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【ネット歯科大】高齢の患者さんへの歯周治療の注意点

 厚生労働省の歯科疾患実態調査の最新データを見ると、高齢者における歯周病が増えています。特に高齢者を対象とした歯周病治療が求められているといえます。
 
 今回は、高齢の患者さんに対して歯周病治療を行う際に注意すべきことを考えていきます。
 
 高齢の患者さんの特徴のひとつに、全身的な病気を持っていることが多い点が挙げられます。
 
 たとえば高血圧の患者さんでは、歯科治療時の不安感や痛みによって、さらに血圧が上昇することがあります。
 
 また、高齢者でなんらかの病気がある場合、薬剤を常用しているケースが多くなります。
 
 内服薬の種類によって、歯科治療で使用する局所麻酔の薬剤に配慮する必要が出てきます。また、薬の飲み合わせの関係から、歯科で薬を処方する際に使用しづらい薬物があります。
 
 このように、全身の状態によっては、通常の歯科治療の際にさらなる配慮や対応が必要になります。
 
 全身疾患を有する高齢者の歯科治療に際して重要なこととして、主治医と歯科医師が密に連絡を取り合うということが挙げられます。
 
 場合によっては書面のやり取りのため、なかなか歯科治療を開始できないケースもあり得ます。
 
 全身の健康を考慮して歯科治療を行うことは、現在おおいに求められているところです。患者さんの立場としては早く歯科治療を始めてもらいたいという気持ちもあると思いますが、医師からの返事を待つのも大切なことです。
 
 歯周病の治療では歯ぐきの周囲に触れるため、治療の中で出血することがあります。ここはむし歯の治療とは異なることです。
 
 歯周病は歯周ポケット内の細菌が悪さをしているので、細菌や歯石を取るための治療時に、一時的ながら血液中に細菌が入ってしまいます。歯の周囲から細菌を除去するのはもちろん大切なことですが、治療をすればいいということでもありません。
 
 一時的な細菌の侵入に対し、通常はすぐに免疫の力で血中の細菌を排除します。しかし、免疫の力が低下した高齢者の場合は一時的な細菌の侵入が大きな問題につながることもありますので、特に注意が必要だといえます。
 
 心臓の状態によっては、出血をともなう歯科治療を行う前に、抗菌薬(細菌をたたく薬)を飲んでもらうことがあります。治療により出血したところから歯周病菌が血中に入ってしまい、弱った心臓に影響してしまうリスクがあるのです。
 
 歯科医師は治療に際し、患者さんの全身を含めた状態を評価して治療法を選択しています。現在必要とされる高齢者に対する歯周病治療においても、いろいろな点に配慮しながら実施しています。
 
神奈川歯科大学 青山典生


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