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子育ては親育て?(2)~母親が どうやらだいぶ 変わってる~

子供の頃の自分にとって、母親がしゃしゃり出てくる授業参観や、学校行事諸々は、恐怖の体験でした。母親はとにかくファッションセンスが独特で、また小柄なのに妙〜に存在感があり、とにかく周囲のお母さんたちとは何か異なる独特のオーラを放っていました。自分が「仁志松本のすべらない話」に出演できるくらい実力のある芸人さんであるならば、その母のエピソードもすべて笑いに変えることができたであろうけれども、母親が強烈である、というのは地方都市の子供にとっては、絶望しかありませんでした。小学生くらいの時期は、「母親がどんな人であるか」は、もはや人生のすべてといってもいいくらいの出来事であったと思います。実際に若くして結婚する人が多いヤンキーも多い土地柄、「早く結婚して授業参観に出て○○ちゃんのお母さんは若くて綺麗だねと言われたい」と中学校の文集に書いている人までいました。人生の目的が授業参観で若くて綺麗だねと言われることなのか・・・と白目になって読んだことを覚えていますが、しかし今の世の中の状況を見ると、それはそれで確かに何か人生の大事な目標として成立しうるかもしれません。結婚や出産は、受験などと比べると、全員に締め切りが設けられたり、学校で強制的に出願の準備などを助言してもらえることではないので(そんなことされたら困るけど)、お見合いなどが当たり前であった昭和の時代とは全く違う時代になってしまい、かなりハードルの高い事象になっているとは思います。

「親の存在」はとにかく自分にとっては世界の全てでした。そしてその「親」が人格的に多大な問題を孕んでいた場合、どうしていいのか全くわからなかったし、そもそも母親の脳内を生きていたので、それはそれで高校卒業までは乗り切れてしまい、そんなに問題があるということに気づくこともなかったのでした。

両親(特に母親)の勉強プレッシャーから、必死に塾に通って根を詰めて受験勉強を終え、大学に入ったばかりの頃から、授業には全くやる気がなくなり、生きる気力が、実はなくなってはいたのですが、その時は新しく友人もたくさんできたり、勉強しなくてもなんとかなってしまうような環境だったので、周囲の友人に呆れられつつも、ノートを人目も憚らず借りまくったり、ゴミのようなレポートを出して最低評価で乗りきったりして、なんとか単位は取れてしまっていました。その後、周囲の友人たちが目の色を変えて就職活動を始めた頃になって、あまりにも、「働きたくなさ過ぎる」「(大変そうな会社などで上司に怒鳴られたりしながら)働くために必要な能力があると全く思えない」ことに気づき、本当に困ってしまいました。

親の目ばかりを気にして、高校卒業までのあらゆることを決めてきた自分。受験勉強は根を詰めればなんとか乗り切れてしまったのですが、その後の就活は進路指導の先生的な存在もいない、個人でやらなければならないものだったのですが、バリバリ働く自分のイメージは一切思い浮かばず、就活に励むことができなくなってしまいました。自分の人生をこれからどうしていいのか、全くわからなくなってしまい、何もやる気がなくなってしまったのです。もともと睡眠障害を持っていましたが、その頃は夕方まで眠り、1日一食くらいしか食べずに、テレビでレンタルしてきた映画を見ては明け方に眠る、というような生活をしていました。親に仕送りをもらっていた身だったのにも関わらず、お金の管理が全くできず、夕方からのアルバイトをしていたものの、生活はギリギリでした。親には相当心配されていたと思いますが、高校までは言われた通りに勉強さえしていればテストは乗り切れてしまったため、就職活動を前にして、人生が詰んできつつあるのを感じていました。今思い返すと、体重もかなり落ちていたし、人とも全然会わずにテレビばかりを見ていて、今よく無事に生きていると思うくらいにヤバい時期でした。

そんなある日、タレントの東ちづるさんがテレビで、泣きながら母親との関係について語る映像が流れていました。その番組の中で、初めて「AC(アダルトチルドレン)」という言葉を耳にしました。タレントの東ちづるさん(現在、一般社団法人 get in touch 理事長をされていますhttps://www.getintouch.or.jp/ )は、テレビ番組の印象では、いつも明るく、笑顔を絶やさず、好感度も高い方で、あらゆる番組に出ていたまさに輝ける女性を体現したような印象でした。そんな方が、涙ながらに母親への葛藤を語る映像に驚くとともに、東ちづるさんがコメディアンのように作り上げた笑顔で「ぬけさく先生(©️えんどコイチ先生 勝手にトンチンカン)」のような目をして、母親とともに写る写真が紹介されていて、「親を喜ばせるために必死に演じ続けてきた」というような話をしていたのです。その東ちづるさんの話が、自分のこれまで感じてきたこととあまりにもそっくりだったので、衝撃を受けたのでした。

思わず肩を組んで「ちづる(敬称略)!同じだよ!私もそうだったよ!」と一人暮らしの14インチ型テレビデオに向かって話しかけたい衝動にかられました。その時に初めて「アダルトチルドレン」という、ちょっとミスチルのような軽い語感の、しかし重い言葉を知ったのです。
(その3へ続く)

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