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夜中詩

44
こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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#写真

超・なる

超・なる

憂みて憂みてなお
暗い春
薄灰の夜を超えて
虹彩、ゲーミング夏
蛍光カラーで硬質
だんだんと単細胞に
洗練されていく
真夜中
思想・感情、ばらばらと撒いて
収束するのは
自己同一性のふりをした
キャラクター、着ぐるみ
恋のように苦い薬が
脳天を撃つ
明日の朝はきっと
凡夫なる我、少しだけ進化した生き物

はしきうるわしき

はしきうるわしき

少年少年少年、
少年、
菫色の瞳の少年、
菫色の瞳の中の少年、
安酒を飲み笑い出す少年、
フリルとレースに溺れる少年、
漂白する少年、
漂白し漂泊する少年、
漂泊する少年の中を泳ぐ少年、
コンビニ、ホットスナック、油にまみれし薄紙、てらてらと輝ける、唇、
入れ子構造の少年、
少年の中には高密度の少年、
もしくは夢の中の少年、
少年少年少年少年、
傷に当てしカットバンぐずぐずたらむ少年、
なお愛しき

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◆詩◆回遊

◆詩◆回遊

きっとここは中枢だろう
たくさん歩いたから深層だろう
声が遠いから最果てだろう
君にもうすぐ会えるだろう


プレイリストはとうに終わって
暗闇では目よりも肌を頼りに

たくさん落としてきたけれど
拾ったもので鞄は重い

薄い光を頼りに
進む姿は深海魚みたい
なにかを退化させて
なにかを鋭くしていく
そのうちこめかみにGPS機能が付く
へそのあたりのAIが発達する

水底の首都高

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夏至過ぎ

夏至過ぎ

バスが水槽に改造されていて
人魚しか乗れないことになっていた

人魚たちはクリームソーダを飲みながら
学校へ向かう
窓から路面へと吐き出されるチェリー

私は人魚ではないから
自転車で登校
去年よりも日焼けするだろう
たくさん汗もかくだろう
わくわくするような、8時

いつの間にか
夏の時間が進んでいて
ノウゼンカズラが空を覆う

ひやひやとひえた橋桁に頬をつけたまま
学校に行かな

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終業時間譚

終業時間譚

更衣室のロッカーの鍵を飲んだのは私です
ロッカーの中には白熊が眠っています
ほら、いびきが聴こえるでしょう

先輩はそう言ってブラウスのボタンをはずしはじめる
白い花模様のレースの下着

ロッカー、開かなくなっちゃったね

先輩それは困ります
中には家の鍵とぬいぐるみとスマホが入っているんです
困ります
今、事務所からチェーンソーを持ってきますねそれできっと開きますから、

チェー

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かえりみち

かえりみち

駅からの帰り道、自転車のハンドルを掴まれ倒された
突然降ってくる暴力には
熱を持って挑まなくてはならない

体温がみるみる上がっていく
青い自転車はあっという間に溶け
ぶくぶくと泡を吹き
地面に流れる

私を倒した男は
溶け落ちた自転車に
半身を焼かれながら
立ち尽くす

私はカバンから地球儀を取り出し
男の頭を殴りつける
男は二つに割れる
断面からエメラルドがのびてくる

緑炎の

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パーティーソング

パーティーソング

鬼の居ぬ間にキスしよう
鬼を交えてパーティーしよう

テーブルには赤、朱、紅、
カトラリー零れ落ちる銀色の音

ねぇ音楽をかけて
猥雑なテレビを蹴破って

ほら指をここへ
冷たい場所を探して

ねぇ彩度をあげて
終わる予感に安堵と苛立ちを

靴擦れ
悪酔い
雨音
夜明け

終わる前に一度
もう一度舌を出して
#詩 #写真

蜜吸い

蜜吸い

恋人が庭の花をたべてしまうから
そろそろ別れようかと思った

別れを切り出すのは
すこしばかり重たくて
でもなぁ
別れたいなぁ

恋人の唇から花粉が溢れる
私は受粉しようと手を広げてみるが
蕾はつかない

別れようか、

恋人の眼から蜜が垂れてくる
ハチドリが恋人をついばむ
恋人の身体に
うろができる

私はうろのなかで眠る

別れたかったのに
だめだなぁ、と反省する

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生誕祭

生誕祭

おまえの足の裏とわたしの手のひらの温度が一緒になる
足の裏と手のひらをぴったりとくっつけた瞬間から
チョコレートのように溶けはじめ
わたしとおまえの輪郭はなくなる
最後に
混ざりあわなかった骨だけがのこる
骨は重なり合い
檻のように茨のように
絡み
縺れ
くぐり抜けて行けるのは
小さく身を屈めた少年だけ

少年はわたしたちの尖った骨で
白い皮膚を裂きながら進んでいく
皮膚を裂き、肉を抉る
わた

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