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【イナバ化粧品店】40代女子、聖地巡礼!②/3


―――【イナバ化粧品店】40代女子、聖地巡礼!①からのつづき

◆ イナママとの邂逅カイコウ


岡山駅からレンタカーを駆り1時間半ほどにて、イナバ化粧品店にたどり着く。

イナママは奥のカウンターに佇んでいた。

稲葉さんをこの世に生んでくれたママ。

一見するなり私は、脇目もふらずママに向かい、気付けば

「ママ、逢いたかった!」

と訴えていたのだった。

ママは、静かにその白い手を差し出される。

「握手する?」


「いいんですか!?」

縋りつくように手を伸ばす私。

少し冷たいやわらかさが私をくるむ。

ああ、なんて心地いいんだろう。

なにか心が清められていくような感覚だ。

それからママは、

「しあわせになる」


そう言いながら繰り返し背中を撫でてくれた。

私は内心ハッとする。

ママは私に起こった不幸を見透かしているのだろうか?

いやそんなはずはない。が、でもそうであってもおかしくない。

だって撫でてもらうごとに心が楽になっていくのは確かなのだから。

全てを見通し全てを赦してくれるような、ママの存在感。

今思うと大袈裟なようだが、ママに出逢えた興奮と酩酊感でトランス状態になっていたのかもしれない。

菩薩ボサツ

ふと頭に浮かんだ。

しかしそれは私だけの感覚ではなかった。

私に付き合って巡礼したツレが、後にSNSで述懐していたことは、

「イナママの仏のような握手で極楽浄土」

B’zのファンでも何でもない人間が、である。


ママは気さくに話しかけてくれ、写真にも応じてくれて、その後私は店内の貴重な資料をさかんに撮影する。

その間ママがいなくなった、と思ったらスタッフさんが、

「お母さんはお昼寝じゃないですかね」


と言うではないか。

スッと消えてお昼寝! かわいすぎでしょ。

さすが稲葉さんのママ。

そんなお茶目ぶりも垣間見つつ、私はクレドポーの製品を数点購入し、約1時間に及ぶ聖地巡礼を終えた。

「ママ、ありがとうございました!」と、最後にチャッカリ握手を催促するのを私は忘れなかった。

多幸感でいっぱいになっていた。

―――【イナバ化粧品店】40代女子、聖地巡礼!③へつづく



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