクールの行事(例:夏祭りを生徒が企画など)やオンラインイベント(例:シェアパーティなど)、保護者向けオンライン講演会やオンライン交流会が企画されている。空き時間に、次のシェアパーティーで発表したいことに取り組む。オンライン開催だけれど、当日参加できなくてもアーカイブの部屋で見ることができるのも嬉しい。

行事ではないけれど、長期の休みにはオフ会が開催されることがある。
ぼくは遠いので、あまり行くことができないけれど、今まで1回参加できた。ものすごく嬉しかった。いつも話している人と会えるのは緊張するけど、本当に嬉しい。緊張しずぎて最初は話せなかったけれど、仲良く話すことができた。

■これから

学校へ行くことができるかは、わからない。地域の同級生とも少し会えるようになった。けれど、学校へ行かないといけない理由が見当たらない。

SOZOWでは、オンライン学習の「すらら」を利用できるし、今はスクールの人とやりたいことがいっぱいある。動画の編集ももっと上手になりたい。今はマイクラと動画編集に集中しているけれど、もっと学年が上がったら、他のことも知っていきたい。毎日が時間が足りないと感じる。

SOZOWは、これからもどんどん変化していく。自分たちで使いやすいように提案することもできる。みんなで楽しむ行事などの企画も考えていきたい。

■記事 netuki
■構成・編集 haha