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未完成の愛情もある(レディ・バードの感想)

仕事やその他の人間関係でうまく立ち回れなくて自分に自信が持てなくなって落ち込んでいたときに、たしかはましゃかさんが『レディ・バード』が友情モノで面白いって感想見たな…と思い出して見てみることにした。ちなみにはましゃかさんは個人的にめちゃくちゃ推している方で、彼女が評価しているなら見てみようというミーハー心も込みである。

レディ・バードは、簡単に説明すると主人公のレディ・バードが思春期のなかバカなことしたり悩んだり、ケンカや進学などの青春の様々な出来事を綴られた物語なんだけど、レディ・バードの魅力って、コンプレックスがたくさんあって、それに対して悲喜こもごもしているリアルさが、見る人の共感を呼んで面白さに繋がっているところにあると思っている。恋愛に興味があって、目立っている男の子に興味を惹かれて頑張ってアプローチしていく姿は年相応の少女らしさがあって良いし、欲張ってクラスの目立つ女子に近づいて友達になろうと強引に迫っていたのも、痛々しさがあってそういう無理してる時期あったなあとか思い出していた。思春期の頃って、ちょっと見栄っ張りになってしまうところがあると思ってて、そういう本人は真面目だけどはたから見たら微笑ましくなってしまう良さもある。

この作品のメインである友情に加えて、家族との関係がとても繊細に、かつ心にグッとくるところがあって、それがもう一つの大きな主軸になっている。最初はよくある仲が悪い家族って感じだったけど、家族それぞれに悩みを持っていることも分かるようになっていて、レディ・バードとの対話を経て、家族が少しずつ変わっていくところがとても良かった。
母と娘というものは、なんやかんや衝突しがちなものと思っているのですが、ケンカしながらもなんだかんだ一緒に服を買いに行ったり、恋愛で傷ついたときに思わずお母さんに泣きついてしまうのも、母娘ならではのアンバランスさが感じられてなんだか切なくなった。最後の手紙のシーンでは、お母さんが手紙を書けなかったし自分で渡せなかったところに、家族を支える強い母であろうとしているところに反する弱さというか、レディ・バードへの本音の部分にある遠慮みたいなところが伺えてすごく泣きそうになった。その橋渡しをしたお父さんの優しさにもまた泣きそうだった。父母それぞれに違いはあるけど、娘のことを本当に愛しているんだなあというのがよく分かるシーンだった。多分あの手紙は未完成だけれども、手紙を書こうと努力したことが大切で、きっと一生の宝物になるはずで、すごくいい贈り物だと思った。

私の中で救われた部分が、レディ・バードが自分に付けた名前である「レディ・バード」を使うのをやめたことが、彼女が思春期を乗り越えた一つの象徴になっているように感じで、それがすごく良かった。自分で名前を付けるくらいだから、それなりにコンプレックスがあった部分だろうに、それを使わなくて大丈夫になったというのは精神的な成長だと思う。きっと本人は5年後にはもう過去の出来事として整理できて、10年後くらいにはもう忘れているかもしれない。思春期を経て親からの愛情をやっと正面から受け止めることができたのはターニングポイントといえるイベントだと思う。
私も名前についてコンプレックスがあったので、どこか昔の自分を思い出した。

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