見出し画像

人生の絶対領域を守りたい

発作的に文章を書かなきゃいけないと思う時がある。多分心の中に寄せては引いていく感情を言葉に起こさないと、その波に飲み込まれてしまうと感じるからなんだと思う。
がんばって酔っ払ってみた日、改札を通った瞬間に酔いも私の体から抜ける。魔法がスルスルと解けていって、身体に気だるさが残ってて。

強くもないのに酒を胃袋に流し込んで、好きでもない下ネタを言ってみる。どんな単語が相手のツボに入るのかわかる感覚が気持ちいいけど、段々息が上がって頭がとろけていく。
ぼんやりと机を見つめながら髪の毛を耳にかけて足を組みかえる。
「エロいね」なんて言われるけどこっちは色気に人生かけてるの。違うんですよね、多分私が言われて気持ちいい「エロいね」って、私が何も意識すらしていないし、自分の色気として捉えてすらない部分に対してその言葉が投げかけられた時。

今でも忘れられない。大学1年生の、まだ飲みサーなんて概念も知らないとき。
野球サークルの新歓にいた3年生の先輩でちょっと焼けた小麦色の肌に黒髪のポニーテール。お酒で頬を少し赤らめて、目をうるませていた。健康的な肉付きの身体で人懐っこい笑顔。なにより、お酒のせいでかすかに揺れる瞳が、文句の付けようのないほど健康的でいやらしくて、「ああ、私が手にできない色気だな」って。人生の中でめちゃくちゃ悔しかった瞬間。
あの3年生の先輩は自分の目がどれほどの魅力をもっていたかなんて気づいていなかったと思うの。安い焼肉屋で、彼女のことをずっと盗み見ていたことを今でも覚えてるんです。

絶対領域ってありますよね。
あなたの絶対領域はなに?ミニスカにニーハイ?ガーターベルト?ブラジャーに包まれたふくよかなバスト?ひとりで音楽を聞く時間?美しい空を眺める時間?
私、自分の中で特別枠にいる人との関係を揶揄されるのが苦手かも。特別枠にいる人、それが恋人であろうと友人であろうと上司であろうと、その人との会話の内容は全部秘密にしたい。
他人にその人との絶対秘密な関係に、勝手に名前をつけられるのも評価をされるのも気に食わない。魔法にかかっていたいし騙されていたい。
その関係性がきっと絶対領域。

私の中で色気とかエロに対するこだわりって、そういう秘密な関係と同じくらいの絶対領域なんです。意図されていないところに宿る色気を、だれかに見透かしてほしくて。もちろん見透かしてもらうには色気を身につけないとなんですけど。

秘密の関係も余白のエロも、自分でしっかりら守らなきゃっておもうんです。貫き通す!
誰になんと言われようと、からかわれようと、気に入らないあだ名をつけようと、汚されようとも。
人生の絶対領域を守るために、自分を好きでいるために、毎日苦手なものと、そして弱い自分と戦い続ける。電車に揺られて酔いの残り香と眠気に襲われながら、甘い弱音に飲み込まれまいと文章を紡ぐ私のお話でした。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,791件

#習慣にしていること

130,911件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?